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第68話 クズ、凌辱する


※前回に引き続き、激しめのイジメ描写があります。苦手なかたはご注意ください※

 

 それから一体、何分が経過しただろう。

 レズンは怒りに任せ、何度となくヒロを痛めつけ。

 ヒロが意識を失うたび、校章を使って意識を無理矢理覚醒させた。

 口にねじこまれた蔓のせいで、ろくに言葉さえ出せなくなったヒロは――

 ただただレズンの手により、傷つけられるがまま。



 ――それでもヒロは耐えた。耐え続けた。

 ルウを助け出す、ただその一点に想いを託して。

 それだけの力が、今のヒロには備わっていたから。



 ******



 何度目かに校章を使った時、ふとレズンは我に返った。



 ――おっと危ねぇ。

 これ以上やったら、さすがに死んじまうか。



 大の字に吊り上げられたヒロを、ゆっくりと見上げる。

 最早ヒロの身体は、全身血まみれ。

 可愛らしかった水兵服は激しい打撃によりズタズタにされ、白い部分が見えないほど血に染まっている。しかも電撃により至るところが焼け焦げ、わずかに燻っている箇所まであった。

 最も損傷が激しいのは両肩だった。袖は水色のカフスごと両方ともどこかへ吹き飛び、ほぼノースリーブと言っていい。僅かに残ったぼろぼろの白い残骸だけが、溶けた蝋のように腕に絡みついている。

 獣に引き裂かれたズボンはその形状を留めておらず、スリットスカートのように空中に靡いている。大きく裂けた隙間からは、細いがある程度筋肉のついた太ももが丸見えだった。そこに流れる幾筋もの紅が、やたらと目に眩しい。

 破られた服の断片が、ちぎれた花びらのように草むらに散らばっている。



 ――こんな状態でも、まだ意識があるのか。

 ヒロは頬を真っ赤にしながら、必死で身をよじっていた。

 それをせせら嗤うように見上げ――

 レズンは懐からおもむろにミラスコを取り出し、ヒロの今の姿を撮り始めた。



 カシャ、カシャ、カシャッ……



 意外と大きく森に響く、ミラスコの撮影音。

 それに反応したのか、ヒロはほんの少しだけ目を開いた。

 いやいやをするように、懸命に首を振ろうとするヒロ。しかし頭を枝に押さえつけられ、それさえもうまくいかない。


「動くなよ、ヒロ。

 お前のサイコーな恰好、撮ってやってんだからさ」

「んっ……ん、んうっ……んあぁっ……んー!!」


 全身で拒絶を示し、ヒロは必死で喘ぐ。大きく腫れあがった右頬に、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。

 口に突っ込まれた蔓は、ろくな悲鳴さえも許さない。

 レズンはさらにヒロに近寄ると、幾度も幾度もミラスコで撮影した。ほぼ無防備になっている、下からの角度を中心に。

 呻くヒロを挑発するように、さらに声をかける。



「いやいや、ヒロく~ん?

 いつも言ってんだろ。こんなんじゃ全然、お客さん満足しねぇぞ?」

「……ん、んんっ」

「ちょっと待ってろ。もっとイイ感じのカッコにしてやるから」



 そう言いながらレズンがフンと鼻を鳴らすと――

 ヒロを拘束していた枝が不意に緩み、その身体がふわりと上空に浮き上がった。


 この森の全ては今や、レズンの手足同然。勿論ヒロを縛り付けている枝も蔓も、全てがレズンと繋がっていると言っていい。さらに言うと枝を通じて、ヒロの苦痛も喘ぎも心音も

 ――殆どを、レズンは鼻先で感じ取っていた。

 そして今、レズンは敢えてその拘束を緩めた。鼓動を、痛みを、さらに近くで感じる為に。


 一旦は宙に浮いたヒロの身体は、またすぐにドウッと背中から地面に叩きつけられる。


「が……っ……!!」


 酷い呻きと共に地表に投げ落とされたヒロ。仰向けになったまま動けない。

 すぐに周囲の草むらから蔓が無数に伸びて、まるでヒロを地面に縫い付けるかのようにその手足に、首元に、腰に巻き付いた。

 それを見て――

 レズンの唇に、満足げな笑みが浮かんだ。



 ――やっとだ。

 やっと、俺のモノになる。

 お前の全部が、やっと、俺のモノになる。


 

 横たわったヒロに近づくレズン。自然に湧き上がってきた唾を思いきり呑み込む。

 今までヒロを痛めつけることはあっても、誰かの目の前である限りは絶対に出来なかった行動。

 どれほど妄想しても実行出来なかったこと。

 それが今、出来る。二人だけのこの世界なら。



 ――分かってる。お前は絶対に、俺を受け入れない。

 俺を理解しようったって、出来るわけがない。

 俺の本当の気持ちを知れば、お前は俺を忌避して拒絶して、あざ笑いさえするだろう。

 そんなことになるくらいなら……俺は人生を捨ててでも、お前を自分のモノにする。

 それだけの力を、俺は受け取ったんだ。あのクソババァから。

 だから……!!


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