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うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない  作者: ギガントメガ太郎


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389/512

第389話 浅草場所です! その二

 一回戦取組表


 Aブロック

・第一試合 ◯黒乃山xルベール

・第二試合 マッチョメイドx梅ノ木小梅

・第三試合 マヒナxフォトン

・第四試合 ルビーxコトリン


 Bブロック

・第五試合 藍ノ木藍藍xマリー

・第六試合 メル子x黒メル子

・第七試合 サージャx黒ノ木鏡乃

・第八試合 ノエノエxアンテロッテ


*顔面への張り手、マワシ以外を掴む、目潰し、噛みつき、金的は反則



 浅草寺の本堂を背景に、黒乃山が土俵を降りた。大きな拍手に見送られながら、愛しのメイドロボの元へと向かう。


「ご主人様! 大丈夫ですか!?」

「いてててて、ケツが痛いふぉん!」


 いかに黒乃山の巨尻とはいえ、マッハの速度での墜落はこたえたようだ。


「ぷきゅー! でも、初戦は無事突破できたぽき。このまま一気に、決勝まで駆け上がるっしゅよー!」

「がんばってください!」



 ・第二試合 マッチョメイドx梅ノ木小梅


 続いて土俵の上に現れたのは、二メートルを超える巨漢の力士と、それに比べるとはるかに頼りない、細身の力士であった。


『大相撲浅草場所、第二試合ィ! さあ、ギガントメガ太郎先生ィ! 次の取組の注目ポイントを教えてくださァい!』

『はい、マッチョメイド選手と小梅選手の戦いですね。実はこの二人、師弟関係にあります。マッチョマスターが運営する空手道場の師範がマッチョメイド選手であり、小梅選手はその門下生となっております』


 ゴスロリメイド服の上からピンクのマワシを巻いたマッチョメイドは、空手着姿の小梅を見下ろした。


「小梅 えんりょしないで かかってくる」

「押忍! 師範! 全力でぶつかっていきます!」


 両者、土俵の中央で睨み合った。あまりの体格差に、客席からは動揺のざわめきが起こった。


「小梅さんー! 勝ってくださいましなー!」土俵の下からのマリーの声援に、ますます闘志をみなぎらせる少女。


『両者、見合って見合ってェ! のこったァ!』


 小梅は電光石火のタックルをマッチョメイドに炸裂させた。マッチョメイドは微動だにせずそれを受け止めた。


『さすが、マッチョメイド選手。小梅選手のタックルにもびくともしません。おっと?』


 小梅はいったん土俵際まで下がった。タワラに足をかけると、足に力を込めた。そして姿勢を低くして突進した。


『勢いをつけてのぶちかましだあッ!』

『いや、ここで変化です』


 ぶつかる寸前に体を泳がせ、横に逃げる。再びタワラに足をかけ、今度は背後からぶつかった。それを繰り返し、何度もぶちかましを仕掛けた。だが、どれもマッチョメイドをただの一歩すら動かすことは叶わなかった。


「ハァハァ、やはり無理ですか……」


 力なく肩を落とす小梅。マッチョメイドはそんな弟子を厳しい目で見据えた。


「小梅 ほんきだす まだほんき だしてない」

「本気……」


 その言葉を聞き、小梅は構えた。目に光が灯った。


『ああッ!? この構えはァ!?』

『空手の構えですね』


 半身に構え、握った拳は前後に置く。膝を曲げ、スタンスを広くとった。


「師範! いきます!」


 小梅は飛んだ。その跳躍力に観客達は大きく口を開けた。マッチョメイドの顔面目掛けて鋭い蹴りを放った。


『大技が出たァ! 空中二段蹴りだァ!』

『顔面への張り手は禁止されていますが、顔面への蹴りは禁止されていない、ルールの穴をついた見事な攻撃です』


 マッチョメイドはその蹴りを片手でいとも容易くさばいた。しかし本命は蹴りではない。小梅は空中で受けの手に両足を絡めた。マッチョメイドの丸太のような腕にしがみつき、足を首へと伸ばす。


『なんとォ! 飛びつき腕十字だあァ!』

『見事な連携、ですが……』


 そのまま体重をかけてマッチョメイドを引き倒そうとした。しかしマッチョメイドは倒れなかった。腕一本で絡みつく小梅を持ち上げていた。


『今大会ナンバーワンのォ! 圧倒的怪力ィ!』

『無理みたいですね』


 マッチョメイドは腕に小梅を絡みつかせたまま土俵際まで歩くと、膝を曲げて土俵の外に小梅の背中をつけた。小梅は力尽き、土の上に転がった。


『勝負ありましたァ! 決まり手は「串カツのソース漬け」でェす!』

『予想された結果ではありますが、小梅選手もよく戦ったと思います』


 マッチョメイドは土俵に転がって涙を流す小梅の手をとり引っ張り起こすと、その肩を優しく叩いた。


「小梅 よくやった えらい」

「うう……師範!」


『美しい師弟愛だあッ!』

『ほっこりしましたね』


 大きな拍手に送られて、二人は土俵を降りた。



 ・第三試合 マヒナxフォトン


『これまた異色の組み合わせだあッ!』

『マヒナ選手は月の女王にして、人体を戦闘用に改造したサイボーグ。対するフォトン選手は子供型ロボット。戦闘能力はないに等しいです。ですが、なにかをやってくれそうな雰囲気がフォトン選手にはあります』

「……フォト子ちゃんって呼んで」

『これは失礼しました』


 マヒナの褐色肌に浮いた汗が艶かしく光った。その筋肉は生き生きと脈動しており、戦いの準備が万全であることを窺わせた。

 対するフォトンは、青いロングヘアをしきりに整えていた。そして両手でロボ塩を大胆に掴むと、土俵の中央に向けて放り投げた。それは十二月の太陽を反射して、雪のように舞った。


「……絶対に勝つ」

「ふふふ。やる気だな、フォト子ちゃん」


 マヒナは不敵に笑った。相手が子供に見えようが、決して油断はしないという鋭い視線を放っていた。


『さあ、土俵の中央ォ! 両者手をついてェ〜! のこったァ!』

『立合い、おっと? フォト子ちゃんが消えました』


 マヒナとフォトンがぶつかったと思った瞬間、土俵からフォトンが消え失せていた。力のいき場を失い、思わずつんのめるマヒナ。


『なんだあッ!? フォト子ちゃんが土俵からいなくなったァ!』

『なるほど、これはロボ塩を利用した環境利用相撲ですね』


 土俵の端に盛られたロボ盛り塩が、弾けて飛んだ。それはゆっくりと空中を漂い、細かく光を反射した。


「……うふふ、えい」

「うおっ!」


 背後からの突きをくらい、危うく倒れかけるマヒナ。慌てて周囲を見渡すが、どこにもフォトンの姿は見えない。


『先生ェ! これはどういうことでしょうかァ!?』

『フォト子ちゃんの頭髪は偏光素子が編み込まれた特別製です。これにより頭髪の色を自在に変化させて、カメレオンのように擬態することが可能です。しかしここは土しかない狭い土俵。通常ではその機能は充分には活かせません。そこで使ったのがロボ塩です。通常より比重が軽いロボ塩を散布することにより、煙幕のような効果を発生。より擬態の強度が増したのです』

『さっぱりわかりませェん!』


 再び土俵の端に盛られたロボ塩が弾けた。もはや土俵の上は雪が舞う冬景色だ。


「なかなかやるな、フォト子ちゃん。しかし姿を消したからといって、この月の女王をどうにかできると思ってもらっては困るな。いたっ!?」


 その途端、マヒナは股間を押さえてうずくまった。


「こら、行司! 股間を攻撃されたぞ! いでっ!?」


 次は目を押さえて悶えた。


『先生ェ! これはァ!?』

『姿が見えないのをいいことに、金的、目潰しのオンパレードですね。普通は反則負けですが、見えないのでどうにもできません』

『えぐゥい!』


「むむむ、子供かと思って優しくしていれば〜!」

「……子供型ボディだけど、ちゃんと成人してる」


 マヒナは右腕を天に突き上げた。その腕の肘から先が高速回転を始めた。回転の加速とともに、周囲に旋風が巻き起こった。それは徐々に勢いを増し、竜巻となった。


「必殺! マカニ・ザ・マウナケア!」

『ハワイ語でマウナケア山に吹く風という意味の、クソダサネーミングですね』


 突風をうけ、ロボ塩がすべて吹き飛ばされてしまった。フォトンの体を包んでいたロングヘアも、なびいてその機能を失った。


「そこだな!」土俵に姿を現したフォトンに鋭いタックルをかました。

「……ぐえっ」


 あっという間にフォトンはマヒナに抱きかかえられていた。


「アタシにいたずらをした悪い子はどこかな?」

「……あわわ、はわわ、はなして」


 マヒナの腕の中でジタバタともがくフォトン。その可愛いお尻にマヒナの平手が炸裂した。乾いた音が浅草寺の鐘に反響した。


「悪い子はこうだ!」

「……いたい! 陰子先生、クロ社長、助けて」


 お尻から鳴り響く破裂音に観客達は顔をしかめた。


『ああッ! これはお仕置きプレイだァ!』

『決まり手「スパンキング」でマヒナ選手の勝利です』


 お尻をさすり、涙を流しながら土俵を降りるフォトンを、黒乃山とメル子は青ざめた顔で迎えた。


「……ううう」

「フォト子ちゃん! 大丈夫ですか!」


 

 ・第四試合 ルビーxコトリン


 土俵には銀髪ムチムチのアメリカ人力士と、緑色のストレートロングヘアの少女型ロボットが見合っていた。


『一回戦Aブロック最後の試合はァ! ルビー・アーラン・ハスケル選手とォ! コトリン選手だあァ!』

『ルビー選手は超AIプロジェクト神ピッピのチーフプログラマです。そしてコトリン選手は大手ゲームパブリッシャー、ロボクロソフトに所属するプログラミングアイドルロボです。二人とも凄腕のプログラマで、業界では有名ですね』

『先生ェ! それは相撲にどう関係してくるんでしょうかァ!?』

『関係ないですね』


 ルビーが四股を踏むと、ムチムチの駄肉ボディが震えた。少ししか動いていないのにもう汗だくで、タンクトップがびしょ濡れだ。

 一方、プログラミングアイドルロボのコトリンは、その様子を食い入るように見つめた。眼球の(アスタリスク)(ダラー)に変化した。


「ハァハァ、ルビー様」

「わぁ〜お、お相撲とるの〜、はじめてね〜」


 両者土俵の中央でぶつかった。ペチンという可愛い音の後に、キュポンキュポンとなにかが吸い付いたり離れたりする音が続いた。


『始まったァ! けど、なんだこれはァ!? 小学生同士のお相撲かァ!?』


 二人とも密着したまま、右へいったり左へいったりを繰り返した。


『ルビー選手は結構いいガタイをしているのですが、あまりにも軟弱、運動神経NULL(ヌル)です。それに対してコトリン選手はアイドルですから、ダンスで体は鍛えています。一瞬で勝負はつくはずなんですが』


 コトリンはルビーのお肉に顔を埋めたまま、至高の表情を見せている。ルビーはこの状況をなんとかしようと顔を真っ赤にさせた。


「ハァハァ、ルビー様、ルビー様」

「かてぃったうと〜、やめて〜」


 ルビーからほとばしる体液でデロデロになったコトリン。あまりにも動きがないので、行司が割って入り、水入りとなった。


『あーあー、先生ェ! なんですかこれはァ!?』

『どうやらコトリン選手は、ルビー選手に抱きつきたいだけのようです。黒乃山のメイドロボへの偏愛と似たようなものでしょうか』


 行司が勝負を再開させようとしたものの、ルビーが土俵に寝そべったままピクリとも動かなくなったので、決まり手『脱水』でコトリンの勝ちとなった。



『次はいよいよ、一回戦Bブロックの取組となりまァす!』

『期待しましょう』


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