48話 不思議な確信
「......」
その勇貴の反応を不思議に思ったのかルーカスが勇貴に聞いた。
「うん?どうしたんだユウキ殿?」
「えっ!あっ..あの~ルーカスさん?」
「うん?」
「さっきルーカスさん...何て言いましたか?」
「さっき?...どうしたんだユウキ殿..と言ったんだが?」
「あっ!いえ、もっと前です」
「前?....」
ルーカスがしばらく考え込むと
「..私の屋敷を報酬にやると言う話しの事か?」
「それです!それ!」
「おお!そうかそうか!その話しの事か...でその話しがどうかしたのかね?」
「いやいやいやいや、どうかしたのかね?..じゃ!ないですよ!」
少し興奮した様子の勇貴に驚きながらもルーカスは勇貴を宥める。
「まっまあまあ、ユウキ殿落ち着いて落ち着いて、そんなに興奮してどうしたのかね?」
「いや、おかしいでしょ!」
「なにがだ?」
「報酬に屋敷を上げるのがです!」
「..何がおかしいんだ?」
「いやいやいや、おかしいですよ!報酬に屋敷なんてさっきの金貨何百枚とかよりはるかに高いですし、そもそも王都にあるルーカスさんの屋敷を報酬にしたらそこに住んでるルーカスさんや家族の人とかどうするんですか?それにルーカスさんの奥さんの治療が出来たとしても屋敷なんて貰えませんよ、自分はただ物件を紹介してくれる所を紹介してくれるだけで良いですから」
「いや、妻を救ってくれた暁にはユウキ殿に報酬として屋敷を受け取って欲しい」
「いや、ですから.」
ルーカスの言葉を遮ように口を開いた勇貴をルーカスが制す。
「まあまあ、最後まで話をきいてくれ、これは私にとっても良いことなんだ」
「..ルーカスさんにも..ですか?」
「そうだ..ああ、それとユウキ殿はなにか勘違いしているようだから先に言っておくが報酬の屋敷は今、私達が王都では使ってない屋敷の事だ」
「使ってない?」
「そうだ今、私達が王都で使っている屋敷は私が妻と結婚する時に国王様から頂いたものなんだ」
ルーカスの言葉に勇貴は恐る恐る尋ねる
「...結婚祝いに屋敷って..よくあるんですか?」
「いや、滅多にないと思うぞ」
「ですよねー」
「まっそんな訳で国王様から頂いた屋敷に住まないというのも失礼なので今はその屋敷に住んでいる..まぁ実際そっちの方がいろいろと都合がいいんだ」
「はぁ..じゃ~報酬の屋敷って言うのは..」
「ああ、私が以前住んでいた屋敷の方だ」
「なるほど..ですがやっぱり..屋敷を貰うと言うのは..」
「いや、その屋敷は君に受け取って欲しいんだ、国王様に頂いた屋敷に住む事になってからそっちの屋敷は売ろうかとも考えたんだが..私が独り立ちしてから建てた屋敷だからどこの誰とも知らない者に買われると思うとなかなか.ね」
「だったら、なおさら」
勇貴がそう言うとルーカスはゆっくり首を横に振った後言った。
「いや、ユウキ殿になら譲っても良いと思ったんだ..私と娘の命を助け..今度は妻まで救おうとしてくれているそんなユウキ殿になら...どうか受け取って欲しい」
そうルーカスが言うとゆっくり頭を下げた。それを見て勇貴は慌てて言った。
「ちょっ!ちょっと!ルーカスさん!頭を上げてください!自分の報酬の話しでルーカスさんが頭を下げるのはおかしいですよ!」
「....」
勇貴の言葉を聞いても顔を上げようとしないルーカスを見た勇者は
「わっ分かりましたから!顔を上げてください!」
「おお!そうかそうか!それは良かった!ハハハハハハハ!」
「もぉ~ずるいですよルーカスさん、でも屋敷はあくまでもルーカスさんの奥さんの治療ができたら!ですからね!」
「ハハハ、分かっているよ....(まっユウキ殿なら難なく治してしいそうだが」)
なぜかルーカスは勇貴ならやってくれるだろうという確信を持っていたが自分でもなぜ確信しているのか分からなかったので声には出さず自分の中で納得したのだった。