16話 ダンジョン
次の日、勇貴が宿屋『黄金の林檎亭』を出るとそのままダンジョンへと向かった。ダンジョンの周辺には露店や冒険者と見られる人がたくさんいた。そんな光景を見ながら勇貴はダンジョンの前にある検問所へと並び自分の順番が来た。
「よし!行って良いぞ!次の~..って君..ここはダンジョンだからFランク以上じゃなきゃ入れないんだぞ、冒険者ギルドなら反対の方向に真っ直ぐ進むとあるぞ」
「..いえ、自分はダンジョンに入りに来たんです。ランクも自分はBランクなので問題ないかと..これギルドカードです。」
「なっ!びっBランク...確かに..これはBランクのギルドカード..君..すまなかった。」
「いえ、そちらもお仕事でしょうから。」
「そう言ってもらうと助かる。実力があるなら問題ない、じゃ~ギルドカードを返そう、ダンジョンから出る時も検問所でギルドカードを提示してくれ」
「はい、分かりました。」
「じゃ~気を付けて行ってこい」
「はい、行って来ます!」
ダンジョンの入口は正に洞窟というような感じで中は真っ暗だった。だが勇貴がダンジョンに入ると外から見たのと違い壁自体が淡く発光していた。勇貴が後ろを向くとそこには、外の景色はなく、ただ真っ暗な空間だった。その光景を不思議に思った勇貴は鑑定(神)を使った。
・ダンジョンゲート
(外とダンジョンを繋ぐゲート、外からダンジョンゲートを通るとそのゲートと対になっているダンジョンに繋がる。)
「なるほど、さっきの場所とここは全く別の場所ってことか..取り敢えず進むか」
ダンジョンを進むとゴブリンやコボルトなどが出てきた。その魔物達はサリィが言っていたように倒すとドロップアイテムを残し他は煙のようになり消えていった。そして、魔物を倒しながら一本道を進むこと数分後、勇貴は初めての分かれ道に差し掛かっていた。
「分かれ道..か..右か左かどっちかな~魔物も弱い
し、ドロップアイテムもまだ魔石しか出ないから、自分にあったちょうどいい階層まで最短で行きたいところだな、よし!ど.ち.ら.に.し.よ.う.か.な.かっ..かみ.. 神か、マップ(神)ってダンジョンで使えるのかな?(マップ(神))」
勇貴がマップ(神)を使うとダンジョンのマップが頭の中に浮かび、さらには罠の位置まで分かるようになっていた。
「おっ!出来た!なるほど、これが下に行く階段だとするとここは...右だな!それにしても罠の位置まで分かるのか..さすが神だなぁ~よし、道も分かったし、さくさく進みますか!」
そして、勇貴はマップ(神)を駆使しどんどん下の階層へと進んでいき、普通はどんなに急いでも2,3日かかる10階層までをたった数時間で踏破した。
「次は..10階層か..やっと初めてのボス部屋だな..さ~て、何が出るかな~」
勇貴は、そして10階層もボス部屋の前まで難なくたどり着いた。というのも今まで出てきた魔物はゴブリンやコボルトなどのH~Gランクの魔物で、しかもマップ(神)のおかげで下の階層までの最短距離と罠の位置まで丸分かりなので当然であった。
「お~!これがボス部屋か~...なんかいかにもだな~」
ボス部屋は、鉄のような金属で出来た巨大な扉だった。扉には、細かな彫刻が施されており、見る者を圧倒させる重厚な存在感を放っていた。その扉を勇貴は、両手で押して開ける。扉は勇貴が思っていたほど重くなくすんなり開いた。そして中には2メートル以上はある黒い蜘蛛がいた。
名前 無し レベル303 ランクF+
性別 オス
種族 魔物 ダークスパイダー
ユニークスキル
・粘糸鋼糸
スキル
・毒攻撃Lv3・土魔法Lv2・隠密Lv2・身体強化Lv2・物理耐性Lv1
称号
無し
ユニークスキル
・粘糸鋼糸(自分のだす糸の性質を粘着質の粘糸、鋼質の鋼糸にすることができる)
スキル
・毒攻撃(スキルで攻撃した相手を毒状態にすることができる。相手の状態異常耐性が自分の毒攻撃のレベル以上又は同等だと毒状態になりにくい。)
ボス部屋に入り、鑑定(神)でボスの強さを見た勇貴は
「うん..弱いな..!」
勇貴がそう言うと、ダークスパイダーが突進してきたので、軽くかわしそのついでに神刀で切りつけた。すると、それだけでダークスパイダーは煙になりドロップアイテムを残して消えた。
「...まっ!Fランクだし!こんなもんだろ!このペースだとまだ行けそうだなぁ..よし!20階層のボスも倒して21階層の転移陣から帰るか!」
勇貴は、10階層のボスを倒した後もダンジョンを進み続けた。11~20階層までは、今までと同じく淡く発光した土や岩の壁のある洞窟のような場所だった。だが魔物は土魔法を使う茶色い毛並みのランドウルフや物理攻撃が効きにくいマッドパペットなどG~Fランクの魔物で1ランク上の魔物が出てくるようになっていた。
「魔物の強さは1ランク上がったけど、まだ余裕だな、10階層まで行った時とかかった時間あんまり変わらないよ~な?...っと!ここか..20階層のボス部屋..10階層のボスが1ランク上だったから..ここのボスもたぶん1ランク上の..Eランクかな?..っと..あれか」
ボス部屋にいたのは2メートル以上はある岩でできたゴーレムだった。
名前 無し レベル320 ランクE+
性別 無し
種族 魔物 ミニゴーレム
ユニークスキル
・硬化
スキル
・土魔法Lv4・物理耐性Lv3・再生Lv2・身体強化Lv2
称号
無し
ユニークスキル
・硬化(自身の体の表面を硬くする)
スキル
・再生(自身の体を再生する)
鑑定(神)で相手の強さを見た勇貴は
「..やっぱりEランクか..ミニゴーレム..ミニ!あれで!普通のゴーレムってどれだけデカイんだよ」
勇貴がそんな事を言っていると、ミニゴーレムは雄叫びを上げ勇貴に襲いかかってきた。
「ヴゥゥアァァァァァァァァァァァ!!!」
「うるさい..よ..っと..!」
勇貴がミニゴーレムの攻撃をかわすついでに上半身と下半身を神刀で真っ二つにした。しかしミニゴーレムは煙にならず、それどころか上半身と下半身は徐々にくっつき初め、ミニゴーレムは立ち上がろうとしていた。
「あ~確か再生っていうスキル持ってたな、そういう時は..魔法だ!.デスファイヤー!」
・デスファイアー(勇貴が考えた火属性の攻撃魔法、黒い炎が相手を燃やしつくすまで燃え続ける。)
ボオ!ボォォォォォォォォォォォォォォォォォォ
ミニゴーレムの体中を黒い炎が包むとミニゴーレムは苦しそうな声を上げた。
「!..グヴゥゥアァァァヴゥェェェ.....」
そして、ミニゴーレムの声が途絶えるとデスファイヤーの炎も消えミニゴーレムはドロップアイテムを残し煙になって消えた。
「..よし!帰るか!お腹すいたし!」
勇貴が下の階層に降りると、そこはたくさんの草木が生い茂る森だった。
「お~!21階層からは森エリアか!..でも今は帰る!」
そして、勇貴は転移陣を使い地上へと戻った。