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ラノベの世界の狭間にて  作者: 雪山 雪崩
メイスの過去編
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メイスの過去⑪

 黒田は、丘を一息で駆け抜け、家々の合間を縫うようにして進んだ。

 途中、火柱や瓦礫の山に阻まれ、迂回を余儀なくされた。

 特に、地割れに直撃した家は悲惨だった。家は原形をとどめておらず、木っ端微塵、という言葉がよく当てはまる。周辺の家々も、衝撃波を受けたように、窓ガラスが割れ、屋根は吹き飛んでいた。

 ロバゴ村は小さな集落だから、村の端から端まで行くのに二十分を要しない。

 黒田は、迂回しながらも、十分足らずで西の林に到着した。

 黒田の見立てでは、ここに敵の何らかの移動手段が隠されており、ロバゴ村の住民達もここに一旦集められているはずだった。確かに、住民達が既に村の外に連れ去られている可能性もなくはない。 しかし、まだ敵の襲撃が始まってからそう時間は経っていないはずだし、そもそも、ガリウスをはじめとする村の戦士達がそう簡単にやられるはずがないと思っていた。

 西の林は、ぱっと見、閑散として見える。外からだと、人の姿も、移動手段となる物体も見当たらない。聞こえる音と言えば、時折吹く風の音くらい……。

 キイィィン。

 と思う間もなく、甲高い金属音が鳴り響いた。剣戟の響きだ。

 誰かが今、戦っている。

 考えるより先に、黒田は走り出していた。

 剣戟の鳴る方へと突き進む。

 身体は恐怖を忘れているかのように軽かった。むしろ、黒田は高揚感さえ感じていた。

 ついに訓練の成果を発揮できる機会がやってきたんだ。これでみんなを助ければ、きっと俺はみんなから認められる。仲間として認識してもらえるんだ。

 黒田の周りへの意識が一瞬薄くなったその時。

 「危ねえ!」

 聞き覚えのある声がした。

 次の瞬間、黒田は右側から強い衝撃を受け、そのまま吹っ飛ばされた。後方の樹木に強く身体を打ちつけ、黒田は嗚咽を漏らした。

 軽く脳を揺さぶられたのか、視界がぐらぐら揺れている。

 黒田は、揺れる視界で吹っ飛ばされた辺りを見た。

 そこは、何もなかった。

 何もない、というのは、何の異常もないという意味ではない。そこにあったはずの木々が根こそぎ消失しているのだ。

 よく見ると、黒田が元いた場所が球状に飲み込まれたかのように何もなくなっていた。地面は抉られ、虫食いのように残された木々がバランスを失ってバラバラと倒れていた。

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