14話 報酬
ダンジョン都市バートナーに着いた後、勇貴はそのままルーカスの屋敷へと来ていた。
「ユウキ殿、少しこちらで待っていてもらえるかな?今、報酬を持ってこさせよう。」
「はい、分かりました。」
ルーカスが部屋から出ると、入れ替わるようにルーカスの娘タリアが部屋に入ってきた。
コンコン
「..ユッユウキ様!、タリアです!入ってもよろしいでしょうか!」
「えっ..はい、どうぞ?」
「しっ失礼します。」
「君は確かルーカスさんの娘さんの...」
「はい!バートナー・タリアです。今、少しよろしいでしょうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「では、失礼します。」
タリアがそう言うと勇貴の隣に座った。
「..あの~タリアさん」
「タリア!私の事はタリアとお呼び下さい!」
「..分かりました、では自分の事も勇貴で良いですよ。タリアさっ..タリアそれでどうしたんだ?」
「はい、え~とそのユウキ..さんにもう一度お礼をと思いまして..あの時は本当にありがとうございました!」
「いえいえ、お礼は何度もしていただきましたから、気にしないでください。」
「それと..聞きたい事もありまして、馬車ではお父様とばかり話していたので」
「そう言えばそうでしたね..それで聞きたい事って?」
「...ユウキさんって冒険者..なんですよね?」
「はい、そうですよ」
「..ではいずれこのダンジョン都市を離れて別の場所に行かれる..のですよね?」
「ええ、自分はこの世界をいろいろ見て回りたいと思っているので」
「...そうですよね..ではユウキさんは拠点とかは決まっていますか?」
「拠点..ですか?..いえ、まだですね..冒険者って皆拠点って決まってるんですか?」
「いえ、皆さんかどうかは分かりませんが..でも高ランクの冒険者さんは大きな都市などに拠点を持つと聞いた事があります。例えば王都や...ここダンジョン都市に..え~と..その~ユウキさんがダンジョン都市に拠点を作ってくれると..その.私も..うれ!」
タリアが何かを言おうとした時、ルーカスが執事と一緒に部屋に入ってきた。
「いやいや、ユウキ殿待たせた..ね..おやおや、タリアもいたのか?」
そして、ルーカスが立ち上がろうとするタリアと勇貴を見て言った。
「おっと、そのままで良いですよタリアも..ね、ふふっユウキ殿とずいぶんと仲良くなったようだね..タリア」
ルーカスにそう言われるとみるみる顔を赤くしていくタリアが慌てて答える。
「(ぼっ!)いっいいいいいえ!そそそそそんなことは!..は!いえ、けしてユウキさんと仲良くなりたくないとかではなく!むしろもっと仲良くな..!はっ!わわわわわわわわわ!」
「いやいや、本当に仲良くなったようだ」
「おっお父様!」
「いやいや、すまんすまん、娘の慌てようが可愛いくてな..ついな、そう思うだろユウキ殿?」
「え!あっそうですね..可愛いかったですね」
勇貴がそう言うとタリアは耳まで真っ赤にしてニヤニヤしながら同じ言葉を繰り返していた。
「(ぼっ!!!)かっかっかっかっかっかっかっかっかわかわかわいい........ぶつぶつ」
「おやおや、ちょっとやり過ぎちゃたかな?ま~タリアの事は置いといて..ユウキ殿、報酬なんだが」
「置いといてって..」
「..それで報酬はな金貨を200枚と..「ちょ!ちょっとまった!」どうした?」
「きっ金貨200枚って..確か白金貨2枚分..ですよね?」
「うん?そうだが..少ないならもっと」
「多いんですよ!」
「うん?そうか?妥当だと思うが?..最初は白金貨で渡そうと思ったがユウキ殿はアイテム..ボックス?を持っていると言うから使いやすい金貨にした。それとこれも渡しておこう」
ルーカスがそう言うと一枚のカードを渡してきた。それには、お互いに向き合う2匹の獅子とその後ろには大きな薔薇が画かれたキレイなカードだった。
「あの~このカードは?」
「それはバートナー家のカードだ、それを使えば検問所はわざわざ並ばなくても素通りできたり、貴族しか利用出来ない店などに出入りできる。要するにこのカードを持つ者の身元をバートナー家が保証し、なにかあったらバートナー家が後ろ楯になると言う物だ、遠慮しないでどんどん使ってくれてかまわないよ」
「...どんどんって..自分あんまり目立つのは..ちょっと..」
「そうか?じゃ~困った時にでも使ってくれ」
「はぁ~」
「後、盗賊の事なんだが懸賞金がかかっていた者が何人かいた..全部で金貨32枚だな、それで盗賊なんだがあいつらはどうする?何もないならこちらで処理するが?」
「盗賊って..どうするんですか?」
「アジトなどの情報を吐かせた後、罪によって死罪や犯罪奴隷行きとかだな」
「..奴隷ですか..この都市でも奴隷を扱っている所って有るんですか?」
「ああ、有るよ..ユウキ殿、奴隷を買うので?」
ルーカスがそう言うと今までぶつぶつなにか言っていたタリアがいきなり勇貴に詰め寄った。
「ゆっゆゆゆユウキさん!奴隷をお買いになるんですか!そっそそそそそそそれはやっぱり、せっせっせっせっ..ゴニョゴニョ..奴隷ですか!」
「えっ!いや!ちょちょっと!タリアちっ近いって!」
勇貴がそう言うとタリアは勇貴の顔が近くにある事に気付きみるみる顔を赤くしていき、静かに元の場所に戻ってまたぶつぶつなにかを言い出した。
「ゆっゆゆゆユウキさんの顔がくっくくく口が唇が......ぶつぶつ」
「....ゆっユウキ殿、それでどうなんだ?」
「えっ!ああ、前の町にいた時ソロだとこの先、大変になるからパーティーを組んだ方がいいと言われまして...でも自分、知り合いもいないし秘密も多いですから」
「なるほど..それで奴隷を..か...よし!ユウキ殿!」
「え!あ!はい!」
「もし奴隷を買うなら貴族街の「アリストスレイブ」に行くと良いだろ、あそこは、貴族御用達で私も使用人用の奴隷を買った事があるこの都市で一番大きな奴隷商だから信用して良いだろ。貴族街に入るのに検問所を通るがさっきのカードを見せれば問題ないだろう。」
「はい、分かりました。その時はその店に行きたいとおもいます。ありがとうございます。」
「うん、それじゃ~こっちからは以上だがユウキ殿は何かあるか?」
「いえ、自分からは何も」
「そうか..では」
ルーカスがそう言うと立ち上がり握手を求めてきたので勇貴も慌てて立ち上がり握手をした。
「ユウキ殿この度は、本当に助かった。ありがとう」
「いえいえ、こちらこそ何から何までありがとうございました。」
そして、勇貴がルーカスの屋敷から出るとき見送りに来たルーカスが思い出したように言った。
「あぁ~そう言えばユウキ殿はどのくらいここに居る予定なんだね?」
「いや、まだそうゆうのは決めてないですけど」
「そうか、決まったら教えてくれないかちゃんとお見送りしたいからね」
「別に見送りなんて良いですよ、でもちゃんと決まったら教えに来ますね..ではまた」
「ああ、また」
そして、ルーカスと勇貴は別れた。勇貴と別れたルーカスが屋敷に入るとそこに、タリアがいた。
「おっお父様、ユウキさんは?」
「うん?さっき出ていったよ」
「えっ!なんで私も呼んでくださらなかったのだすか!」
「..いや、何度も呼んだよ、だけど座ったまま何かぶつぶつ言って動かなかったのはタリアじゃないか...それにしてもタリアがお見送りね~...そんなにユウキ殿を気に入ったのかい?」
「!!!!そっそそそそそそんなんじゃ..も~お父様のバカッ!!」
そう言うとタリアは自分の部屋の方へと向かった。それをルーカスは優しい笑顔で見ていた。