第35話 ジョジョを勉強します!
「それではジョジョ学の授業を始めます」
「起立! 礼! 着席! 黒乃先生よろしくお願いします!」
「はい、よろしく。今日はイチャイチャとか笑いとか、一切ないから覚悟するように」
「はい!」
「まず『ジョジョの奇妙な冒険』とはなにか。なんだと思うね、メル子くん」
「はい! 漫画です!」
「そう! 1986年に週刊少年ジャンプで連載を開始し、21XX年現在まで連載しているという超人気漫画だ。作者は荒木飛呂彦先生。お元気ですか」
「ウリィ」
「ジャンルは冒険活劇、ホラーサスペンス、バトルモノ。一言で表すのは難しい」
「先生、なぜですか?」
「ジョジョは部構成になっていて、各部によって話の内容がガラリと変わるからだね」
「今は何部まで続いているのですか?」
「いい質問だ! 三十部です」
「そんなに多いのでは話の内容を覚えきれません」
「メル子くん、心配しないでも大丈夫。ジョジョには基本的なストーリーラインがあり、各部ともそれに沿うような内容になっているのだ。順に説明していこう」
『第一部ファントムブラッド』
「ジョジョはここから始まった。ここにジョジョのすべてが詰まっていると言っても過言ではない!」
「主人公は誰ですか?」
「主人公はジョナサン・ジョースター。十九世紀のイギリス貴族の青年。ジョースター家にディオ・ブランドーという青年が養子にくるところから物語が始まるのだ」
「このディオというのがラスボスなのでしょうか?」
「そのとおり。このディオとジョースター家の数世代にわたる戦いが、ジョジョの基本構成となっているのだ」
「ディオはどんなやつなのでしょうか?」
「一見イケメンの貴公子に見えるが、生まれながらの悪なのだ。ゲロ以下の臭いがプンプンするぜ。ディオはジョースター家を乗っ取ろうと企んでいるのだ」
「でもしょせんは人間ですよね?」
「ディオは石仮面と呼ばれる古代アステカの民が持っていた道具を使い、吸血鬼になってしまう。普通の人間にはできないことを平然とやってのける! そこにシビれる?」
「あこがれるゥ!」
「吸血鬼になったディオに対抗するために、ジョナサンは『波紋』を身につける」
「波紋?」
「波紋は特殊な呼吸法によって生命エネルギーを生み出す技術なのだ。この波紋を吸血鬼に流し込むと溶けて死にます」
「グッパオン」
「果たしてジョナサンはディオを倒すことができるのか!? これが第一部の内容だ!」
『第二部戦闘潮流』
「一部のジョナサンとディオとの戦いの五十年後が舞台だ。主人公はジョナサンの孫ジョセフ・ジョースター!」
「敵はやはりディオなのでしょうか?」
「そうではない。ディオが使った石仮面を作った人物『柱の男達』が敵となる。ディオ達吸血鬼は柱の男にとっては餌でしかない」
「先生! そんなのに勝てる気がしません!」
「そのとおり。吸血鬼の何倍も強い柱の男と、どうやって戦うのか」
「波紋ですか?」
「それはもちろん使う。しかしジョセフの最大の武器は『ペテン』だ! 人を騙すテクニックを最大限使い、柱の男達と戦うのだ! 歴代ジョジョきってのトリックスターだ」
「オーノーだズラ」
『第三部スターダストクルセイダーズ』
「いよいよ三部だ。ジョジョといえば三部という人も多い」
「なぜでしょうか?」
「それは三部から新しく追加された能力『スタンド』が登場するからだ!」
「先生! 幽波紋とはどういうものでしょうか」
「その当て字はやめなさい。スタンドは生命エネルギーが作り出す姿あるビジョン、自由自在に操れる守護霊や背後霊のようなものだ」
「それのなにがすごいのですか?」
「スタンドは超能力を擬人化したところが画期的だったのだ。それまでの超能力は、力を加えた『結果』だけが絵として表現されていた。しかしスタンドは人型の霊が現れて敵をブン殴るという力の『過程』と『結果』を同時に絵で表現することに成功したのだ。これは漫画界の革命と呼ぶに相応しかった」
「先生、敵は誰ですか?」
「敵はなんとDIOだ」
「DIOとかいうザコは死んだはずでは!?」
「そう、なぜか生きていたDIOが百年ぶりに復活したのだ。しかも最強のスタンド能力『ザ・ワールド』を身につけて!」
「助けて承太郎!」
「コラ、先に言うな。ジョセフとその孫の空条承太郎がDIOに立ち向かうというストーリーだ」
「やれやれだせ」
『第四部ダイヤモンドは砕けない』
「第四部は『杜王町』という小さな町が舞台の群像劇となる」
「急に雰囲気が変わりましたね」
「うむ。主人公はジョセフの息子で普通の高校生の東方仗助だ。リーゼント頭でそれを貶されるとキレてスタンドでブン殴る」
「そいつはグレートだぜ」
「この部が特異なのはラスボスにある」
「またDIOですか?」
「違う。なんとラスボスはサラリーマンの吉良吉影だ」
「世界征服を企んでいるサラリーマンですか?」
「このサラリーマンの目的は『静かに生きること』だ。誰とも争わず、馬鹿にもされず、なんのトラブルもなく、植物のように平穏な心で日々を送ろうとしている。いまだかつて、そんなことが目的のラスボスがいただろうか」
「平和なやつですね。放っておけばいいじゃあないですか」
「でも殺人鬼なのだ」
「静かな暮らしはどこへ!?」
「吉良吉影はその高い能力によって、殺人をしながら穏やかに暮らしているというバケモノなのだ。このようなラスボス像は漫画界に例がなく、読者の少年達に得体の知れない恐怖を植え付けた。杜王町の日常に潜む恐怖との戦いが四部の魅力だ」
『第五部黄金の風』
「聞いて驚け。五部の主役はDIOの息子ジョルノ・ジョバァーナだ」
「ジョースター家の話は終わったのですか?」
「DIOの体はジョナサンのものなので、血筋的にはジョースター家なのだ」
「すごい理屈ですね」
「もっとすごいのがこのジョルノ。十五歳にしてイタリアギャングのボスになる」
「まだ中学生じゃあないですか! しかもギャングって。やはり悪者ですか?」
「そうではない。ジョルノは街を守るためにギャングになるのだ。敵は街を支配するギャングのボスだ」
「なんでチョココロネがギャングになると街が守られるのですか?」
「ディモールトいい質問だ。ギャングのボスは街に麻薬を流通させているクズなのだ。子供に麻薬を流すようなギャングを消し去るには、自らギャングにならなくっちゃあいけないってことさ」
「なんだってッ!!」
『第六部ストーンオーシャン』
「六部の主人公の空条徐倫は承太郎の娘だ」
「もしかして女性主人公ですかーッ?」
「Yes! Yes! Yes! しかも舞台は刑務所。つまり女囚モノだ!」
「Oh my God!」
「徐倫はプッチ神父という男にはめられて刑務所に入ることになった。このプッチ神父はDIOに影響されて『天国へいく』ことを目的としている」
「天国へは一人でいけばいいじゃあないですか」
「なんとこの神父。全人類を天国へ連れていこうとしている」
「迷惑過ぎませんか!?」
「そのとおり。自分が悪だと気がついていないもっともドス黒い邪悪なボスだ」
「磔刑にしましょう」
「しかし神父の目的は半分叶って宇宙は一巡してしまう」
「は?」
「神父の力で宇宙は一旦終わり、また新しい宇宙が始まったのだ」
「話のスケールがとんでもないですね」
「しかしこれでジョースター家とDIOの話は一旦区切りがついたのだ」
「ウリィ……」
『第三十部ロボリオン』
「全部の解説は時間が足りないので一気に最新の部の紹介だ」
「先生、主人公は誰ですか?」
「主人公はロボ方ロボ助、略してロボロボだ!」
「もうジョジョですらないのですね」
「ロボロボが杜ロボ町に潜む殺人鬼であるロボ良ロボ影、略してロボロボを倒すのが目的だ」
「被せてきますねー」
「現在ロボリオンは週刊少年ロボットで連載中だ。気になった方はぜひ手にとってみてほしい」
「だが断る」
「どうだったかな? ジョジョ学の授業は」
「先生、とてもわかりやすかったです!」
「それはよかった。ではまたどこかでお会いしましょう。アリアリアリアリ」
「「アリーヴェデルチ!」」