〘プロローグ&一章〙
〘プロローグ〙
ある年のクリスマスの夜。
僕らはその日デートをした。
その時、彼氏から(今では元カレだが)ブランド物の鞄を貰った。
見栄えもよく、滑らかな真っ黒な皮で、光沢のある贅沢な鞄だった。
最初は高そうだなとしか思わなかったが、こいつのせいで僕の人生はめちゃくちゃになってしまった。
〘一章 なにかの始まり〙
これは彼と付き合うってなった瞬間のこと。
僕は昔から男の人が好きで、誰にも打ち明けられずに孤独を抱えていた。誰にも理解されないだろうと諦めていたため、カミングアウトするつもりは一切なかった。
12月の中旬頃の事だ。彼の家で飲みすぎてしまった僕は酔ってしまい、"何もかも"吐いてしまった。床に散らばる吐瀉物。胃液の臭いが鼻を刺す。
不快感と目眩が僕を遅い、意識が朦朧とする。
すると彼は吐き出したものを丁寧に処理していた。
そんな彼に、僕は表現出来ないほどの愛を感じた。
汚い自分を受け入れてくれた。そんな風に思った。
「唯人、ごめん」
「気にしないで、大丈夫だよ」
僕は初めて情けない姿を彼に見せてしまった。
その後のことは覚えてないが、どうやら彼に好意を打ち明けたみたいだ。
僕は昔から彼が好きだった。そして彼も僕と"同じ"だった。
その後唯人は僕を優しく抱き抱えて
「今までずっと我慢してたんだね。全部吐き出してすっきりしたらいいさ」と囁いた。僕は隠していた想いを全て唯人に打ち明けた。
僕は独りだった世界から開放されたような気分になった。
「理解してくれる人はずっとそばにいたんだな」
そう思った。
幼い頃から僕にとって唯一の親友だった彼は、常にそばにいてくれた理解者だった。そして僕の初めての相手になった。
20を超えた僕にとって遅すぎる恋愛。
彼は何もかもを受け入れてくれた。大学での悩みやバイト先での愚痴を聞いてくれては僕をなぐさめてくれた。
そしてある日、
「遥、クリスマスの日って空いてる?」彼からメッセージが送られてきた。
「空いてるよ」僕は咄嗟に返信をした。1分もしないうちに既読が着く。
「じゃあ出掛けようぜ。イルミネーション見に行こ」
こう返ってきた。
イルミネーションか。久しぶりに見に行くなぁ。
唯人とは幼い頃一緒に見に行った思い出がある。
かつては友達同士だったけれど今度は恋人同士。
初めての恋愛に心が浮かれている僕。
今まで得られなかった幸福感をやっと手に入れられた。
僕はさっそく彼に渡すクリスマスプレゼントを買いに行くことにした。
デートの日まであと9日くらい。
早すぎるかもしれないが、ゆっくりと彼への贈り物について考えたかった。
僕は浮き足立っていた。
そして、そのまま幸せを感じながら、クリスマスシーズンに染まっていく街の中へ出かけた。
読者の皆様、お読みいただきありがとうございます。初めまして、夕佑と申します。
初作品となります。
恋愛のあり方について、男性作者という目線からBLを書きたいと思いこの作品を執筆いたしました。
次回も読んでくださると大変嬉しいです。
では、またお会いしましょう。