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うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない  作者: ギガントメガ太郎


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第518話 DYING ROBOT その十九

 特別合同課外授業二十三日目の朝。

 港は生徒でごった返していた。美食丸から伸びるタラップからは、まだまだ生徒が降りてきていた。


「並んでくだしゃい。野球部のみなしゃんはこちゅらでしゅ。武器の支給はこちゅらの列でしゅ」


 帰宅部のまろみ里は、群れる生徒達を誘導した。アイスホッケー部は全身をプロテクターで固め、スティックを振り上げて戦意を鼓舞していた。ネトゲ部はVRゴーグルを装着しての参戦だ。ボクシング部はグローブを脱ぎ捨て、ベアナックルで戦うつもりだ。軽音部はドラムスティックを振り回し、ちくわ部は熱々のおでんが入った鍋を掲げ、漫研はゴロボ13を読み耽った。


「こちゅらでしゅ。運動部は前列に、文化部は後列に並んでくだしゃい。出陣まであと三十分でしゅ。落ちちゅいて作戦書を確認してくだしゃい」


 港は合戦前の本陣の様相を呈してきた。兵士達の士気は充分。遠征隊が獲得した補給物資のおかげで、兵糧も充分。船中からかき集めた補修用の鉄パイプにより、武器も充分。その様子を帰宅部部長茶柱江楼(ちゃばしらころ)、通称(ごう)様は、戦車ロボの上から真剣な面持ちで眺めていた。


「江楼しゃま、準備は順調でしゅ」

「わかった」


 江様は背後を振り返った。眼前には霧の漂う森。彼方には霧に覆われた掌山。目指すはその頂上、火口の城だ。これより、戦が始まる。


「江楼!」


 鋭い叫びとともに、ざわめきが広がっていった。長い白髪をなびかせ、こちらに迫ってくる人影が一つ。彼女が通り過ぎたあとには、静けさが残されていった。

 生徒会長茶柱初火(ちゃばしらういほ)、通称(はつ)様。茶柱三姉妹の次女にして、江様の姉。


「江楼! 船に戻りなさい!」

「いやだね」


 江様はしらばっくれた。視線を合わせようともしない。


「いったい、どこにいこうというのですか? 勝手な行動は許しませんよ!」

「決まってらあ。山頂の城だよ」

「なにをしに!?」

「決まってらあ。ハイデンにトドメを刺しにいくんだよ」


 タイトバースの住人にしてソラリスの信者であるハイデンは、茶道部部長茶柱茶鈴(ちゃばしらちゃりん)との戦いの末に相打ちになった。現在は、行動不能な状態にまで追い込まれていると思われる。


「奴は今、弱っている。ボディを修復する前に、完全に息の根を止めてやるのさ」

「危険です! 工場はゾンボで溢れているのですよ?」

「危険を気にしてたらなんもできねえ。それに昨日言ってただろ? 普通のやり方じゃ、ソラリスは倒せねえって」

「だからと言って、総攻撃は無謀です! 船に戻りなさい! 生徒会長命令です!」

「いやだね」


 初様は歯軋りした。目も合わせようとしない妹に憤りを覚えた。この子は生まれた時から、一度も言うことを聞かなかった。人の話を聞いたらなにかを失ってしまうかのように、誰に対しても反発した。初様は呼吸を整え直した。


「江楼、お姉ちゃんの目を見なさい」


 初めて江様は姉の方を振り向いた。


「これは茶々姉様の敵討ちなんですか?」


 江様の瞳は震えていた。


「そうだぜ」

「あなたの個人的な恨みが動機で、皆を連れていくんですか?」

「そうだぜ」

「それが正しいことだと?」


 江様は手の中でベーゴマを転がした。


「正しいからやるんじゃねえ。俺はそんなことのために動かねえ」

「ではなんのために!?」


 江様はみぞおちを押さえた。体の内側から湧いてくる謎の衝動。子供のころからそうだった。自分を突き動かすのはいつもこれだ。


「知らねえ」

「生徒達を危険に巻き込んでもいいんですか!?」

「巻き込むんじゃあねえ。こいつらはこいつらの意思で戦いにいくんだ。こいつらは全員高校生だ。自分で判断したからここにいる。中学生は連れていかねえ」


 それで話は終わりだった。怖気付いた者は一人もいない。全軍が行進を始めた。


 初様は港に一人立ち尽くした。



 討伐隊は霧が漂う森を進んでいた。江様が乗った戦車ロボを先頭に、人数が多い運動部が続いた。鉄パイプを握りしめ、補給物資のボックスからもぎ取った蓋を盾代わりにして行進している。その後ろには文化部が続く。腕っぷしはない彼らではあるが、全員なんらかのスペシャリストだ。しんがりは戦闘力の高いちゃんこ部に任された。


「フンスフンス! どすこいどすこい!」


 鏡乃は大股で地面を鳴らしながら歩いた。


「鏡乃山! 気合い充分だな!」

「ごっちゃんです! 千秋楽のつもりで挑みます! フンスフンス!」

「頼もしいッス!」

「頼もしいノハ、弟弟子ロボもデスよ!」


 新弟子ロボは、最後尾を地面を揺らしながら歩く巨体の力士ロボを撫でた。


「ミナサンノタメニ ガンバリマス」

「期待してるぜ!」


 実はちゃんこ部は、今回の討伐隊に参加するか意見が分かれた。誰もが無謀だというのは理解していた。森の中を隠れながらうろつくのとはわけが違う。向かうのは敵の本拠地。ゾンボとの戦闘は避けられないのだ。しかし、皆が戦いに赴く中、ただそれを見ていることもできなかった。戦闘力では随一を誇るちゃんこ部の参加は、戦意を大きく左右するだろう。

 そしてなにより、行動しなければ現状を変えられないと、誰もが理解していたからだ。ソラリスを倒さなければ、肉球島は解放されない。おうちに帰れないのだ!



 遠征隊は森の中を進んだ。途中イノシシゾンボの群れとシマエナガゾンボの群れに遭遇したが、人数に任せて追い散らした。エレファントゾンボや、サイゾンボに遭遇しなかったのは幸いだった。木々の隙間から、コウノトリの群れが海に向けて飛んでいくのが見えた。


「江楼しゃま、ゾンボの数がしゅくないように感じましゅ」まろみ里がぷるるんとした頬を揺らして言った。

「それは俺も感じてた。討伐隊が近づいているのに勘付いて、工場にゾンボを集めているのか? だったら好都合だぜ」


 その時、地響きを感じた。恐らくエレファントゾンボの足音だ。警戒したが、徐々にその音は遠ざかっていった。しんがりのちゃんこ部は、長い鼻を振り回しながら去っていくエレファントゾンボを眺めた。


「なにかを追いかけているように見えるッス」ふとしが指をさした。

「確かに……」

「見てほしいッス! ロボキャットがいるッス!」


 猫好きのでかおが、枝の上を飛び移るようにして移動するロボキャットを見つけた。


「ほんとだ! ロボキャットだ! かわいい!」

「おかしいッス」

「でかお先輩! なにがおかしいんですか!?」

「ロボキャット達は、まったくゾンボに見えないッス」

「ほんとだ! ローションを垂らしてないもん!」


 ゾンボは例外なくソラリスに取り憑かれている。ローションを滴らせ、生気を失っているのだ。しかし、このロボキャット達はどうであろうか。生き生きと輝いて見えた。強固な意思を感じさせた。


「わぁ! わぁ! ロボキャット達は元気なんだ! すごい! ロボキャットすごい!」


 鏡乃の心に勇気が湧いてきた。鏡乃と肉球島のロボキャットには、ある種の絆がある。鏡乃はロボキャットのために、姉と戦ったことがあるのだ(349話参照)。



 討伐隊は森を抜けた。ここからは見晴らしのいい草原だ。遠くにインパラゾンボの群れを発見したが、近づいてくる様子はなさそうだった。先頭の戦車ロボは、いよいよ山肌に建てられた工場地帯へと到達した。


「ここからだ! ここからは戦闘は避けられねえ! 覚悟を決めろ!」

「「おー!!!」」


 皆、武器を掲げ雄叫びを上げた。工場の屋根から、スパイダーゾンボがこちらを伺っているのが見えた。地面の隙間からアントゾンボが這い上がってきた。

 戦車ロボが威勢よく一発を放った。その一撃をもろに受けたスパイダーゾンボは、屋根から転げ落ちて仰向けに転がった。戦車ロボは変形し、四足歩行モードになった。急斜面をなんなく登っていった。


「いけー! 進めー!」

「「わー!!!」」


 江様の号令で、討伐隊は突き進んだ。掌山は標高二百メートル。ここは中腹だ。目指すは山頂の城だ。

 突撃力に優れるラグビー部が、アントゾンボにスクラムを仕掛けた。そのまま巨大な脚にしがみつき、動きを止めた。


「フルバックロボ! 今だ!」

「セット!」


 ラグビー部が作ったフルバックロボによる強烈なタックルをくらい、アントゾンボは山肌を転げ落ちていった。

 上空から複数のコンドルゾンボが襲いかかってきた。


「いけ! ストロボロボ!」

「ハイチーズ!」


 写真部が作ったストロボロボの強烈なフラッシュにより、コンドルゾンボは視界を奪われ、墜落した。そこをすかさず、釣り部が作った大漁ロボが投網によって捕獲した。


「いいぞ! ストロボロボロボ!」

「ナイスだ! ストロボロボロボロボ!」


 しんがりのちゃんこ部は、その激しい戦いを見上げていた。


「わぁ! わぁ! みんな戦ってる! 鏡乃達も戦わないと!」

「いくぜ! ん?」


 まるお部長は地面に影が横切ったのを感じた。霧に覆われた空を見上げると、数匹のコウノトリが海を目指して飛んでいくのが見えた。


「まるお部長! いきましょう!」

「よし!」


 工場の壁がぶち破られた。瓦礫を吹っ飛ばし中から現れたのは、巨大なマントヒヒゾンボだ。


「うわわわ!」

「出たッス!」

「びっくりしたッス!」

「ヤっつけまショウ!」

「「ごっちゃんです!」」


 粘液を垂らしたマントヒヒゾンボは、唸り声を出して突進してきた。でかおが真正面からそれを受け止めた。


「気をつけろ! もう一匹いるぞ!」


 開けられた穴から出てきたのは、マンドリルゾンボだ。


「コチラハ ワタシガ アイテヲ シマス」


 弟弟子ロボがすかさずマンドリルに組みついた。でかおと弟弟子ロボが同時にゾンボを投げ飛ばした。二体のゾンボは激しく衝突し、動かなくなった。


「やった! すごい!」

「コレを見てくだサイ!」


 新弟子ロボが工場に開けられた穴を指さした。ちゃんこ部はその中を覗き込んだ。


「ええ!? なにこれ!?」

「物資だ! 盗まれた補給物資があるぞ!」


 ちゃんこ部は部屋の中に足を踏み入れた。間違いなく投下された補給物資だ。プラスチック製のボックス、ボロボロになって動かなくなった電子機器。食料品はないようだ。まるお部長は物資を漁った。


「これは……俺らの役に立たないものばかりを集めているみたいだな……」

「まるお部長! こっちを見てください!」


 鏡乃は部屋の奥の扉の隙間に頭を突っ込んでいた。皆が恐る恐る覗き込むと、そこには驚くべき光景が広がっていた。


「うわわ! なにこれ!?」

「リスッス!」

「リスの大群デス!」


 そこは解体室のようであった。無数に並んだリチャードソンジリスゾンボが、補給物資の電子機器を解体していたのだ。その奥では、アルプスマーモットゾンボがボックスを細かく粉砕していた。どのリスも死んだ魚のような目で、粘液を垂らしながら作業に没頭していた。


「キモいッス!」

「まるお部長! どういうことですか!?」


 まるお部長は、丸い顔を撫で回して考えた。


「なんてこった! 補給物資は俺らを助けるためのものじゃなかったんだ!」

「ええ!?」

「補給物資は、ゾンボ達の材料だったんだよ! ゾンボを量産するためのものだったんだ!」

「マジッスか!?」

「ここは今! ソラリスの生産工場になってしまったんだ!」


 衝撃の事実に震えるちゃんこ部達。そこへ、園芸部の部員がやってきた。


「ちゃんこ部! 急げ! 山頂じゃとんでもないことになってんぞ!」

「ええ!?」


 ちゃんこ部は走った。





 ——豪華客船美食丸。

 第十一デッキのオープンデッキで、島の様子を監視していた野鳥観察部は、双眼鏡に怪しい影を捉えた。すぐさま生徒会本部へと駆け込んだ。


「初様! コウノトリの群れが飛んできます! ひょっとしたら、ゾンボかもしれません!」

「確認は必要ありません。即刻撃ち落としてください!」

「わかりました!」


 すぐさま狙撃部が迎撃の準備に入った。


「間違いない、ゾンボだ! なにかを運んでいるぞ!? 爆弾か!?」

「躊躇するな! 撃て(シュート)!」

了解(ラジャー)!」


 狙撃部が次々と弾丸を放ったが、ゾンボは散り散りになってそれをかわした。


「クソッ! 速い!」

「次だ! 撃て撃て!」


 コウノトリゾンボは、船上を飛び回りながら、次々となにかを投下した。


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