No.0003 俺は無実だ!
間隔空きすぎました。ごめんなさいm(__)m
……危うく天国の父母の元へと旅立つところだった。
『乳圧死』という浪漫溢れる死因で。
死に方としてはちょっと惜しかった気もするけどな。
まぁとにかくだ。
俺は無事に起き上がることに成功し、今は黒髪美女と向き合っている。
こうして改めて見てみると、おっとりした優しそうな女性という印象だな。
なんというか、母性に満ち溢れた微笑み……ってヤツ?
だが騙されないぞ!
俺はNOと言える日本男児なのだ!!
「改めて、膝枕ありがとうございました。夢がひとつ叶いました」
「うふふ、私ので良ければいつでもして差し上げます♪」
Yeah!! ……じゃねえだろ!!!
確約貰えたのは嬉しいけどよ、今聞きたいのはそういう事じゃない。
「……じゃなくて、聞きたい事が幾つかあります」
「あら、何かしら? スリーサイズはまだ内緒よ?」
「まだなんですね……じゃなくて、ここはどこですか?」
「うふふ、面白い子ね。確か神代蒼翔君よね?」
「そうですけど……あの、質問してるのはこっちなんですけど!」
ぬうぅ、なかなかの曲者だ。さらっと話を流して主導権が握れない。
何となくだが、悪意を感じないだけになお質が悪い。
「うふふ、ここは私の部屋よ。何もないけど、シンプルでいいでしょ?」
シンプルを通り越して突き破ってると思います。
だってよ、コンビニくらいの空間が全面真っ白だ。
しかも照明や装飾物もないから天井までの距離感が全然掴めない。
それなのにやたらと明るいのはどういう事だろうか。わけわからん。
しかもこれだけじゃないんだよ。
部屋の一角には、大きいバスタブとシャワーがある。白い。
別の一角には、さも当然のように水洗トイレが置いてある。白い。
そしてバスタブとトイレの中間に扉がある。ドアノブまで白い。
そして部屋の中心に置かれたキングサイズのベッド。言わずとも白い。
そのベッドの上に俺とおっとり美女がふたりきりなのだ。
「ここまで白いと、僕自身が汚物だと思わされますね」
「うふふふふ、冗談がお上手ね」
いや、結構本気で思えてくるんだけど。
視覚効果による洗脳かな? そう考えると凄いな。
「ところで黒髪美女さん、俺を拉致した目的は一体なんですか?」
まず理由を聞き出して店に戻らないとな。ぶっちゃけずともマジで拙い。
「私の名前は黒髪美女ではありません。ミナーヴァとお呼びください。そしたらお話して差し上げます」
ミナーヴァ……ってあれ、日本人じゃないのか?
ハーフとかクウォーターってやつかな。
「わかりました……それで目的は」
「ミナーヴァです」
「ミナお婆さん」
「誰がお婆さんよ失礼ね!! ミ・ナ・ー・ヴァ!!」
「……ミナーバ」
「『バ』じゃなくて『ヴァ』! バとヴァは似て非なるものよ」
「ぬぅ……ミナーヴァ」
「うふふ、よろしい♪」
いかん、どうやってもペースを持ってかれる。
だが仕方ない、今は主導権争いしてる場合じゃない。
「それより教えてくださいよ。目的は何なんですか?」
「私の専属のセラピストになっていただきたいのです」
…………今、何て言った?
専属セラピスト??
「その通りです」
心の中を読んだ……だと!?
「うふふ、どうでしょうね?」
いや、それ自白してるからな。
でも専属セラピスト? ミナーヴァの?
あのナイスヴァディーのケアを俺だけが許される?
そりゃ自分の技術が認められたって事だから嬉しいけどよ。
この状況で素直に喜べるほど身の程知らずじゃない。
それと拉致とは全く別問題だ。
「専属を依頼するなら直接交渉すれば済む事ですよね。なのにどうしてこんな騒ぎになるような事をしたんですか?」
拉致したところでミナーヴァにメリットなんて何もないだろ。
そもそも俺みたいな中途半端モンよりも、卓越した技術を持ってる人は幾らでもいる。
「私が貴方と同じ場所に住まう人間であればそうしました。ですが、そうではないから、貴方を私の部屋に直接ご招待したのよ」
「つまりここは遠い場所って事……ですか?」
「そうね。貴方の住む地球上の地域じゃないわ。ここ神域よ」
「地球上の地域じゃない? 神域? 意味がわかりませんよ」
「そうね……神が存在する天界と言った方が分かり易いかしら」
神? 天界?
……新手の新興宗教か? 俺ぁ土地の権利書とか持ってないぞ?
「違うわよっ!! そのままの意味で受け取りなさい!!」
「だから心を読まないで……って……本当に聞こえてるの?」
「言葉にしない発言を的確に返してる時点で理解できないのかしら?」
考えてみりゃ、いや考えなくてもそうだよな……
って事はだ。ここまでの話の流れに沿った結論でいうと、ミナーヴァは神様?
「その通りよ。貴方の世界ではミネルヴァとも呼ばれているわね」
「マジすか……って、そんな事はどうでもいいです!!」
「そんな事って……ちょっと酷くないかしら?」
「酷いのはどっちですか! お店開けっぱなしで誰も居なくなったら拙いんです!! 戸締りとか売上金の管理とか!! 話なら後から幾らでも聞きますから、まず先にお店に戻してください!!」
これは最優先すべき社会的責任問題だ。
深夜にお店を開けたままにして、売上金が盗まれでもしたら、真っ先に俺が疑われちまうんだからな。
そうなれば、俺は冗談抜きで社会的に抹殺されてしまう。
「その事だったら安心していいわよ。ちゃんと対処してあるから」
「ちゃんと対処? 店の鍵とかセキュリティとかレジ締め作業とか知らないですよね?」
うん、不安というか物凄く拙い予感がする。
平気な顔して俺を眠らせて拉致るような痛い女性だ。
絶対にちゃんと対処されていない。予感というよりも確信と言っていい。
……何だか胃が痛くなってきたな。
「んっ……よいしょっと。ここに貴方の荷物があります」
「おっほぅ!?」
思わず変な声で驚いてしまった。
だってミナーヴァが自らの双丘の間に手を突っ込んで、ゆらゆらと揺らしたと思ったら、そこから俺のリュックが出てきたんだぞ? サイズ的にそんなところに入るサイズじゃないんだが……まるでどこぞのアニメで見た『四次元●ケット』みたいだ。
いや、でも待ってくれ。
俺の私物がここにあった所で、何の解決もしてないじゃないか?
これの何処が対処された事になるんだ?
「まずは中身を確認してくださいな」
おそらく、余計な事を言えばまた話がこじれるだろう。
だから俺は素直にリュックの中身を確認する事にした。
……って生温かいんですけど!?
「もう、えっちですね」
「もうこの際えっちでも何でもいいですよ……」
何だか疲れるが、まずは確認だ。
えっと……財布、スマホ、タブレット、使い捨てマスク、タオル。
それとサイドポケットに大量のお札と小銭がジャラジャラと……
………お札と小銭!!!???
こんなの入れた覚えは…………………
あぁ、これ絶対やっちゃいけない対処だな。
「…………一応、聞きますけど、このお金は?」
聞く必要はない気がするけどよ。
子供でもわかる質問だ。でも聞かずにはいられない。
「お店のレジから全部お持ちしましたわ。盗まれる前に盗んだのです」
今、何て言った?
盗まれる前に盗んだって言ったよな!?
「はい、誰ともわからない方に盗まれるよりも遥かに安心安全ですわ♪」
「どこが安心安全なんですか……」
「だって、貴方が持ってれば誰も盗めないのよ? だから先に盗んだの」
「言い切っちゃったよこの人はああぁぁぁぁもう!」
社会的に終わったな俺。
「……ちなみに、俺が寝てからどれくらい時間経ちました?」
せめてまだ早朝とかならまだチャンスが……
「そうね、地球時間なら……丸一日かしら?」
…………あぁ、うん。
ダメだこりゃ。
物語とは関係ありませんが……事故でムチウチになりました。
一時停止無視した車両に、私の車両左全面削られました。トホホ。
怪我するといろいろと大変です。
皆様もお出掛けの際はくれぐれも気をつけてくださいね。
以上、沖田久遠でした_(:3」∠)_