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うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない  作者: ギガントメガ太郎


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第494話 部活対抗運動会です! その二

 隅田川と荒川に挟まれた浅草市立ロボヶ丘高校の広大なトラックは、生徒達と観覧者に取り囲まれていた。轟く歓声は勝者を惜しみなく称えた。


鏡乃(みらの)ちゃん! やりました! ご主人様! 鏡乃ちゃんがやりましたよ!」

「おお〜、ちゃんこ部やるな〜」

「鏡乃〜、すごい〜」


 鏡乃は巨大なロボボールから這い出た。ちゃんこ部の部員達に体を支えられながら立ち上がると、黒乃達に向けて親指を立てた。


紅子(べにこ)! ちゃんこ部が絶対に優勝するから、見ててね!」

「みてる〜」


 紅子はメル子の膝の上で体を弾ませた。


『さあァ! 初戦から大波乱の部活対抗大運動会ィ! 盛り上がっておりまァす!』

『ちゃんこ部、いいスタートを切りました。優勝チームには生徒会執行部からなんでもお願いを叶えられる「特別執行権限」が与えられます。恐らくちゃんこ部は、部室を取り戻すために使うでしょう』



 ——第二競技『棒引き』


『こちらも運動会の定番競技ィ! 棒引きでェす! さっそく各チームが所定の位置に陣取っていまァす!』

『この棒引きは特殊でして、八チームが同時に戦います。それぞれのチームに陣地が設定されており、その陣地までロボ棒を持ち帰る競技です。制限時間終了時に、ロボ棒を多く持っているチームが勝利です』

『そしてェ! 特別ルールがありまァす! 通常の棒引きは、陣地に持ち帰った棒は手出し無用ですが、このルールでは他チーム陣地内のロボ棒を奪うことができまァす! しかも陣地内では、お互いに物理攻撃(ダイレクトアタック)が可能でェす!』


 第一試合に出場するのは、ちゃんこ部、帰宅部、陸上部、ラグビー部、自転車部、化学部、写真部、漫研だ。トラックに沿うように八つの円が描かれており、その中でそれぞれのチームが待機していた。


(ごう)様ー!」

(ごう)様、勝ってください!」

江楼(ころ)様ー!」


 一際大きい声援を受けているのは、一年生にして帰宅部部長を務める茶柱江楼(ちゃばしらころ)だ。ボサボサの短い白髪、傷だらけの日焼け肌、短いスカート、そして鋭い視線。江様はその眼力で他のチームを威圧した。


「まろみ里!」

「はいしゅ。なんでしゅうか、江楼しゃま」

「陣の防衛はお前に任せるぞ!」

「わかりましゅた」

「他は棒を奪いにいく! 特にちゃんこ部は侮れねえ。ぜってぇぶっコロす!」

「「押忍!」」


 一方、ちゃんこ部の陣。


「まるお部長! どうやって攻めましょう!」

「パワーでは俺らがダントツだぜ。それを活かすために、それぞれ散って棒を集める! 集まったら陣地内で防衛に全力を尽くすぞ!」

「「ごっちゃんです!」」


『よーい、パン!』号砲が鳴り響いた。いっせいに走り出す各チーム。フィールドに突き刺さった十六本のロボ棒を、真っ先に奪いにいかなくてはならない。ちゃんこ部はその巨体ゆえ出遅れた。唯一身軽な鏡乃がロボ棒を掴もうとしたが、横から何者かに奪われてしまった。


「わぁ!? なに!?」

「チリリン! チリリン! 棒はいただくぜ!」


 自転車に乗った自転車部だ。速度で彼らの右に出るものはいない。次々に棒を奪い去っていく。次いで棒を集めたのは足の速い陸上部だ。

 自転車を追いかけるのを諦めた鏡乃は、陸上部に追いすがった。ルールでは、陣地外では選手同士の接触(アタック)は禁じられている。棒を掴むしかない。


「捕まえた! あれ!?」


 棒に手を伸ばした瞬間、棒もろとも陸上部は消え失せていた。棒高跳びの要領で飛び上がったのだ。そのまま陸上部の陣地内に着地をした。

 鏡乃は躊躇した。陣地内にはもう三人の選手が集(ケツ)している。一人で突入をするのは得策ではない。


「鏡乃山! こっちだ!」

「まるお部長!」


 まるお部長は棒を持って逃げる写真部を追いかけていた。鏡乃が回り込み、逃げ道を塞いだ。


「ヒィ! どいてくだサイ!」写真部のカメラロボはストロボを焚いた。鏡乃は視界を奪われたが、背後からまるお部長が棒を掴み奪い取った。同様にして漫研から棒を奪い取った新弟子ロボと合流した。


「いったん陣地に戻るぞ!」

「「ごっちゃんです!」」


 フィールドからロボ棒がなくなったので、どのチームも陣地に帰還した。お互い、どの部が何本の棒を確保しているのか、確認して戦略を組み立てなくてはならない。それぞれのチームに大歓声が送られた。


『各チームの本数は以下のようになりまァす!』

 

 ちゃんこ部、二本。

 帰宅部、二本。

 陸上部、四本。

 ラグビー部、三本。

 自転車部、五本。

 化学部、〇本。

 写真部、〇本。

 漫研、〇本。


『やはり文化部は不利ですね。挽回してほしいです』


「まるお部長! 自転車部の棒を奪いにいきましょう!」

「待て、鏡乃山。あれを見ろ!」


 自転車部は、なぜか棒を持ってフィールドを自転車で走り回っていた。


『おやァ!? これはルール違反ではないのかァ!? 一度陣地に持ち帰った棒は、自チームは持って外には出られないはずだぞォ!』

『いえ、よく見ると陣地の周りに集まっていただけで、誰も中に入っていませんでした。そして、自転車の速さならば、終盤まで逃げ切れると踏んだのでしょう』


 化学部が動いた。棒を持って走る自転車に近づいたが、スルリとかわされてしまう。しかしその直後、なぜか自転車は転倒した。


『なんだあッ!?』

『どうやら地面にロボローションを撒いたようです。化学部は自分達で生成した薬品を武器として使います』


「チリリン! チリリン! どけどけどけ! ん? なにこれ?」


 自転車部は地面に落ちていた冊子を拾った。


「これは!? 茶々様と初様の濃厚なチョメチョメ同人誌!? ウヒョー!」


 夢中になって読みあさっているところを、漫研に棒を奪われてしまった。


『あーッ! 文化部も手練手管で棒を奪いにきたぞぉ!』

『おっと? 帰宅部にも動きがあるようです』


 帰宅部部長の江様は、一人で堂々と陸上部に歩み寄った。陸上部は五人で四本の棒をがっちりと守っている。


「交渉だ! お前らの棒を一本寄越せ! そうしたら、お前らの陣は攻めないでおいてやる! 言うことを聞かないなら、ぶっコロすぞ!」

「ヒィ!」


『交渉ではなく、脅しだあッ!』

『しかし成立したようです。これで帰宅部は棒が三本になりました』

『続いて、ちゃんこ部も動きましたァ! ちゃんこ部はラグビー部に挑むようです』


「ふとし! 新弟子ロボ! 守りは任せたぞ!」

「「ごっちゃんです!」」


 鏡乃山、まるお部長、でかおは、ラグビー部の陣地に迫った。ラグビー部五人は、スクラムを組んでそれを迎え撃つようだ。


『ちゃんこ部対ラグビー部の対決でェす!』

『押しの強さでは校内最強の二チーム。人数は三対五ですが、総重量は大きく差はありません』


「はっけよい!」

「セット!」


 両チーム、激しくぶつかり、砂埃が舞い上がった。


「ふんにゅにゅにゅにゅにゅ!」

「鏡乃山! でかお! 押せー!」

「はいッス!」


 両者の力は拮抗しているかのように思えたが、徐々にちゃんこ部が押し始めた。押すにつれ、観客の声援も大きくなっていった。


『ちゃんこ部が押しているゥ! すごいパワーだあッ!』

『陣地の円はまさに土俵。土俵の中の力士は最強です』


 そのまま押し切ったちゃんこ部は、見事三本の棒を奪い取った。

 だが戦況は最終局面を迎えていた。ちゃんこ部とラグビー部が戦っている隙に、帰宅部と陸上部の連合軍が他陣営を攻めていたのだ。


『どうやら最終的に、二つの陣営に分かれたようでェす! ちゃんこ部VS帰宅部、陸上部連合でェす!』

『その他のチームは陣地に引き篭もってしまいましたね。江様の策略で、自転車部、化学部、写真部、漫研に一本ずつ棒を分け与えたようです。これはせめて、一ポイントでも点数を稼ぎたいという心理を利用した懐柔策です』


 ちゃんこ部、五本。

 帰宅部、四本。

 陸上部、三本。

 ラグビー部、〇本。

 自転車部、一本。

 化学部、一本。

 写真部、一本。

 漫研、一本。


 最後の戦いが始まった。残り時間は一分。ちゃんこ部は自陣で五本の棒を守る。守り切れば勝ちだ。帰宅部連合は、一本でもちゃんこ部から棒を奪えば勝ちだ。


「ふんにゅにゅにゅにゅ! 絶対に棒を守り切るぽき!」

「「ごっちゃんです!」」


 陸上部が襲いかかってきた。自慢の跳躍力で、上空から攻める作戦だ。次々に力士達の上にのしかかってくる。だが、力士はそれをものともしない。軽々と持ち上げると、遠くへ放り投げてしまった。

 そこへ帰宅部が束になって攻め込んできた。一番体重が軽い鏡乃山を集中的に狙う作戦だ。


「バカめ! 鏡乃山は軽くても、大相撲パワーはちゃんこ部最強! 一網打尽だ!」

「棒は渡さないにょきー!」


 鏡乃山は耐えた。陸上部にしがみつかれても、象のように揺らがなかった。


『あああッ! すごいパワーだあッ! 残り二十秒! これは決まったかァ!?』

『いえ、江様が動きました』


 江様はベーゴマを投げた。力士達の足の隙間を縫って、陣の中心で回転を始めた。さらにもう一発、二発、続けてベーゴマを放った。


『なにをしているんだあッ!?』

『江様はベーゴマを武器として使うようです』

『スケバンぽォい!』


 ベーゴマがぶつかり合い弾けた。弾けた金属の塊は、背後から五人のケツに突き刺さった。


「ぎゃぴー!」


 突然のセンシティブゾーンへの攻撃に、腰が砕けて転がる力士達。その隙を見逃さず、江様が根こそぎ棒を奪っていった。


『やりましたあッ! 江様が大量の棒をゲットォ! そのまま自陣に持ち帰りタイムアップでェす!』

『江様は脳筋タイプかと思われましたが、意外や意外。数々の策略を見せてくれました。ただものではありません』


「江様!」

「江様!」

「江楼様ー!」


 割れんばかりの歓声が、茶柱三姉妹の末っ子に送られた。


「鏡乃山サン! 大丈夫デスか!?」

「うう……負けた……グスン」


 敗れはしたものの、温かい拍手がちゃんこ部にも送られた。部員達に支えられ、鏡乃山は観客席に一礼をしてフィールドをあとにした。


「あああ! ご主人様! 鏡乃ちゃんが負けてしまいました!」

「あのスケバンの子、やるなあ」

「スケバンってなに〜?」

「ドンマイですわよー!」

「次の競技で挽回ですわー!」



 ——第三競技『ダンス』


『次は一年生によるダンスをお楽しみくださァい!』

『おっと? 鏡乃山と江様がペアを組んで踊っていますねw』


「スンスンスン! 江楼ちゃん、いい匂いする! お日様の匂い! スンスンスン!」

「こら、てめえ! くっつくな! ぶっコロすぞ!」


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