第3話「宿屋と少女と花束と」
ありがとうございます。
(宿屋、どこだろ?)
俺は宿屋の看板を探しながら、
街を散策していた。
初めてみる景色と自由。
正直、泊まれるかどうかも分かっていなかったけど
3時間しか寝れなかったころよりはましだ。
「そこの冒険者さん
お花どうですか?」
左から聞こえた声に振り向くと
ボロボロの服をきた女の子が花束を小脇に抱えている。
「お、俺のこと?」
(落ち着け、俺)
女の子はにっこりと笑いかけてくれて
可愛い花束を差し出してきた。
ウインドウが出てきた。
サナリ・ユキ
自死まであと13日
花束 3G
YES/NO
俺は息をのんだ。
出てきた言葉とその意味。
あの頃、毎日考えてた言葉を
彼女も考えている。
(残り 7Gしかないけど…)
(花束1つ)
瞬間、ユキちゃんの顔が笑顔になった。
(はじめて、女の子を笑顔にできた…)
俺は3Gを取り出し、手渡す。
大事そうに受け取ってくれたユキちゃんをみて
(もう1個買えばよかったかな…)と
できもしないことを思った。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
ウィンドウの文字が変わる。
サナリ・ユキの好感度が10上がった。
自死まであと16日
それをみた瞬間、宿屋のことは頭から消え
稼いだ金をどうするか決めた。
多分、草原から摘んだと思う小さな花束を受け取る。
ユキちゃんは俺から見えなくなるまで
「ありがとう、お兄ちゃん」とブンブン手を振ってくれた。
その時、俺のなかで何かが少しだけ変わったと思う。
宿屋の看板をみても入ることはせずに先に進んだ。
大体の街の様子を頭に入れた俺は街から出て、
モンスターを捜し歩く。
正直、焦っている。
もし、モンスターを倒しても
金が手に入らなかったらどうなる?
そのときは鎧を売るとか
色々考えても何も決まらない。
ふと、前をみてそれはそこにいた。
ウィンドウが現れる。
そこにはこう書かれていた。
ゴブリン
HP45、MP0
戦いますかYES/NO
俺は
(YES)
剣を握りしめた。
ありがとうございます。