40話 呼ぶ声
「ご主人様、この後はどうされるのですか?」
「う~ん、どうしようか...アイテムのお金は明日だって言ってたしな」
勇貴が冒険者ギルドで出したドロップアイテムは10~30階層の魔物から出る一般的なドロップアイテムだったが、空だった倉庫の半分以上を埋め尽く量だったためアイテムのお金は明日貰うことになった。
「...あの量ですからね」
「そうだよな...サリィさん達にちょっと悪いことしちゃったかな?」
「そうですね、次からは気を付けた方よろしいかと思います。あの最後のサリィさんの笑顔には背筋が凍りつきました。」
「うん、こわかった」
「あれは..ヤバかったな..目が全然笑ってなかったもんな..次からは気を付けよう」
「ええ」
「うん」
「よし、じゃ~気を取り直して今日は何か美味しい物でも食べに行くか!な!ウルとフウは何食べたい?」
「私はご主人様の供してくださる物でしたら何でも」
「おにぃちゃん、なんでもいいの?」
「こっこら!フウ!」
フウの言葉にウルが怒ると勇貴がそれを優しく止める
「まあまあ、いつも言ってるだろ?遠慮しないで良いって...っで、フウは何が食べたいんだ?」
「フウね!おにぃちゃんのプリン食べたい!」
「えっ!」
「なっ!」
フウの言葉に勇貴とウルは驚いた。
「そっそんなにプリン気に入ったのか?」
「うん!プリンはさいきょうだよ!」
フウはキラキラした目でそう言った。
「そっそうか...まぁ~それは別にいいけど」
「ほんとう!」
「えっ!」
勇貴の言葉にフウは喜びウルは悲しそうな表情で耳を垂れさせた。
「うん?どうしたウル?」
「あっ!いっいえ!わっ私はプリン...なんてプリンなんて...」
「プリン?プリンがどうした?」
「ごっご主人様!」
「おっ!おお、どうした?」
「わっわわ私も!私も!ぷっぷぷプリンが食べたいです!」
ウルはまるで誰かに告白でもしたのではないかというくらいに顔を真っ赤にし潤んだ瞳で勇貴にそう言った。
「おお、そうか分かった」
そう勇貴が言うとウルの表情がぱぁっと明るくなった。
「あっありがとうございます!ご主人様!」
「おお、(ウルが自分からなんて珍しいな..そう言えば何かウルのステータスに変な称号がついてたよな..もしかしてあれのせいか?プリン..すげぇな)それでプリンは宿に帰ったら作るけど..それ以外で肉とか魚とか主食で何か食べたい物はあるか?」
「私は先ほど言ったようにご主人様が供してくださる物でしたら何でも」
「う~ん、プリンいがい...おにぃちゃんといっしょならなんでもいい!」
「そっそうか」
それから勇貴達は美味しそうな匂いがしたお店で食事をした後、宿屋に戻ると勇貴は早速プリンを作り始めた。完成したプリンを食べたウルとフウは終始笑顔で2人とも尻尾がとれるのではないかというほど尻尾をブンブン振っていた。
その日の真夜中、勇貴達がすっかり寝入っている頃、勇貴は自分の名前を呼ぶ声で起きた。
「(ユウキ...ユウキ)」
「うっ...うん?なんだ?ウルか?...あれ?」
勇貴が辺りを見回すとそこには眠っているウルとフウがいるだけだった。勇貴が不思議に思っているとまた勇貴の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「(ユウキ...起きた)」
「えっ!」
「(ユウキ...私)」
「えっ!誰?てかどこ?」
「(私...ネル)」
「...えっ!」