第492話 ロボベル賞です!
(厳かなBGM)
「あ、はい。あ、はい。あ、皆さん、こんにちは。『ご主人様チャンネル』の放送がね、うふふ。あ、始まりましたよ。あ、どうも黒男です」
画面に白ティー黒髪おさげ、丸メガネの上からグラサンをかけたのっぽ女が現れた。
「皆さん、こんにちは! 助手のメル蔵です!」
画面に頭から紙袋を被った金髪巨乳メイドロボが現れた。
『始まったwww』
『久しぶりじゃんww』
『待ってたwww』
『メル蔵、デカすぎwww』
「あ、れんりつきりきりさん、こんにちは。あ、飛んで平八郎さん、今日もね、楽しんでいってくださいね。あ、トレース侍さん、ほどほどでお願いしますよ」
「ご主人様! 今日の企画の発表をお願いします! デュルルルルルル、デデン!」
「ロボベル賞の電話を待ってみた〜」
「パフパフパフ!」
『なにそれwww』
『ロボベル賞ww』
『なにいうとんねんw』
「あ、はい。今日はね、あの、世界的な権威があるロボベル賞のね、受賞者の発表が行われますからね。みんなでね、あ、受賞の電話を待ちましょうということですよ」
黒男の前には、ツヤツヤの黒電話が置かれていた。
「あ、この黒電話にですね、あの、電話がかかってきますから。ふふ、メル蔵!」
「はい!」
「ロボベル賞がなにか、説明お願い!」
「はい! ロボベル賞とは、ロボダイナマイトを発明したアルフレッド・ロボベルにより創設された、世界的に権威のある賞です。浅草王立科学アカデミーにより選考された、各分野で功績を収めたロボットとマスターに贈られます」
『今年もそんな季節か〜』
『毎年盛り上がるからなw』
『てか、お前らはなんの賞にノミネートされているのよwww』
「あ、鉄パイプJKさん、ノミネートはですね、されているのか、あ、いないのか、わかりません。公開されていませんから。あ、でもね、あの、私の功績から考えまして、あ、ロボベル平和賞をね、受賞できるのではないかと、ふふ、思っていますよ」
『ワロてるけどw』
『なにワロてんねんwww』
『本当かよww』
「あ、そろそろですね、ロボベル賞の発表がある時間ですから! 皆さん! 世紀の瞬間をご覧ください!」
黒男とメル蔵は、目の前の黒電話に集中した。
「……」
「……」
『……』
『……』
『……』
チン、チリリリリン、チリリリリン。
「うわッ! きたッ!」
「きました!」
『うそだろwww』
『まじかよwww』
『すげぇええええ!』
「うわああああッ! きた! ほんとにきた! ハァハァ、皆さん! 電話が! 黒電話が! ブヒッ! ロボベル財団から電話がきましたよ!」
「ご主人様! 落ち着いてください!」
『はよ、出ろやww』
『鼻水を拭けwww』
『やったじゃんwww』
「ガチャリ。はい、ロボロボ。こちら黒ノ木黒乃です。あ、はい、はい、はい。あー、そうです。あ、あ、あ、はい。ありがとうございます。三丁目の森崎さんのところに、タンメンと餃子を三つずつ。ガチャリ。メル蔵!」
「はい!」
「タンメンと餃子、急いで!」
「いやです!」
「どうして!?」
「間違い電話です!」
「ああ、そう」
『ざまあwww』
『お約束ww』
『出前www』
「ハァハァ、びっくりした。あ、まだですよ。まだここからですから。全然諦めていませんから」
「ご主人様!」
「どした?」
「ゲストを呼んでいたのを忘れていました!」
「あ、そっか。電話でびっくりして記憶から飛んでた。じゃあ出てきて!」
「オーホホホホ! 近所に住んでるマリ助ですわー!」
「オーホホホホ! お嬢様の助手のアンキモですわー!」
「「オーホホホホ!」」
画面に金髪縦ロールにグラサンをかけたお嬢様と、頭から紙袋を被った金髪縦ロールのメイドロボが現れた。
『きたー!』
『マリ助、かわえー』
『アンキモ! アンキモ! アンキモ!』
「やあやあ、お嬢様たち、いらっしゃい」
「黒男さん、落ち込まないでほしいですの。まだおチャンスはありますわよ」
「お嬢様の言うとおりですの」
「うう、ありがとう、ありがとう」
チン、チリリリリン、チリリリリン。
「うわッ! きた! またきた!」
「きましたのー!」
「今度こそ、お受賞のお電話ですわよー!」
「ご主人様!」
「ハァハァ、落ち着け! みんな落ち着け!」
『はよとれwww』
『また出前だろwww』
『期待はしとらんけどww』
「ガチャリ。はい、ロボロボ。こちら黒ノ木黒乃です。え? あ、はい、はい、はい。ええ!? ロボベル平和賞の連絡ですか!?」
『うそだろww』
『マジできたwww』
『やったじゃんww』
「はい! はい! わかりました! はい! はい! 口座にですね! はい! もちろんすぐに振り込みます! はい!」
『あれ?』
『ん?www』
『おいwww』
「やった! やりましたよ、皆さん! ロボベル平和賞を受賞しました!」
「おめでとうございますのー!」
「さすが黒男様ですのー!」
「あの……ご主人様?」
「メル蔵!」
「はい?」
「銀行の口座番号教えて!」
「なぜですか?」
「ロボベル財団の人が、受賞には手数料が必要って言ってるから! 百万円を振り込むと受賞が確定するんだよ!」
『あかーん!』
『詐欺だこれー!』
『騙されとるぞwww』
「あの、ご主人様」
「どしたのよ、早く教えてよ!」
「よしんば本物の電話だとして、なぜ私の口座を使おうとするのですか。ご自分のを使えばいいのではないでしょうか」
「いいから!」
「よくありません。これは詐欺ですので」
「詐欺!? 詐欺なのこの電話!」
「詐欺ですよ」
「いや、そんなことないでしょ! だってロボベル財団って言ってるし!」
「言っているだけですよ」
「でも、本物だったらどうするのさ! せっかくロボベル賞もらえたのに、台無しになっちゃうよ!」
「人生が台無しになるよりマシでしょう」
『食い下がるなwww』
『この貧乳、いい加減にしろw』
『マジでやめとけw』
「こら、黒乃山。その辺にしておかないと、鉄拳制裁するぞ」
「黒乃山。ロボベル詐欺はこの時期に頻発します。気をつけなさい」
画面にグラサンをかけたショートヘアの褐色美女と、頭から紙袋を被った褐色メイドロボが現れた。
「ハァハァ、あ、忘れてた。二人をゲストに呼んでいたんだった」
「やあ、みんな。月からきたマヒ南左衛門だよ」
「マヒ南左衛門様の助手のノエ乃進です」
『きたーww』
『筋肉すげぇwww』
『セクシーw』
「黒乃山、諦めなさい。あなたが詐欺に引っかかってどうするんですか」
「いや、だってさ。本物かもしれないし!」
「だってじゃないだろ。詐欺グループは鉄拳制裁で壊滅させなくては」
「ハァハァ、あ、二人はさ、どうなのよ。ロボベル賞はさ。なんか取れる賞あんの!?」
「あんまり興味ないな」
「マヒ南左衛門様は、賞のために活動しているわけではありませんから」
「まあ、そうだろうけどさ……ん?」
チン、チリリリリン、チリリリリン。
「きましたのー!」
「今度こそ、お受賞のお電話ですのよー!」
「ハァハァ、よし! ガチャリ。はい、ロボロボ。こちら黒ノ木黒乃です。あ、はい。あ、はい。あ、ロボベル平和賞ですか? あ、そうなんですか。あ、はい、はい、はい。あ、間違い電話ですね。知りません。関係ありません。あ、え? あ、はい。ガチャリ」
『またきたーwww』
『今度はなんだww』
『イタズラだろwww』
「……」
「どうした、黒乃山。受賞はできたのか?」
「黒乃山、黙っていてはわかりませんよ」
「受賞できた……」
「おめでとう、黒乃山」
「やりましたね、黒乃山」
『なんだw』
『どしたwww』
『なんか言えやwww』
「マヒナがロボベル平和賞を受賞したって……」
「ええ!?」
「すごいですのー!」
「やりましたのー!」
『今度こそきたー!』
『テレビでも速報きたー!』
『マジかよwww』
「おめでとうございます、マヒ南左衛門様」
「ありがとう、ノエ乃進」
「マヒナさんは、社会不適合ロボを更生させるという活動をずっと続けてきました! その功績を認められての受賞とのことです! おめでとうございます!」
「ありがとう、メル蔵」
「おめでたいですのー!」
「すばらしいですのー!」
「ありがとう、マリ助、アンキモ」
『おめでとうwww』
『マジビビったw』
『さすが月の女王ww』
「おかしいでしょ……」
「ん?」
「ご主人様?」
「なんですの?」
『どした?』
『黒男がなんか言うとるで』
『なんや?』
「黒乃山、言いたいことがあるなら、はっきりと言え」
「だって、そこらのチンピラロボの顔面を殴り飛ばしてるだけでしょ……」
「無礼ですよ、黒乃山。マヒ南左衛門様の鉄拳制裁は、ロボット心理学療法士としての治療……」
「金でしょ……」
「え?」
「金の力で賞を買ったんでしょ……」
『こいつww』
『クズすぎるw』
『こいつを更生させろwww』
「黒乃山、いい加減にしろよ」
「だってさ! 私だって世界を何回も救っているじゃないのよ! なんで私が評価されないのよ! おかしいでしょ! マヒナだけずるいよ!」
「ご主人様! 落ち着いてください!」
「確かにお前は世界を救っているが、やらかしも多すぎるんだよ」
「あなた、浅草を壊滅させたのを忘れたんですか?(400話〜参照)」
「肉球島では、子供達を裏切って暴れましたの(340話〜参照)」
「うわあおおおおお! 私は悪くない! 私は悪くない!」
『あ〜あw』
『子供かww』
『精神性が受賞に向いてないww』
チン、チリリリリン、チリリリリン。
「うわああああ! きた! 今度こそきた! うおおおおお! ガチャリ。はい、ロボロボ。黒ノ木黒乃です。あ、はい。あ、はい、はい、はい。あ、そうですか。へー、そうなんですか。あ、はい。あ、はい。伝えておきます。ガチャリ」
「ご主人様! どうでしたか!?」
「ロボベル児童文学賞を受賞したって……マリーが……」
『うおッ、マジだwww』
『テロップきたーww』
『すげーwww』
「マリ助ちゃん! おめでとうございます!」
「お嬢様は児童向け文学を出版していますのよー!(139話参照)」
「やったな、マリ助!」
「すごいですよ、マリ助」
「ありがとうございますのー! 嬉しいですのー!」
「う、う、う、う……」
『黒男がおかしいぞwww』
『あかーんwww』
『逃げろwww』
「うわわああああああッ! ぎゅぽぽぽぽ!」
「こら、黒乃山! 暴れるな!」
「ご主人様ー!」
「おとなしくしなさい!」
「なんですのー!?」
「てい!」
「ぎゃぴー!」
『あああww』
『あーあー、鉄拳制裁食らったwww』
『¥6000。もうめちゃくちゃだよ』
画面にメル蔵が大写しになった。
「それでは、今日の配信はこれで終わりたいと思います。あ、制御性Tウイルスさん、今日は楽しんでいただけましたか? あ、勾玉ペンダントさん、次回もお願いしますよ。あ、ニコラ・テス乱太郎さん、ロボチャットありがとうございます。では皆さん、さようなら」
『さようならwww』
『また来年www』
『ばいちゃww』
(厳かなBGM)
チン、チリリリリン、チリリリリン。
「ガチャリ。はい、ロボロボ。こちら黒ノ木黒乃です。え? 受賞? イグロボベル賞? え? メイドロボとおっぱいに関する論文が評価? あ、はい。あ、はい。あ、はい……」




