12話 バートナー公爵
その女騎士は、長い金髪に目鼻立ちのきりっとした美しい顔をしていた。勇貴がこちらを向くともう一度女騎士は勇貴に問いかけてきた。
「...君は..一体」
「..あっ、え~と自分はただの通りすがりの冒険者です。」
「冒険者?...そうゆうことでは..いや、そうか...すまない挨拶が遅れたな..私は、バートナー公爵家に仕える「白薔薇騎士団」団長 アーネスト・テレスだ、さっきは危ない所を助けてもらった。感謝する。」
「いや、頭上げてください自分は当然の事をしただけですから」
「...いや、あのままでは我々は全滅していた。本当に感謝する。」
「分かりましたから、頭上げてください、ね?」
「...うむ、そうだ..え~と」
「あっ、自分は冒険者をしている月神勇貴と言います。」
「そうか、..ツキガミ..ユウキか..すまないがツキガミ殿バートナー公爵様に報告をしたいのだが..ツキガミ殿も一緒についてきてくれるか?」
「はい、別に良いですよ、それと自分の事は勇貴で良いですよ。アーネストさん」
「そうか?..では私のこともテレスでいいぞユウキ殿..では行こうか」
勇貴はテレスにつれられ豪華な装飾の馬車に向かって行った。その時、向こうから男の騎士が歩いてきた。
「テレス!無事だったか!」
「ああ、大丈夫だグラン、ユウキ殿に助けてもらったからな」
「?...君は..確か..」
「あ!はい!冒険者をしている月神勇貴といいます。」
「冒険者..そうか..ユウキ殿か..私はバートナー公爵家に仕える「風獅子騎士団」団長 イースト・グランだ..今回は助かった礼を言う」
「いえいえ、自分は大したことは..」
「いや、盗賊を拘束したあの魔法や最後の...いやこの話は後にしよう、これから報告に行くのだろ?自分も一緒に行こう。」
そして、勇貴達は馬車に向かった。
こんこん
「ルーカス様、グランです。入ってもよろしいでしょうか」
「...ああ、入りなさい」
勇貴達は馬車に入った。馬車の中は見た目よりも広く6畳位はあった。その部屋には3、40代の短い金髪の男性と12歳位の長い金髪の女の子がいた。
「ルーカス様、盗賊は全て捕らえました。我らは数人怪我人が出ましたが都市までは問題ありません」
「うむ、ご苦労だった。グラン、テレス、君達は大丈夫だったか」
「はい!問題ありません!お気遣い痛み入ります!」×2
「そうか、それは良かった...して..その人は?」
ルーカスがグランとテレスから勇貴に視線を移すとそう言った。すると、テレスが一歩前に出た。
「それは、私から説明させていただきます。こちらに居るのは、冒険者をしているツキガミ・ユウキ殿です。この度の盗賊の襲撃で危ない所を助けていただきました。」
「!..君が..そうか、ツキガミ殿この度は本当に助かった。私はバートナー・ルーカスこっちは娘のタリアだ、この度は本当にありがとう」
ルーカスがそう言うと少し遅れて隣の女の子もお礼を言った。
「あっ、ありがとうございます!...(ポッ)」
「...いっ..いえ、お気になさらず」
「いや、助けてもらったんだ何か礼をさせてくれ...そうだな..ツキガミ殿はダンジョン都市に行くのか?」
「はい、そこでダンジョンに潜ろうかと」
「うむ、そうか..しかしダンジョンに潜るにはFランク以上は必要だぞ」
「あ~自分一応Bランクなので大丈夫です」
「びっ!そっそうか、なら大丈夫だな...私達もダンジョン都市に帰る所だったんだ、ツキガミ殿さえ良ければ一緒に行ってそのまま私の屋敷に来てくれないか?そこで報酬を渡したい」
「一緒に行くのはこちらとしても願ってもない事ですが、自分は当然の事をしただけなので報酬だなんて...」
「まぁ、そう言うな私も公爵という身分で助けてもらった者に何もなしでは格好がつかん、それにダンジョン都市では私がいろいろと力になれる事もあるだろう」
「?」
「?..あぁ~ツキガミ殿ダンジョン都市の正式名所は知っているかい?」
「..いえ?」
「ダンジョン都市の正式名所は..ダンジョン都市『バートナー』だ」
「!..バートナーって確かルーカスさんの」
「そう『バートナー』は私の家名だ!」
「!...てことは..つまりルーカスさんはダンジョン都市の領主..様」
「まっそう言う事だ、それと様などと堅苦しい敬称は必要ないぞ、ツキガミ殿は私達の命の恩人、今まで通りルーカスでかまわないよ」
「..はぁ、では自分の事も勇貴で構いませんので」
「そうか?ではユウキ殿と..」
その時、馬車の外から男の騎士が報告をしに来た。
「公爵様、盗賊の拘束と出発の準備が整いました。」
「..そうか、ではこの続きはダンジョン都市に向かいながらでも..グラン、テレスもう下がっていいぞ」
「はっ!」×2
グランとテレスは返事をすると馬車から出ていった。
「..あの~自分も馬車ではなく歩きでも大丈夫ですよ」
「いやいや、命の恩人にそんな事はできん、それに道中いろいろユウキ殿に聞きたい事もあるからね。」
「はぁ」
そして勇貴は、ダンジョン都市に向かう道中馬車の中でルーカスにはいろいろと聞かれた。出身地など聞かれたら面倒になりそうなことは「遠い所」などあやふやに答え乗り切った。その中で魔法についての事が少し気になった。
「ユウキ殿が使って盗賊を倒したあの魔法は見たことがないが..あれはユウキ殿のオリジナルかい?」
「はい、自分で創った魔法です。」
「!やはりそうか..ユウキ殿、君はやはりすごいな!」
「?..それはどういう事ですか?」
「?あぁ~ユウキ殿は遠い田舎から出てきて世間に疎いんだったな...ユウキ殿は魔法の事をどこまで知っている?」
「え~と、確か魔法は、発動にはイメージと魔力が必要で、スキルで増えるのは魔法の威力、効果、範囲だけで魔法や詠唱は自分の魔力量にあった物を自分で創って、スキルレベルがいくら高くても魔力量が少ないと最初から強力な魔法や複雑な魔法は使えないけど逆に魔力量が多ければスキルレベルが低くても最初から強力な魔法や自分の考えた複雑な魔法が創りやすくなる..でしたっけ?」
「なるほど...ユウキ殿..それは間違いではないが普通はいくら魔力量が多くても新しい魔法を創るのは非常に難しい、それに新たな魔法を創るより今ある魔法を使う方がイメージもしやすく覚えやすい、だから普通は魔法を使う者は地域ごとに詠唱に多少の違いはあれど発動する魔法は基本的に同じになるのだ」
「え!本当ですか!でも自分が見た本にそう書いてありましたけど」
「?本..あぁ~なるほど..ユウキ殿はもしかして魔法の本は一冊しか読んでいないのでは?」
「え?あっはい、そうですね」
「やはり..ユウキ殿、先ほどの考え方はけして間違いではありません、むしろそれは全ての魔法使いの憧れでしょう。なので魔法関連の本にはだいたい最初にそう言う事が書かれいるのですよ..しかし本を読めばそう言うのがどれだけ難しいのかも書いてあるはずですが..」
「あぁ~そう言えば本を読む時、自分に必要な部分しか読んでなくてしっかり読んだ事なかったな」
「..そうか、なんとも贅沢な使い方だな...おっ!ユウキ殿見えて来たぞ!」
ルーカスのその言葉に勇貴もルーカスの見ていた馬車の窓を見ると、そこには灰色の大きな城壁と門の前に沢山の馬車や人が並んでいる光景だった。
「ユウキ殿!我が領地、ダンジョン都市バートナーにようこそ!」