治療方法
朝、朝食をとっているとエルが来た。
髪が短くなり、服装もお仕着せではなく執事風だ。
「どうしたの?」
私が驚いて聞くと
「今日から男性として生きていくことにしました。お嬢様のために」
と言う。
「私のためって…」
私は絶句する。
エルは頬笑むと私の前にひざまづいた。
「愛しています、エスメラルダ様」
私はドキッとした。
(男装してると知らない男の人みたいだわ)
さらさらのプラチナブロンドに褐色の肌。
瞳は黒曜石のように輝いている。
美しいエル。
対して私は鱗のようにかさついた肌を持つ醜い女の子。
(どうしてエルは私が好きなんだろう)
「それはお嬢様が私の命の恩人だからです。それにその慈悲深い美しい心。好きにならずにはいられません」
エルが私の胸のうちを見透かしたように答えた。
「私は美しい心をしていないわ。普通よ」
私は持ち上げられすぎて困ってしまう。
その時、主治医の先生が来たと執事が告げに来た。
「エル、またね」
私はエルと別れると応接間に向かった。
「エスメラルダ様、ごきげんうるわしう」
先生が一礼する。
「今日はよい知らせを持ってきました。魚鱗病の治療法が見つかったのです!」
「えっ!」
私は思わず声をあげる。
「先生、どんな?」
「竜です、エスメラルダ様。竜の鱗を煎じて飲めば治るとわかったのです」
私は呆然とした。
竜。
伝説の生き物、魔族の暮らす北の地域にいると聞くけれど、見たものはほとんどいない。
「竜とはまた…、でも治った人がいるのですね」
「はい。この目で見てきました」
先生がどや顔をする。
「ただ、竜の鱗は貴重品。なかなか手に入るものではありません」
先生はため息をつく。
「王都にならあるかもしれませんが…」
その時、ドアが開いた。
そこにはエルがいた。
「話は聞きました。私が探してきます!」
エルは私をやさしく見つめる。
「お嬢様の憂いを必ずお取りします。待っていてくださいね」
エルはそう言うと旅の支度をし、旅立って行った。