22話 黒混合症
勇貴がフウの黒い腕に目を見張っていると、マヤがベッドに近づきマヤの目線に合わせ膝を曲げると膝立ちになり、優しくフウの名前を呼ぶ。
「...フウ」
その声に答えるようにフウの瞼がゆっくり開く、目を開けたフウは顔をマヤに向けると笑顔を作り、今にも消え入りそうな声で話し始めた。
「マ.ヤさん..こん.な..かっこ.うで..ご.めん.なさい、からだ..が..うま.く.うご.かせ..なく.て」
「..フウ、気にしないで、ほらオーナーとウルも居るわよ。」
そうマヤが言うと、マヤは立ち上がりフウが見やすいように壁際に寄る。フウはそのまま顔を動かし、ウル、ハーストへと顔を向ける。ウル、ハーストはそれに答えるように笑顔をフウに向ける。そして、フウが勇貴に気付くとマヤが話し始める。
「フウ、この御方は、ツキガミ・ユウキ様です。」
「ツ.キ.ガミ..さ.ま?」
「ええ、ウルとフウ..あなた達のご主人様になる御方です。」
「...で.も..わた.し..か.らだ..が..」
「ええ、ツキガミ様も承知の上です。」
「...ど.う..して」
「それは、あなたの体をツキガミ様が治せるかも知れないからよ」
そうマヤが言うと、フウは目を見開くと口を開く。
「なお.るん.です..か」
「それは...絶対とは言えないわ」
そうマヤが言うと、フウは残念そうな顔をすると静かに呟いた。
「..そ.う..です.か」
「..フウ、まだ治せないと決まったわけじゃないわ、それに、もしツキガミ様が治せなくてもツキガミ様はあなたを買い、全力で治す方法を探してくれるそうよ。」
「..ど.う.して.そこ.ま..で」
「さぁ、どうしてでしょか...でも、ツキガミ様はオーナーと同じ..いえ、それ以上のお人好しだと私は思っています...フウも知っているでしょう?オーナーのお人好しぶりは」
「..は.い」
「ふふっ、そうよね..だからと言うわけではないけど、ツキガミ様を..私達を信じて」
「は.い」
そうフウが言うとマヤは笑顔を見せ、勇貴に顔を向け真剣な表情で言った。
「..それでは、ツキガミ様..よろしくお願いいたします。」
マヤの言葉にウル、ハーストも続いた。
「よろしくお願いします」
「よぉろじぐおぉねがいじまず」
ハーストは、すでに涙声になっていた。その言葉を受けた勇貴も真剣な表情で答える。
「はい」
そう勇貴が言うとマヤと位置を変えるようにフウに近づき、優しく言葉を掛ける。
「月神 勇貴だ、よろしく」
「ふ.う.です.よ..ろし.く.お.ね..がい.しま.す」
「ああ、じゃあ、まずフウちゃんのそれが何なのか鑑定して見るから」
「は.い」
「うん(鑑定(神))」
ステータス
レベル 35 ランクG !黒混合症
名前 フウ
性別 女
年齢 8歳
種族 混合人(狼人族、エルフ、サキュバス)
ユニークスキル
・幻夢空間
スキル
・精霊魔法Lv1・弓術Lv1・短剣術Lv1・回避Lv1・索敵Lv1・体術Lv1・身体強化Lv1・解体Lv1・採取Lv2・風魔法Lv1・物理耐性Lv1・魔法耐性Lv2・状態異常耐性Lv4・家事Lv2・料理Lv2・魅了Lv1
称号
なし
新ユニークスキル
・幻夢空間(実態のある幻を創る事ができる空間を創る事ができる)
新スキル
・短剣術(短剣を扱う技術に補正がかかる)
・魅了(相手を魅了状態にする。魅了状態にある相手から生気を奪うことができる。生気を奪える量はレベルにより変化する。相手の状態異常耐性が自分の魅了のレベル以上又は同等だと魅了状態になりにくい。)
勇貴がフウのステータスを見ると気になる文字を見つけた。『黒混合症』と書かれその文字を勇貴は、さらに詳しく見る。
・黒混合症
半人、混合人に診られる病気、一つの体に複数の種族の魔力が宿る事で本来であれば成長と共に体に適応するはずの魔力が適応しきれずに自分自身を攻撃する事で発症する病気、最初は高熱から始まり次に嘔吐、腹痛それが治まると体が日に日に黒く変色し、その黒く変色した範囲に応じて衰弱していく、黒い皮膚が全身に回ると死に至る。
・治療方法
1 体の中のバラバラの複数の魔力を一つにまとめるイメージと体を正常にするイメージの2つをレベル7以上の補助魔法を使って掛ける。
2 エリクサー 体の状態異常、呪い、怪我、欠損など自身の体の異常を全て治す事のできる神薬。寿命が10年延びる。
作り方
(回復薬(極)、ドラゴンの血液、セイレーンの涙、世界樹の葉、マンドラゴラの根、生命石)
黒混合症の鑑定をしている勇貴が鑑定結果に目を通していると、黙ったままの勇貴を心配したハーストが恐る恐る尋ねる。
「あの~ツキガミ様...大丈夫..でしょうか?」
「えっ!あっああ~すいません、ちょっと夢中になってしないました。」
「いえ、それはいいのですが..それで..何か.分かりましたでしょうか?」
「はい」
「!」×4
勇貴の肯定の言葉にマヤ、ハースト、ウル、フウは驚きの表情を隠せないでいた。その驚きから一番早く立ち直ったマヤが勇貴に尋ねる。
「..ツキガミ様..それは、本当でしょうか」
「ええ、フウちゃんのこの症状は黒混合症と言って半人、混合人に診られる病気で、黒い皮膚が全身に回ると死に至るそうです。」
「!」×4
勇貴の言葉に再び驚きの表情を浮かべる4人、そしてウルは顔を両手で覆い泣き崩れ、フウの目には涙が浮かび、ハーストは涙、鼻水を一緒にしながら号泣し、マヤは悔しそうな表情で下唇を噛み、一度目を閉じると勇貴に話し始める。
「...ツキガミ様、オーナーに代わり感謝申し上げます...ありがとう.ございます。」
ハースト達の反応に困惑していた勇貴は自分に話しかけてきたマヤに恐る恐る尋ねる。
「あの~どうかしたんですか?」
「?...先程、ツキガミ様がフウが死んでしまうと...」
「それは、黒い皮膚が全身に回ったら..っと」
「ええ、ですが...原因が分かっても..今から治療方法を探すとなると...」
「ああ~あの~...治せますよ」
「!!!」×3
勇貴が言うと、ウルは勢いよく顔を上げ、フウとマヤは目を見開き、ハーストは聞こえていないのか、まだ号泣していた。そんな中、勇貴の後ろから声が聞こえた。
「..ツ.キ.ガミ..さま.な.お.る..の.です.か」
「ああ、鑑定で治療方法も出たんだ、それで自分でもできそうだからやっちゃうね」
「えっ!」×3
そして勇貴がフウに手をかざし、鑑定で見たイメージのように補助魔法をフウにかける。するとフウを淡い緑色の光が包む、するとベッドから出ていたフウの黒い皮膚が崩れ、その中から雪のように白く美しい新しい肌が現れた。そして光が収まるとフウがゆっくりと体を起こし自分の腕を見たり触ったりして確認すると次は、そのまま掛け布団をめくり足を確認する。黒い皮膚が無い事を確認したフウは今までの大人びた感じではなく年相応の8歳の子供のように大きな声を上げ大粒の涙を流し泣いていた。