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うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない  作者: ギガントメガ太郎


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388/510

第388話 浅草場所です! その一

 パンパパン!

 晴れ渡る冬の空に、花火の乾いた音が轟いた。場所は浅草が誇る観光名所浅草寺(せんそうじ)。その境内(けいだい)には、豪華な土俵が作られていた。その威容は神聖なる本堂にも引けを取らない佇まいを見せ、周囲に並べられた椅子は、既に大勢の客によって埋め尽くされていた。


『さあ、毎年恒例冬の一大イベントォ! その名も『大相撲浅草場所』がやってまいりましたァ! 実況は私、音楽ロボのエルビス・プレス林太郎でェす』

『どうも、皆さん、お久しぶりです。解説を担当します、おっぱいロボのギガントメガ太郎です』

『先生ェ! よろしくおねがいしまァす!』

『よろしくおねがいします』


 客席から大きな歓声が上がった。列をなして現れたのは、本日の主役となる女性力士軍団。


『現れましたァ! 本日の浅草場所を戦う、総勢十六名の巨人ンン! 揺れている揺れているゥ! 浅草寺が期待に揺れているぞォ!』

『みなぎっていますね。全員やる気満々です』


 四名の力士が土俵に上がった。褐色肌のメイドロボ、金髪縦ロールのメイドロボ、巫女装束を纏ったメイドロボ、白ティー丸メガネ黒髪おさげの少女が盛大に四股を踏んだ。


『出ましたァ! 前回優勝者ノエノエ選手を筆頭にィ! アンテロッテ選手! サージャ選手! 鏡乃(みらの)選手だァ! ギガントメガ太郎先生ェ! 誰に注目すればいいでしょうかァ!』

『依然ノエノエ選手は優勝候補ではありますが、まさかのサージャ選手の出場に展開が予想できなくなってきましたね』


 次に土俵に上ったのは、大きなお団子ヘアのピチッとした女性、金髪縦ロールの少女、金髪巨乳メイドロボ、金髪貧乳メイドロボだ。


『さあ、次はァ!? 藍ノ木藍藍(あいのきあいらん)選手とォ! マリー選手ゥ! そしてェ! 我らがメル子選手と黒メル子選手だァ!』

『藍ノ木選手は最強の横綱藍王(らんおう)関の妹です。優勝候補の一人とみなしていいでしょう。えー、あとは可愛いどころを揃えた感じですね』


 三組目の四人が土俵に上がった。褐色肌の美女、青い髪の子供型ロボット、銀髪ムチムチのアメリカ人、そして大きな頭のリボンが特徴の少女型ロボットだ。


『異色の組み合わせがきたァ! 月の女王マヒナ選手! フォトン選手! ルビー選手! 最後にプログラミングアイドルのコトリンだァ!』

『マヒナ選手は間違いなく優勝候補です。あとの三人は戦えるのでしょうか? 見ものですね』


 最後の四人が土俵に上った。その途端、会場は静まり返った。


『きたきたきたァ! 我らのヒーローがやってきたァ!』

『前回準優勝の黒乃山、ルベール選手、マッチョメイド選手、小梅選手の登場です』


 黒乃山が四股を踏んだ。その振動が客席にまで伝わってきた。


『すごォい! 揺れているゥ! 浅草寺が揺れているぞォ!』

『まあ、マッチョメイド選手の四股で揺れているんですが。しかし今回はどんな戦いを見せてくれるのか、目が離せませんね』


 全力士が土俵に揃い踏みした。土俵の上で堂々と立つ彼女達からは、神々しさを感じられた。相撲とは元来神事。一年の締めくくりとして今年の邪気を払い、新たなる年へ向けて歩み出す。本堂を背に立つ彼女らからは、その心意気が感じられた。


『では、取組の組み合わせを発表しまァす!』



 一回戦取組表


 Aブロック

・第一試合 黒乃山xルベール

・第二試合 マッチョメイドx梅ノ木小梅

・第三試合 マヒナxフォトン

・第四試合 ルビーxコトリン


 Bブロック

・第五試合 藍ノ木藍藍xマリー

・第六試合 メル子x黒メル子

・第七試合 サージャx黒ノ木鏡乃

・第八試合 ノエノエxアンテロッテ


*顔面への張り手、マワシ以外を掴む、目潰し、噛みつき、金的は反則



『ギガントメガ太郎先生ェ! このような組み合わせになりましたァ!』

『非常に興味深いですね。まず、前大会にたくさんいた名前ありのモブキャラ達は、全員リストラされました(92話参照)』

『せつなァい! レギュラーキャラが増えたから仕方がないとはいえ、この一年がんばってきたのにィ!』

『次に、出場を予定していたアニー選手は足首をグネってしまいましたので(379話参照)、アニー選手、マリエット選手は欠場。リザーバーのルベール選手と、サージャ選手が出場することになりました』

『お大事にしてくださァい! 代わりにどえらいのがきたァ!』

『最後に、今大会優勝者にはご褒美として、最強の横綱藍王(らんおう)関との対戦が実施されます。これは藍王関の申し出によるものです』

『なんてこったァ! あの伝説の横綱と対戦とはァ! これ以上ないご褒美だァ!』



 ・第一試合 黒乃山xルベール


 白ティーの上から黒いマワシを巻いた黒乃山が、土俵の上でしきりにマワシを叩いた。対して、クラシカルなヴィクトリア朝のメイド服の上から白いマワシを巻いたルベールは、困惑の表情で周囲を見渡した。


「困りました……まさかこのようなところに出場することになるなんて。いつもお店にきてくれる常連様の頼みを、断りきれませんでした」

「もきゅー! ぷきゅー! ルベールしゃんとお相撲を取れるなんて、ぷふー! 幸せでしゅ!」


『たぎっているゥ! 黒乃山がたぎっているぞォ!』

『大好きなメイドロボとの一戦に、興奮を隠しきれないようですね。しかしルベール選手はあの近代ロボットの祖、隅田川博士が作った最古のロボットの一体。鉄腕(アストロ)の異名を持つ、最強のメイドロボです。いかに黒乃山といえど、そう簡単にどうこうできる相手ではありません』


 両者土俵の中央で手をついた。先ほどまでのざわめきが消え、客席が静まり返った。冬の冷たい風が二人の頬をそっと撫でた瞬間、戦いが始まった。


『両者ァ! ぶつかったァ!』

『さすが黒乃山、上手(うわて)を取りました』


 黒乃山はマワシを引きつけようと腕に力を込めた。しかしルベールの十万馬力の剛腕によって阻まれた。


「ぽきゅー! すごい力だふぉい!」

「黒乃様、あまりマワシを引っ張らないでください」


 ルベールはマワシを切り、片手で投げを打った。勢いよく振り回される黒乃山。その勢いをあえて殺さず、逆に加速することによってルベールの背後を取った。


『ああッ! これは見事な返しだあッ!』

『稽古の成果が出ましたね』


 観客のボルテージが跳ね上がった。そう、この体勢は……。


「フンフンフン!」黒乃はルベールを背後から締め上げた。


『きましたァ! 黒乃山、伝家の宝刀! さば折りだあッ!』

『初戦からこの大技が見られるとは思いませんでした。普通ならここで勝負ありですが、さあルベール選手、どう出るでしょうか?』


「フンフンフン!」

「黒乃様! 痛いです。そんなに締め付けないでください」

「フンフンフン!」


 その時、ルベールの足から赤い炎と白い煙が噴出した。あっという間に土俵は熱に包まれた。


「あぢぢぢぢぢぢぢ!」その熱で悶えるものの、まったく力を弱める気配がない黒乃山。


 ジェット噴射により、二人の体が宙に浮かび上がった。


『ああッ! 浮いているッ! いや、飛んでいるゥ!』

『航空相撲ですね』


 白煙の帯を揺らしながら、二人は上空へ打ち上がった。観客達は全員青空を見上げた。


「おぎゃああああああああ!?」

「黒乃様! 暴れないでください。制御が……」


 体勢を崩した二人は真っ逆さまに落下をした。


『ああああッ! 落ちるぞォ!』

『やばいですね』


 二人は土俵に落下した。噴出煙が客席にまで広がり覆い尽くした。やがて十二月の風によって煙が払われると、土俵に転がる力士二人が見えた。静まり返った観客達は固唾を飲んで二人を見守った。

 仰向けになり、腕にルベールを抱えた黒乃山は、空に向けて親指を突き出した。


『生きています! 生きていまァす!』

『なんとか無事のようです。行司の軍配はルベール選手のようですが、物言いがつきました。勝敗がどうなったのか、映像でチェックしてみましょう』


 勝負審判達が土俵に上り、審議を開始した。


『二人は頭から土俵に落下しようとしていまァす! しかしここでェ!? ああッ! 地面に激突する寸前に、黒乃山がルベール選手を庇って守っていまァす! 巨尻から着地をして、衝撃を完全に吸収しましたァ!』

『判定の結果が出たようです』


 審判長がマイクを握った。


『えー、審議の結果をお伝えします。ルベール選手の『イズナ落とし』により、黒乃山が先に土俵についたという行司の軍配でしたが、黒乃山がかばい(しり)により、ルベール選手を守ったのではないかという物言いがつきました。協議の結果、黒乃山の(しり)は死んではおらず、かばい(しり)が成立するとみなし、『イズナ返し』により黒乃山の勝ちとします』


 客席から大歓声が上がった。大きな拍手が巻き起こった。観客達は立ち上がり、黒乃山の漢気を称えた。


『お見事でェす! 黒乃山が初戦を制しましたァ!』

『これはかっこいいですね。さすが世界一メイドロボを愛する漢です』

「誰が漢じゃい」


 こうして波乱の大相撲浅草場所は幕を開けた。


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