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ラノベの世界の狭間にて  作者: 雪山 雪崩
異世界訪問編
3/36

解錠

 家の前に着くと、自動点灯機能付きのライトが作動し、手元を照らした。

 家の鍵を取り出すと、ふと、さっきの鍵が気になった。

 比較してみると、やっぱりその異様さが際立つ。

 どう考えても、この鍵、使い物にならないだろ。だって、ギザギザの部分が大きすぎる。そんなんじゃどんなに大きく鍵穴を作ったとしてもつっかえてしまうだろうよ。

 ほら、こんな具合にさ。

 そうやって、俺はその鍵を家のドアの鍵穴にあてがった。

 すると、予想もつかないことが起こった。

 鍵が鍵穴に吸い込まれるように入っていったのである。

 俺は、予想外の事態に思わずわっと叫んでしまった。

 鍵穴の縦幅はあって一五ミリ、横幅も五ミリないぐらいである。なのに、縦幅ざっと五十ミリ、横幅も二十ミリはあろうかという鍵が鍵穴に突き刺さっている。

 ぶつかるような手応えは特になく、その鍵はごく自然に鍵穴に刺さった。まるで、その錠穴が元々自分のものであるかのように。

 恐る恐る鍵を奥まで差し込んでみると、鍵のギザギザがすっぽりと入っていく。中ほどまでいくと、今度は手応えがあった。

 これは、鍵が上手くかみ合ったときの手応えだ。

 さすがに俺も気味悪くなって、鍵から手を離して数歩たじろいだ。

 目の前の「異常」は、正常を装ってごく当たり前に存在している。

 鍵が変形するほど強くねじ込んだ? それはない。俺はそれこそ触れる程度に鍵穴にあてがっただけで、そんなに力を入れていない。

 あの鍵の材質が柔らかかったのか? でも、さっき手の平で握った感触はひんやりとしていて、それが何らかの硬い金属でできていることは明らかだった。

 幻覚だろうか? いや、俺は幻覚を見る原因になるようなことをしていないし、こんな変な幻覚を見る理由もないはずだ。

 ひとしきり考えて少し落ち着くと、今度はちょっとした高揚感が芽生えてきた。

 これは、すごい発見なんじゃないか。

 だって、こんな経験なんて他の誰もしたことがないだろ。きっとこの鍵は未知の力を持っていて、それを発見したのは、他ならぬ俺なんだ。

 仕組みを理解すれば、何かに応用できるかもしれないし。

 今の俺には、明日その鍵を交番に届けるという考えは微塵もなかった。

 まるで子供が珍しいアリを発見したときのようなわくわく感を胸に抱きながら、もう一度俺は刺さったままの鍵に触れた。

 鍵の取っ手をつかみ、ゆっくりと右に回してみる。

 すると。

 鍵の宝石が鮮やかに光りだした。

 そして、深緑よりも深い緑色の光に包まれる中で、俺は確かにその音を聞いた。

 ガシャ。

 扉は開いたのだ。

 と同時に、宝石の光は弱まり、消えていった。

 鍵を引っ張ると、それはいとも簡単に引き抜けた。

 鍵穴からぬっと出てくるその鍵は、やはり鍵にしては大きすぎて、かといって鍵穴が変形しているわけでもなく、どう考えても魔訶不思議な現象だった。

 まあ、いいか。

 詳しいことは自分の部屋でゆっくり調べればいい。

 今日は驚いてばっかりで疲れた。とりあえず早く風呂入って飯食ってベッドに横になろう。

 俺はドアノブに手をかけ、いつものように家のドアを開けた。

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