42話 依頼
勇貴達は昨日エテル・ノーネクに言われた通りバートナーの家に向かっていた。
「...ご主人様..今朝は..本当に申し訳ありませんでした。」
「もぉ良いって言ってるだろ...それにあれはほとんど自分が悪いしな」
今朝、勇貴はウルとフウの声で目覚めた。それも涙を流し必死に勇貴の名を呼ぶウルとフウの声で、起きたばかりの勇貴にはなぜウルとフウが泣いているのか分からなかった。しかし、自分の姿を見て気付いた。勇貴は夜中にネルとの会話で鼻血を出しそのまま眠りについたせいで服や布団に血がついていた。それを見たウルとフウは勇貴に何かあったと不安になり泣いていた。
「...ご主人様、お体は本当に大丈夫なんですか?」
「だいじょうぶ?おにぃちゃん」
「ああ、大丈夫だ!(あの血は鼻血なんだ!..なんて言えないよな)」
「...それなら..良いのですが...」
ウルはそう言うと少し心配そうな顔をする。
「本当に大丈夫だって!だからそんな顔するなって...あっ!ほら!バートナーさんの家もうすぐだぞ」
「...あれが」
「わ~すごいおっき~ね!」
「確か、ご主人様はバートナー様と面識があるのですよね?」
「うん?ああ、この町にくる時に盗賊に襲われてるのを助けて..それで..ちょっとな」
「そうでしたか、流石ご主人様です。」
「さすが!おにぃちゃん!」
「そっそうか、普通だと思うぞ?」
「いえ、その人助けを普通だと考えるご主人様の優しさこそ流石としか言わざるを得ません、その優しさで..私達は救われたのですから」
ウルはそう言うとフウの頭を撫でる。撫でられたフウは嬉しそうに笑う。
「えへへへへ」
「..そうか」
「はい、それに...その..優しいご主人様は私も..その...す..」
ウルが何か言いかけた時バートナー家の門番が勇貴達に声をかける。
「君達!ここから先は領主のバートナー様のお屋敷だ!ここに何かようかね?」
「ああ、え~と昨日ギルドから連絡来てると思うんですけどでも.冒険者のユウキです」
「ああ、確かに昨日連絡はあったが...Bランクの冒険者だと聞いていたんだが?」
「はい、自分Bランクですよ。」
「...すまないが、ギルドカードを見せてもらえるかい?」
「あっ!はい、え~と..あっ!はい、これでいいですか?」
「...確かにBランクだな..疑って悪かったな」
「いえ、別に気にしてませんから」
「じゃあ、玄関まで案内するからついてきてくれ」
勇貴達が門番の人につれられ屋敷に入ると今度はメイドさんが部屋に案内してくれた。
「バートナー様の準備が出来るまでこちらでおくつろぎ下さい、私は部屋の外にいますので何かありましたら何なりとお申し付け下さい、では失礼いたします。」
「はい、ありがとうございます。」
そう勇貴が言うと勇貴はソファに座りウルとフウは勇貴の後ろに控えた。
「...なぁ、いつも言ってるけど別に座ってもいいんだぞ?ずっと立ってると疲れるだろ?」
「いえ、今日は奴隷だから..ではなく、ご主人様のメイドとしてご主人様の後ろにいたいのです。どうかお許し下さい」
「フウも、おねがいします。」
ウルとフウのその真剣な目を見て勇貴は一言だけ言った。
「...分かった。」
そして待つこと数分後、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
コンコン
「はい」
「失礼します。ユウキ様、ルーカス様とタリア様をお連れしました。」
メイドさんがそう言うと後ろからバートナー・ルーカスと娘のタリアが部屋に入ってきた。それを見た勇貴はソファから立ち上がる。
「おお、ユウキ殿この度はわざわざ来てもらって感謝する。こちらから呼んでおいて待たせしまって申し訳ないね」
「ゆっユウキさん、おっお久しぶりです。」
「いえ、別に気にしてませんから、それにタリアも久しぶり」
「はい!」
「うん、まぁ座ってくれ」
「はい」
「..早速だがユウキ殿、君にある依頼を受けてもらいたいんだ。」
バートナー・ルーカスはそう言うと真剣な顔になった。そのルーカスの顔を見た勇貴はごくりと唾を飲み込んだ。