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No.0011  最初の一難、再び


 店で眠らされて以来の施術だった。

 こんなにも仕事から離れたのは久しぶりだったから、手の感覚的に不安はあったものの、今の自分としては納得のいく施術が出来た……と思う。


 「お客様、終わりましたので起きてください」


 自己満足に浸りながら、俺は爆睡しているアテナを起こす。

 お客様って言い回しは、仕事上のルーティーンみたいなもんだ。


 「ぅん…………あれ、ここは……どこにゃ?」


 『にゃ』!? 語尾に『にゃ』だと!?

 寝ぼけ(まなこ)にナチュラルな『にゃ』とかマジ可愛いんですけど!?

 ……まさか狙って言ったわけじゃないよな、この人。


 「どこって、ミナーヴァの家のベッドの上だ」


 「……そうだ、君に足を『まっさーじ』して貰って……ん?」


 違和感を感じたのか、アテナが両足の指をわにわにと動かし始めた。


 まぁそりゃそうだろうな。

 施術する前にお湯で温めたけど、それでも指先は冷たいままだった。

 今はしっかり血行が良くなって、熱いくらいに感じてるはずだ。


 「蒼翔……」


 「は、はい?」


 何故俯きながらわなわなと身体を震わせてるんだ?

 彼女のいうマッサージがイメージと違ったのだろうか?

 それとも揉まれ慣れてないせいで足裏が痛いとか……?


 「なんだこれは!? 疲れを感じないだと!? しかもあんなにも辛かった指先がどうしてこうもポカポカしてるんだ!? しかも軽い!! どういう事なんだ!?」


 怒るように喜んでる、と揶揄すべきだろうか……

 まさに大絶賛というべき、セラピスト冥利に尽きる賞賛も嵐だ。


 「どういう事っていうか、身体の不調を改善に導いただけなんで」


 「改善どころではない! まるで羽が生えたかのように軽いんだぞ!」


 「それだけ疲労が蓄積してたって事。良くなったなら俺も嬉しいよ」


 整体院でもリラクゼーションサロンでも、こんなにも喜ばれる事はない。

 まぁ他にも人がいるからな、全身でそれを表現するなんて恥ずかしいし。


 「なるほど……ミナが専属にしたがる気持ちも理解できる」


 「アハハ、専属はマジ勘弁して。ご希望とあらばまた揉むから。今回も足裏と甲だけで、他の部位には着手してないし」


 「それだけでこの軽さとは、君な本当に凄いな!!」


 アテナはまさに上機嫌だ。これならミナーヴァに通じなかった話が通じるかも知れない。


 「あの、さっき話したミナーヴァとの事なんだけど、さ」


 「ん? 別世界で生きる為に技能が欲しいって話か?」


 「そうそれ! こんな事を言うのはお門違いかもだけど、アテナにはそれが出来るのかなぁ~~~なんて思ったんだけど……」


 恩着せがましい方法だけど、背に腹は代えられないのだ。

 これで駄目ならまた別の神を紹介してもらえれば……


 「あぁ、いいぞ」


 「そうだよなぁ、そううまくいくなんて都合が良すぎるよなぁ」


 「おぃ、私はいいぞって言ってるんだが」


 「じゃあ違う神様でも紹介して貰えると助かるんだけどなぁ」


 「神の話を聞けこのたわけが!!!」


 「げぶらっ!?」


 アテナの右足からキックが繰り出された。

 キックというか、施術を終えたベッドの上で、その素足を突き出す程度だ。

 しかしそれこそ人外の力ってやつなのか、生み出された圧力だけで俺は吹き飛ばされた。

 

 「さっきから『いいぞ』と言ってるだろう!?」


 「ごほっ、ごほっ……え゛、マジずが?」


 「足を癒してくれた礼だ。技能を授けてやろう。ただし、条件付きだ」


 「ぞの゛……ゴホン、条件って、専属になれとかは勘弁して」


 「ミナと一緒にするな」


 「マジすか、アテナマジエンジェル!!! それで条件とは!?」


 「天使(エンジェル)は私より下級だから誉め言葉にならないんだがな……まぁいい」


 しまった。恥を忍んでエンジェルなんて言葉使ったのに。

 神より下位だから駄目ってか。

 俺等に言い換えれば『人間マジ犬!』みたいな?

 うん、これは確かに褒められてないと思うわな。


 「条件はふたつ。まずは、この後ちゃんとミナと話をつける事だ。これは私がちゃんと仲介してやるから、あまり不安になる必要はない。そしてふたつ目は、後で私の全身を揉みしだいて欲しい。以上だ」


 「わかりました、その条件呑みます…………って揉みしだくの!?」


 「ん? 言い方が違ったか? 私の全てを君に委ねよう」


 「ある意味もっと卑猥になってる!?」


 意味は通じてますよ、うん。

 受け取り方によってはヤヴァイ方向にいくけど。


 「卑猥? よくわからんが、交渉成立でいいな」


 「よろしくお願いします!!」


 「よしそれじゃ、そろそろミナにも来てもらおう、か!!!」


 アテナは手元に置いてあった液体の入った小瓶を手に取り、それを出入口の扉に投げつけた。

 俺を一度吹き飛ばし、気絶してる間に直したのであろうその扉は、その小瓶によって今度は粉々に粉砕された。小瓶はそのまま外へと飛んで行ったみたいだ。


 プロ野球の投手レベルの豪速球……いや、豪速小瓶を、ベッドに座ったまま腕力だけで投げたアテナって、やる事が力任せ過ぎる。というか、だ。


 「どうして扉を破壊するの!?」


 「落ち着け蒼翔。見てればわかる」


 落ち着いてますよ。見てわかってますよ。

 だって破壊された扉の外側に、見慣れた女の姿があるんだもん。



 「ア、アテナ……私を殺す気!!!?」



 諸悪の根源ミナーヴァ再びってやつだ。





ダラダラとすみません、もう数話で題材を回収しはじめる予定です。


腰揉んで欲しいと切実に思う沖田久遠でした_(:3」∠)_

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