第5話「本と像と山頂と」
ありがとうございます。
(たった1回戦っただけで、こんなに疲れるもんなんだな)
俺は休憩しながらずっと考えていた。
このままだと遅かれ早かれ、
体をこわすことになるだろう。
(戦い以外に稼げる手段を一つ身につけたほうがいい)
目の前にウィンドウが現れた。
BADENDルートの秋山夏男様よりご連絡があります。
読まれますか?
YES/NO
俺は唾を飲み、YESを選んだ。
お前がこれを読んでるってことは、
俺は世界を救えなかった。
多分、ここが分岐点だったと思うから
過去のお前にだけは伝えておく。
あの少女を助けるな
あいつは魔王の隠し子だ。
あいつが暴走したせいで、
人類も魔族に変化した。
お前がここに呼ばれた理由、
これからどうなるかを
教えれば変わるのか
ずっと考えていた。
だからこれをお前に託す。
ウィンドウと俺の間に
一冊の小冊子が現れた。
その本を手にとると
こう書かれていた。
ほどほどに生きる準備号
始まりと終わりの街から逃げる
制作 秋山夏男
と書かれていた。
薄い本を捲り、
俺はこれからどうなるかを知った。
あの街に近寄るのはやめようと
納得させる内容だった。
自死と表示されていた本当の理由。
防いだ自分がどうなっていくのか。
薄い本のわりに書かれている内容に
妙な信ぴょう性があった。
ここで助けないほうが彼女もお前も幸せになれると
大きめに書かれていたのはかなりショックだったが……
不思議なのは
ここから先は進みながら読めと
書かれたページから先を開くことができなかったことだ。
俺は書いてある通りに山道を進む。
本に書かれているのが事実だとわかったのは
しばらく行くと紫の葉が茂った樹木がある。
木の周辺に隠された木の像を探せと
書かれた通りに見つけた瞬間だった。
その木の像は隠れるように転がっており、
どこか禍々しくみえる。
(嘘じゃないらしい)
すると薄い本は光り、
次のページをめくることができた。
その像をどちらかの手で握れ。
モンスターの姿がみえるから
隠れながら。
山頂を目指せ。
俺は言う通りに左手で像を持ち、
山道へ戻る。
するとさっきまで何も感じなかった周辺に
人や獣の動く姿がぼんやりとみえてきた。
(なるほど)
俺は言う通りに山道を進んだ。
途中、後ろを振り向くと像のあった木に
少女らしき姿がみえたので、
気づかれないように必死で隠れながら
頂上を目指した。
「着いた……」
肩で息をしながら、
俺は山頂からみえる景色を見回す。
少し遠くにあの街がみえた。
反対側に浦安にあった遊園地みたいな城がみえる。
(結構遠いんだな……)
俺は本を取り出し、
ページをめくる。
よくやった。
そこでしばらく休憩をとれ。
女神がその像を回収にくる。
と書かれていた。
俺は地面に転がり、
しばしの休息をとることにした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
書き進めていた部分があったのですが、
話が飛び過ぎているとのご指摘もあり、
ゆっくり進めることにしました。