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ラノベの世界の狭間にて  作者: 雪山 雪崩
カルム王国編
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脱出③

 穴は人一人が這っていけるほどの幅が確保されていた。穴の入り口は、念のため土の魔術を使って閉じておいた。十メートルほど匍匐前進をすると、出口の光が見えてきた。準備が大変だった分、ここまであっけなく脱出できてしまうとなんだか拍子抜けしてしまう。

 俺は穴を抜け、地面に降り立った。もとい、這い出した。

 俺は、屋敷の外は人間の世界が広がっているのかと思っていた。そこには、この屋敷ほどではないにせよ、多くの民家が立ち並び、繁華街には食料や装飾品、武器等を売る商店が軒を連ねており、もしかしたら、国王の住まう立派な城があるかもしれない。そんなありきたりな『異世界』を俺は想像していた。

 しかし、俺が目にしたのは、立ち並ぶ民家ではなく、巨大な木々が群生する森林だった。

 木は、一本一本が樹齢何百年もあるのではないかというほど太く、どっしりとしている。木の枝は複雑に分岐し、他の木の枝と交錯しながらも上へ上へと伸びていた。

 まだ昼だというのに、辺りは薄暗く、ひっそりと静まり返っている。

 俺は、巨人の国にやってきたかのような錯覚に陥っていた。

 振り返ると、いつも内側から眺めていた壁がそびえている。表面は苔むしており、いたるところに蔦がからみついている。

 まるで屋敷を隠しているみたいだ、と俺は思った。

 それにしても周りに人がいないのはどういうことだろう。屋敷に運び込まれてくる食料や生活必需品を売っている商店の一つでもそばにあって然るべきだと思うのだが、今のところそのような存在は影も形もない。

 俺は、屋敷の壁伝いに歩いてみることにした。もっと周りの状況をよく確認したいし、道が見つかるかもしれないからだ。

 しばらく歩いたが、俺は依然として森の中にいた。辺りは、聞いたことのない鳥の鳴き声やがさがさと何かが蠢く音が聞こえたりする他には、特に変わった様子はなかった。

 気づけば、屋敷で唯一の扉の前までたどり着いていた。足元を見ると、扉から森の奥に向かって、足で踏み均されたかのような道が認められた。

 この道をたどっていけば、きっと人里に行き着くはずだ。そこで情報収集して帰ろう。

 俺は、残された時間の短さを意識しながら、足早に獣道を進んだ。

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