再会
エルが旅立って1ヶ月が経った。
(私はもう一生魚鱗病でもよいわ。会いたいわ、エル…)
嬉しいことがあったとき、悲しいことがあったとき、腹が立つことがあったとき…、隣にはいつもエルがいた。
エルと分かち合えた。
(お嬢様、という声が聞きたいわ)
ユージン様はあれからも3日あけず通って下さる。お話は面白いし、ダンスもお上手。
チェスやリバーシも付き合ってくださる。
だが、何か足りないのだ。
私の一部がないような感覚に陥る。
そんなある日、一人の男性がやって来た。
「エル、という若者から預かりました」
男性は手紙と布袋に包まれた硬いものを渡してきた。
手紙にはエルがなんとか竜の鱗を手にいれたこと、そして理由は言えないがもううちには戻れないことが書いてあった。
「エル…」
私は手紙を抱きしめ、男性に礼を言った。
涙が止まらない。
「そんなに悲しまないでください、お嬢様」
男性がつらそうに言う。
(お嬢様…!)
その男性は大変醜くかった。
つやのない灰色の髪をし、若そうなのに顔はしわだらけで浅黒い肌をしていた。
だが、彼がエルだと私は直感した。
エルの黒曜石のような瞳が同じだった。
「エル!?エルなのね?」
私が詰め寄ると男性は焦った様子で走り出した。
追いかける。
そこにユージン様が来られた。
「つかまえて…!エルなんです」
私は今までで一番大きな声で叫んだ。
頬がひきつれ、血が流れるのを感じた。
ユージン様は素早くエルらしき男性をつかまえた。
「離してください…!」
男性は抵抗したが、しばらくすると諦めたようにおとなしくなった。
「エル…!会いたかった!」
私は泣きながら男性の腕に飛び込んだ。
「お嬢様…!私もです…!」
男性は、エルは私を抱き締めた。
「血が…」
ハンカチで頬を拭いてくれる。
「どうしてそんな姿に?」
私が聞くとエルはこれまでの旅路を語りだした。