謁見の間①
気の優しそうな爺さん、というのが、カルム王国第十四代国王、グレゴリア十四世に対する俺の第一印象だった。
和服を想起させる簡素ないで立ちに、頭に乗っかった金色の王冠は、不釣り合いながらもまるで王冠自体が身体の一部であるかのような一体感を醸し出している。
彼が坐する王座は、俺より高い位置に据え付けられており、自然と俺の目線も見上げる格好になった。赤を基調としたデザインに金と様々な色の宝石がちりばめられているその王座は、国王に代わってその身分を証しているかのように感じられた。
「王室騎士団副団長クレアフィレス、ただいま戻りましたにゃ」
「おおクレアフィレスよ、よくぞ参ったな。おもてを上げよ」
「はっ」
「して、渉と申したかな。そなたも大変じゃったろう。屋敷は、気に入ってもらえたかのう」
国王は俺に向けて笑顔を見せたが、目は笑っていなかった。何を考えているのかまるで読めないその表情からは、底の知れない不気味さを感じた。
「気に入ったかだって? こっちは屋敷に閉じ込められていたっていうのに、ずいぶんな言いようじゃないか」
俺の言葉に、国王の傍に控えていた側近が顔をしかめる。
「貴様、国王陛下に向かって何という口の利き方だ! その態度をわきまえなければ、不敬罪で監獄送りに……」
と言い終わる前に、国王は「よい」と右手で制する。
「屋敷に幽閉していたことはすまなかった。しかし、それもそなたを守るためなのじゃ」
「守る? 俺が誰かに狙われてるってか」
「その通り。そなたは大賢者の記憶結晶を解放しておる。そなたは、他種族にとって十分脅威といって差し支えない存在なのじゃ。いつどこで襲われてもおかしくないのじゃよ」
俺は、入国の途中で見かけたオークの腕っぷしやゴブリンの悪辣な表情、オーガの巨躯を思い返した。確かに、あれらに狙われているとすれば、屋敷にいたほうがましだったのかもしれない。ただ、頭ではそう理解しつつも、俺はなおも釈然としなかった。
「それで、わざわざ俺が国王陛下様の御前に呼び出されたってことは、何か大事な用があるんだろ」
「話が早くて助かる。実は、じゃな」
国王は息を大きく吐いて、まっすぐ俺を見据えた。
「そなたには、我々人類とともに領土奪還作戦に参加してもらいたい」




