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*小説・エッセイ・散文・その他*

春についての独白

作者: a i o

 この土地に植えられ早六年。桜はようやく蕾をつけました。

 日々つつがなく暮らしているようで、実のところ綱渡りだということをいまだ割りきれずにいます。大人というものにはいつ頃なれるのでしょうね。

 今日は随分暖かい一日で、春が近づいてきたことを陽射しの中で感じました。パステルカラーの空と、浮き立つ気持ち。春は私をどうにも落ち着かなくさせます。

 不意に、どうしようもなくなります。迷子になってしまったような、心許なさ。足下のむずむずとするような居心地の悪さ。グッと胸から込み上げるような不安。晴れ渡る空に雷鳴を描きたくなる衝動。

 細い枝についた桜の蕾は、今咲こうと云わんばかりに、先っぽをピンクに綻ばせようとしています。押し開くその力強さを持ち得ぬ私は、ただそれに見入るばかり。春になると有耶無耶になりたくなります。だけれど、それはいつだって叶わない。春は決して立ち止まりやしません。びっくりするような勢いで押し出されてしまいます。なんの準備も心構えもないまま来た場所で、途方に暮れています。

 日々は波打っています。空はいつか色を濃くするでしょう。私はまた否応なしに沖に出て、そしてすっかり忘れてしまうでしょう。




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