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第49話 ロボット大運動会です! その一

 パン、パパン!

 秋の晴天に花火がヨロヨロと打ち上がり、乾いた音を浅草の町に響かせた。BGMの道化師のギャロップが、これから始まる戦いを予感させた。


『さあァ、始まりましたァ! 秋のロボット大運動会ィ! 実況は私、音楽ロボのエルビス・プレス林太郎でェす』


 場所は台東リバーサイドスポーツセンター。隅田川に面した広大なグラウンドが会場である。


『解説には、おっぱいロボのギガントメガ太郎先生をお招きしましたァ。よろしくお願いしまァす』

『どうもよろしくお願いします。ギガントメガ太郎です』


 グラウンドを取り囲むように観客が大勢詰めかけていた。家族連れ、カメラ小僧、野次馬、なんでもござれだ。それぞれシートを敷き、朝からいい場所をキープしようと頑張ったようだ。


『2090年代に施行された、新ロボット法を記念した祝日『ロボットの日』に合わせて、毎年開催されているこの秋のロボット大運動会、今年で三十回目を迎えましたァ』

『めでたいですね』



 ——第一種目、ナノマシン喰い競争。


『さあァ、最初の競技が始まりましたァ! 今回注目の黒乃・メル子ペアの登場でェす。メガ太郎先生ェ、どこに注目したらいいでしョう』

『メル子選手は八又(はちまた)産業製の汎用メイドロボです。運動能力は高くないですが、ここはコンビ愛で乗り切ってもらいたいです。あとおっぱいがでかいので、揺れに注目です』


 ロボット大運動会は、マスターとロボットがコンビを組んでの出場となる。コンビ毎に点数が与えられ、高得点を獲得したコンビには豪華景品が贈られる。


「メル子! なにがなんでも優勝して、賞品持って帰るよ!」

「お任せください、ご主人様!」


 うおー!と歓声があがる。仲見世通りの人々が応援にきてくれているようだ。カメラ小僧達も一斉にカメラを構えた。

 ピストルの音が鳴り、それぞれの片足をベルトで繋がれた黒乃とメル子は肩を組んで走り出した。身長差があるため、歩幅が合わず動きはぎこちない。他のコンビより出遅れてしまった。


「ご主人様! しっかり合わせて!」

「ハァハァ、疲れた」


 コースに設置されたナノマシン入りのボールを、手を使わずに食べてからゴールしなくてはならない。このゾーンでは足のベルトを外してよい。

 黒乃はメル子の腰を抱きかかえて持ち上げた。メル子は紐に吊り下がったナノマシンボールを口に咥えようとするが、中々うまくいかない。


「ハムハム、ご主人様! もっと右です! もうちょい……いき過ぎです! フラフラしないで!」

「ハァハァ、重い……」


 ようやくナノマシンボールを咥えてゴールに向かったが、結果は惨敗だった。


『あァ! 黒乃・メル子ペア、ドンケツでェす』

『レースには負けましたが、揺れがすごかったので、おっぱいポイントは百点加算します』


 その時、さらなる大歓声があがった。次のレースには……。


『さあァ、第二レースは今大会最注目の、マリー・アンテロッテペアの登場でェす』

『ご主人様もメイドロボも金髪美少女というチートペアですね。おっぱいの大きさではメル子選手に譲るものの、ド派手なビジュアルは今大会ナンバーワンです』


「オーホホホホ! おフランスの力、見せて差し上げますわー!」

「オーホホホホ! お嬢様、優勝はいただきですわー!」


 レースが始まると、アンテロッテはマリーを抱え上げて走った。他のコンビを引き離す。


『これはァ? ルール違反ではないのかァ?』

『ギリセーフです。中学一年生であるマリー選手の軽さを活かした作戦ですね』


 ナノマシンボールの下までくると、抱きかかえられたマリーがそのままボールを口に咥えた。


『これはルール違反でェす! ナノマシンボールはロボットが食べないといけませェん!』

『いや、待ってください、これは!?』


 マリーはナノマシンボールを口移しでアンテロッテに食べさせた。観客からはちきれんばかりの歓声があがり、二人はそのままゴールをした。


『マリー・アンテロッテペア、一着でゴールゥ! 十ポイント獲得でェす』

『いいもの見させてもらいました。百合ポイント百点追加です』



 ——第二種目、ローション綱引き。


『さあァ、きましたァ。大人気競技、ローション綱引きでェす! メガ太郎先生ェ、この競技の見どころを教えてくださァい』

『この競技はなんといっても、ロボローションによるヌルヌルテカテカ。これにつきます』


 黒乃とメル子は競技台に登った。台にはロボローションがたっぷりと塗り込まれており、上に立った途端、二人してすっ転んだ。


「ちょっと、ご主人様! 裾を引っ張らないでください!」

「だってこれ、すっごい滑るよ! 立てない!」


 ローションまみれでもがいている二人の反対側の台には、大相撲ロボとそのマスターである親方のコンビが待ち構えていた。


「あんなのに勝てるわけないだろ!」

「物言いです!」


 二組のコンビは台の上に渡されているロープを握った。スタートの合図とともに力を込めてロープを引っ張る。しかし大相撲ロボの巨体はピクリとも動かず、黒乃とメル子は台の下のロボローションプールにドボンと落ちた。

 カメラ小僧達が一斉にメル子に向けてシャッターを切りまくった。ごく一部のマニアだけが、黒乃にカメラを向けた。


『予想通り黒乃・メル子ペア惨敗でェす!』

『残念ですね。しかしヌルヌルテカテカのおっぱいが拝めたので、おっぱいポイント三百点追加です』


 続いてマリー・アンテロッテペアの登場だ。対戦相手はラグビーロボとそのマスターであるコーチだ。


『さあァ、お嬢様たちはどのような戦いを見せてくれるのでしョうか!』

『ローションまみれの中学生は、色々な意味で危険ですので、気をつけてもらいたいです』


 案の定、お嬢様たちはなす術なく、あっという間にロボローションに落ちてしまった。二人折り重なってローションまみれになった。


「ヌルヌルですわー!」

「テカテカですわー!」


 カメラ小僧達が我先にとシャッターを切ろうとするが、カメラの18禁フィルター機能が作動して、シャッターが下りないようだ。


『午前の競技はここまででェす! 皆さん、ランチタイムをお楽しみくださァい』

『それでは皆さん、午後の競技をお楽しみに』


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