結晶
その部屋は意外と大きいようだった。依然として暗闇の中だから、はっきりとした距離感はつかめないが、光の方へ進んでもなかなかたどり着かないのがその証拠だ。
途中から床が坂に変わった。何か砂のようなものが堆積しているのか、歩く度にジャリジャリとした音が響く。
そのうち、足元は砂利からゴロゴロした石に変わり、俺はより慎重に歩かざるを得なくなった。
どうやら、この山のてっぺんに白い光の正体が埋まっているらしい。
さらに進むと、今度は傾斜が急になってきた。傾斜が四十五度を超えたかというところで、俺は地に手をついて、ロッククライミングの要領で登ることにした。実際はロッククライミングなんてやったことないけど、まあそこは感覚だ。
この山は運動不足の俺にとって苦痛でしかなかった。本当にここは部屋なのかと疑うくらいに道のりは長かった。
ようやく頂上にたどり着いた。と同時に、俺はため息をついた。
疲れたからではない。いや、確かに疲れて汗もだらだらだけど、それが原因ではない。
白い光を遮っているものが、宝石のように美しい結晶だったからだ。
光を薄青色に反射する結晶は、それぞれがその奥で赤、黄、青、緑、紫など様々な色を湛えていて、その一つ一つが異なる色にきらめいている。
おっと、本来の目的を忘れるところだった。白い光の主を発掘しなくては。
俺は、足場に気を付けながら、一つ一つ、結晶をどかしていった。結晶はかなりの重量で、持ち上げて下に落とす度に、結晶が地を転がる衝撃が身体を揺らした。
ようやく最後の一つをどかし終わり、光の正体の全貌が露になった。
それもまた、結晶だった。しかし、さっきまでどかしてきた結晶とはまるで違う。もちろん、それ自体が発光しているか否かという違いもあるが、それだけじゃない。結晶がまるで生きているかのような、触れたら体温と脈動を感じそうな、そんな印象を受けた。その光からは強い意思のようなものを感じた。
わしに……触れろ。
どこからともなく声が聞こえてきた。
辺りを見回してみても、結晶が発する光の届く範囲では誰も見当たらない。
こいつが、俺を、呼んでいる……のか?
俺は白く光る結晶を見つめた。
すると、そうだ、といわんばかりに結晶は輝きを増した。
俺は、結晶に手を伸ばした。




