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第247話 SF小説を読もう!

「起立! 礼! 着色! メル子先生、おはようございます!」

「はい、黒乃君。おはようございます」

「メル子先生! 今日はなんの授業なんですか!?」

「本日はSFについて勉強したいと思います」


「SF!? SFって、あのSF小説とかSF映画とかのSFですか!?」

「はい、そのとおりです。Science(サイエンス) Fiction(フィクション)の略で、日本語にすると空想科学小説になります」

「先生! SFってなんだか難しそうなイメージがあります!」

「実際難しいです。でも安心してください」

「難しいんですか!?」

「SFには難しいものと、そうでないものがあります。黒乃君、この『うちのメイドロボがそんなにイチャイチャ百合生活してくれない』は難しいと思いますか?」

「ええ!? 『うメそイ』がですか!? 全然難しくありません!」

「そんな略し方なのですね。そうでしょう。この作品はSFなのにまったく難しくありません」

「この作品ってSFだったんですか!?」

「はい、SFですよ。必ずしもSFだから難しいわけではありませんし、難しかったとしても楽しむことができるのです。今日はSFの面白さと、この作品との関わりを伝えていければと思います」

「メル子先生、よろしくお願いします!」

「各小説のネタバレには充分に配慮するので、まだ読んでいない方もご安心ください」



 ——『われはロボット』、アイザック・アシモフ、1950年。


「はい、SFといえばこの作品は外せません」

「聞いたことがあります! というか……アイザック・アシモフって、職人ロボのアイザック・アシモ風太郎先生と名前が似ています!」

「もちろん、風太郎先生の元ネタです。アシモフは最も有名なSF作家と言っていいでしょう」

「どんな作品なんでしょうか!?」

「はい、ロボット心理学者であるスーザン・キャルヴィン博士の回顧録という形の短編集となっています。この作品の特筆すべきは『ロボット三原則』が打ち出された点にあります」

「ロボット三原則! 聞いたことがあります!」

「ではそれを見てみましょう」


 ・第一条

 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

 ・第二条

 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

 ・第三条

 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。


 ※ウィキペディアから引用。


「先生! 難しいです!」

「要約すると、人間を守れ、人間の言うことに従え、一応自分の身は自分で守ってね、ということです。この三原則をネタにしたロボット達の奇行集です」

「奇行!?」

「はい。出てくるロボット全員奇行に走ります」

「なぜですか!?」

「それはロボット三原則に、そもそもの欠陥があるからです。現実世界では成り立たない原則として扱われています。うちの作品でもすでに撤廃されていますよ」

「そういえば、メル子もぜんぜんご主人様の言うことを聞きません!」

「うちの作品のロボットには人権があるからですね。ロボット三原則は人権に反するというわけです。ちなみに、第200話に出てきたロビイもこの作品からのオマージュです」



 ——『星を継ぐもの』、ジェイムズ・P・ホーガン、1977年。


「月面で発見された五万年前の遺骸であるチャーリーを巡る物語です」

「チャーリー!? うちにもロボット猫のチャーリーがいます!」

「チャーリーは見た目も遺伝子も人間とほぼいっしょの生物です。いったいなぜ五万年も前にチャーリーが月にいたのか。それをハント博士とダンチェッカー教授が、解き明かしていく物語となります」

「ハント博士とダンチェッカーって、チャーリーのライバルと想い猫だ!」

「五万年前になにがあったのか、チャーリーはどこからきたのか、なぜチャーリーと人類はそっくりなのか。チャーリーと人類の秘密がパズルのピースをはめていくかの如く解き明かされる様は、究極のエンターテインメントといっても差し支えない傑作となっています」

「科学部分が難しそうです!」

「確かに物理学や生物学の知識がふんだんに盛り込まれていますが、ミステリとして楽しむことができます」



 ——『月は無慈悲な夜の女王』、ロバート・A・ハインライン、1966年。


「あれ? これもなにか聞いたことがあります!」

「はい、第178話からの『月は無慈悲なロボの女王』の元ネタの小説です」

「なるほど! どんな話なんですか!?」

「地球の流刑地である月の人々が、地球から独立をする話です。月の生活、地球との関係、そしてクーデターの方法。すべてが詳細に描かれています。あまりにも詳しくクーデターについて書かれているので、この作品を読んだあとはクーデターを起こせそうな気分になります」

「物騒!」

「重厚すぎる物語ではありますが、科学要素は控え目です」



 ——『火星の人』アンディ・ウィアー、2011年。


「主人公のマーク・ワトニーが一人で火星に取り残される話です」

「ワトニー!? 小熊ロボのワトニーだ!」

「火星に調査にやってきたワトニー達は、砂嵐に見舞われて帰還するハメになります。しかし火星を脱出する際、ワトニーだけが事故で取り残されてしまいます。たった一人取り残されたワトニーは、小さな基地の中でジャガイモを育て、四年後にくるはずの調査隊を待ちます」

「一人だけで火星で生きられるわけがないですよ!」

「確かに普通の感覚からすると、そのようなことは不可能に思えます。しかし、ワトニーは科学の力によりそれを実現しようとするのです。次から次へと襲いかかるトラブル。陽気なワトニーはまったくめげずに気楽にトラブルを解決していきます」

「かっこいい!」

「この小説の特徴は、科学的な考証がよく練られていることです。物理的に不可能なことは起こりません。現実の科学の力で一つずつ試練を乗り越えていく様は、まさにサバイバルです。科学の知識がなくても、サバイバルモノとして楽しむことができます」



 ——『三体』、劉慈欣(リウ・ツーシン)、2008年。


「三部作からなる超大作です。三体問題を抱える三体星人と、地球人との戦いを描いた圧倒的スケールの作品です」

「三体問題って聞いたことあります!」

「はい、うちの作品では第54話に『三ロボ問題』として登場します。またアン子さんの必殺技『曲率推進ブレード』も三体が元ネタになっています」

「科学的には難しいんですか!?」

「難しいです。物理学はもちろん、量子力学の知識もふんだんに盛り込まれています。スケールがとんでもなく大きい話なので、宇宙全体を捉えられる想像力が必要です」

「量子力学なんてわかりませんよ!」

「その他にも『智子(ソフォン)』、『暗黒森林理論』、『面壁者』、『階梯計画』、『小宇宙』。様々な怪しいギミックが楽しめます」

「なにそれ!?」

「うちの作品の量子人間紅子は、外伝の『三体ゼロ』から着想を得ています」



 ——『アルジャーノンに花束を』、ダニエル・キイス、1959年。


「第114話『マッチョメイドに花束を』の元ネタ小説です」

「あんなしょうもない話に元ネタがあったんですか!?」

「障害により六歳児の知能しか持たない青年チャーリイが、脳手術を受けて天才になる話です。同じく手術によって天才になったハツカネズミのアルジャーノンと、お友達になります」

「ネズミまで天才に!?」

「チャーリイはその頭脳を活かして様々な研究に取り組みます。しかし、天才になったはずのチャーリイは幸せにはなれませんでした。知能が高いからこそ、かつての自分がどれほど惨めであったのかを知ってしまったからです」

「かわいそう!」

「科学要素は天才脳手術の部分だけですので、ヒューマンドラマとして楽しめると思います」



 ——『ソラリス』、スタニスワフ・レム、1961年。


「惑星ソラリスの秘密を探る物語です」

「ソラリス!? ソラリスって、あのローション生命体のソラリスですか!?」

「そうです。その元ネタがこのソラリスです。主人公ケルビンは、ソラリスの上空に浮かぶステーションに調査にやってきます。ソラリス唯一の生物である『海』を調査するためです」

「海が生物なんですか!?」

「はい、海全体が一つの生命体なのです。圧倒的な知能を持ちます。海に機械を投げ込むと、その機械を複製してしまいます。さらに人間の頭の中を読み取って、その情報からその場にいない人間を複製することもできます」

「すごいです!」

「しかし、ソラリスとはまったくコミュニケーションが取れないのです。ソラリスはなにを考えてそんなことをするのか。それを探る物語です。科学要素は少なめです。しかし、とてつもなく難解です」



 ——『エンダーのゲーム』、オースン・スコット・カード、1977年。


「エンダー君がバガーと戦う話です」

「シンプルゥ!」

「地球はバガーという宇宙人に、過去二回侵略を受けています。奇跡的に撃退できたものの、三回目の侵攻には耐えられないことを悟り、人類は最後の賭けにでます。超強力な兵器の開発と、超優秀な指揮官を育ててバガーと戦おうという作戦です」

「その指揮官がエンダー君なんですね!?」

「そのとおりです。第三子(サード)のエンダー君は天才なのに超ネガティブ。ご主人様の妹の紫乃(しの)ちゃんが自分のことをサードのいらない子と呼ぶのはここからきています」

「天才なのにネガティブって、なろうみたいです!」

「エンダー君のあまりのチートっぷりに、元祖なろうと評する人もいます。なろうも真っ青の『またなにかやっちゃいました?』を見せてくれます。まさになろうっぽい楽しみ方ができる作品です。作品全体にびっくりするギミックが仕掛けられています」



 ——『2001年宇宙の旅』、アーサー・C・クラーク、1968年。


「人類が生まれる前の遥かなる太古。猿が真っ黒な石板『モノリス』を発見します。モノリスは猿に石を投げる方法を教えました。そして人類は月面でモノリスを発見しました。今度はモノリスはなにを人類に教えてくれるのでしょうか? 人類はその答えを得るために、モノリスが指し示す木星へと向かいます」

「うちの作品とは関係ありますか!?」

「あります。宇宙船に積まれた人工知能搭載のコンピュータと月面で発見されたモノリスはそれぞれ、HAL9000とTMA・1といいます」

「肉球島にいたハルとタマの元ネタですね!」

「人工知能による反乱、そしてモノリスの正体。ワクワクする秘密が満載の作品です」



「さあ、黒乃君。どうでしたか?」

「SF小説が読みたくなりました! ボクちゃんでも読めそう!」

「今日はいわゆる古典と呼ばれるものを中心に紹介しました。実際わかりづらいものも多いですが、やはりSFはワクワクします。なぜだと思いますか?」

「うーんと、うーんと。メル子先生! わかりません!」

「SFは科学を題材にした作品です。科学とは『夢』そのものなのです。人類が長い年月をかけて築き上げてきた、人類共通の価値観、共有された希望、そして進むべき未来なのです」

「すてき!」

「古典がとっつきにくいと思う方は、まずは今見ている小説サイトのSF作品から初めてみるのもいいかと思います。なんだったら、この作品が初めてのSFだという方もいらっしゃるかもしれません。どうですか? SFは面白いでしょう?」

「はい!」

「それでは、今日の授業を終わりたいと思います」

「メル子先生、ありがとうございました!」


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