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第24話 おっぱいについて話し合ってみた

「メル子はさー、カップいくつなの?」


 夕食後のティータイム。メル子はジャワティーを淹れていたが、一瞬手が震え机に数滴垂らしてしまった。それを布巾で丁寧に拭き取ると言った。


「もしもし、ロボット地方裁判所ですか?」

「違う、違う! そうじゃないよ」


 黒乃は慌てて手を振って弁解をした。


「なにが違うのですか」

「カップってそういう意味じゃなくてさ」

「ああ、紅茶のカップのことですか。それは失礼しました」

「いや、おっぱいの話なんだけどさ」

「やっぱりおっぱいではないですか!」


 メル子は頭に直接ジャワティーを注いでやりたいという思いに耐え、ティーカップを黒乃の前に差し出した。黒乃はそれを手に取り、一口含むとため息を漏らした。


「いいよね、そんだけ大きいとさ。私なんてコレだし」

「はあ」

「なんでそんなにバカでかく生まれてきちゃったのさ」

「ご主人様がメイドロボのカスタマイズページで、おっぱいスライダーをマックスにしたからですよ!」


 メル子は流石にキレて、手のひらで机をバシンと叩いた。その衝撃で高級アンティークのティーセット達が、カチャカチャと盛大に音を立てた。


「ああ、そうだったそうだった。忘れてたよ。もうずっと何年もメル子がうちにいる気がしてさ」


 黒乃はもう一口紅茶を含むと、ティーカップ越しにメル子を眺めた。


「つい最近うちにきたってこと、忘れてた」

「それは……どうも。なんでカッコつけているのですか」

「で、どうなの実際。おっぱいが大きいってのはどうなのよ?」


 なかなか引き下がらない黒乃にメル子はやれやれと諦め顔になった。


「どうって、不便なこともありますよ。足元が見えにくかったり、走るとメイド服の前がはだけそうになったり。エプロンがなかったら大惨事ですよ」

「ほう、ほう!」


 黒乃はかなり興奮した様子でメル子の話を聞いている。


「でもホントはもっと大きくしたかったんだよね。おっぱいスライダーがあれ以上右にいかなくてさ。ケチだよね」

「大きさに比例して材料費がかかるのですから、上限があるのは仕方がないですよ」


 実際一定以上の大きさのロボットには材料費に加えて、それを支えるための機構が必要なので、かなりの割り増しになる。


「追加料金なら出すよ! 出させてよ!」

「これ以上大きくしたら変ですよ!」

「変じゃないよ! 『おっぱいは大きければ大きい程良い』って名言知らないのかよ!?」

「大きさよりも形が大事でしょう」

「そんなもん百年前の童貞のたわごとじゃい!!!!」

「うるさっ」


 陰キャ特有の、語り出すとブレーキが効かなくなる状態に突入してしまったようだ。

 

「で? 実際何カップなの?」

「食い下がりますね」

「お願い! ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから」

「もう、しょうがないですね。……ア……カップです」


 メル子は照れながらモゴモゴと言った。もう早く話を終わらせたいようだ。


「なんて?」

(アイ)カップです……」

「アイ!? アアアアアアア、()カップ!?」

「大きな声で言わないでください!」


 黒乃は首を伸ばし、ジロジロと机の向かいに座っているメル子の胸を見ようとした。メル子はそれを腕で覆って防ごうとしている。


「なんでこんなに大きく設定したのですか?」

「いや、じゃあ聞くけど何カップならいいのよ」

「Dくらいでしょうか」

「D!? ちっさ!」

「ほどよいですよ」

「いやそれ絶壁だよ! 大峡谷だよ!」


 黒乃は信じられないというようにかぶりを振った。


「ご主人様はそれより小さいですよね?」

「いいいい、言ったな!? 言ってはならぬことを!」


 黒乃は手に持っているジャワティーを一気に飲み干した。


「そうだよ、私は平たい胸族だよ。それがなにか〜?」

「なにってことはないですけど」

「もう怒ったぞ。おっぱい揉ませろ!」

「自分のを揉んだらどうですか」


 そう言われた黒乃は自分の胸の辺りを手で鷲掴みにした。


「自分のは毎日揉んでるよ。でもなんの手応えもないんだよ! なーんも面白くない!」

「なんでそんなにおっぱいを揉みたいのですか?」

「二十代女子の性欲舐めるなよ! 毎日毎日そんなドデカいもん目の前でブルンブルンさせられて我慢できるか!」


 メル子は空になった黒乃のティーカップに紅茶を注いで、落ち着くように促した。


「ハァハァ。わかった。フェアにいこう」

「どういうことです?」

「メイドポイント使う。一揉みいくら?」

「一揉み300ポイントですね」

「今おっぱいポイントいくつ貯まってるんだっけ?」

「おっぱいポイントは10ポイントです」

「少なっ! いつになったら貯まるんだこのポイント」

「無理みたいですね」

「じゃあ、それをチンチロリンで増やすから」

「は?」

「地下帝国いって増やしてくるから!」

「頭脳がバグったのですか?」

「ハンチョー!」


 こうして陰キャ女とメイドロボの夜はふけていった。


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