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ラノベの世界の狭間にて  作者: 雪山 雪崩
メイスの過去編
13/36

メイスの過去⑦

 十数秒後に地震は止まったものの、まだその余韻が残っているかのようだった。

 この世界でも「地震」という現象は起こることはあるが、極めて珍しかった。しかも、先ほどの地震は、まるで大地が裂けるかのような衝撃だった。こんな経験は、この世界に来て初めてだった。

 イリーの方をちらっと見ると、イリーも動揺を隠しきれないらしく、しきりに辺りをきょろきょろ見渡している。

 すると今度は、そう遠くない場所から次々と爆発音がした。爆発の度に地響きがして、木々にとまっていた鳥達が騒々しく羽ばたいていった。

 爆発は、村の方から聞こえている。

 「メイス、一体何が起きているの」

 「分からない。とにかく、早く戻ろう。ソルスとガリウスが心配だ」

 爆発は、止むことなく鳴り響いている。

 黒田とイリーはロバゴ村に急いだ。近づくにつれて、爆発音はみるみる大きくなり、黒田の胸の中の不安を一層掻き立てた。

 ロバゴ村まであと二キロのところまで来た。

 目の前には川を渡るための吊り橋がある。ここを越えればロバゴ村はすぐそこだ。

 しかし、吊り橋の入り口には、衛兵が二人立ちはだかっていた。

 一人の衛兵は鉄の槍を片手に持ち、半ば退屈そうな顔をしている。もう一人は、まじめな性格なのか、両手で槍をがっちりと持ち、どしんと構えている。

 黒田は、衛兵の兵装に見覚えがあった。

 カルム王国。

 その言葉が思い当たった瞬間、黒田は内心苦々しい気持ちになった。

 同族であるにもかかわらず、黒田を保護することなく追放した国。外界は、生きていくには非常に厳しい環境なのだから、それは実質的に黒田を殺そうとしたのと同じだ。運よくガリウスに助けてもらえたものの、死ぬ機会はいくらでもあったし、生きていること自体奇跡だと今になって思う。

 「止まれ。ここは今、立入禁止となっている」

 まじめな顔をした方の衛兵が言う。

 「待ってくれ、俺らはロバゴ村の者だ。一刻も早く戻りたいんだよ」

 「だめだ。上からの命令で、ここは誰一人通してはならないこととなっている」

 「ここはカルム王国の管轄じゃないだろ。止められるいわれはねえよ」

 「だめなものはだめだ」

 この石頭め、と声に出しかけたのを黒田は慌てて抑える。

 「村に一体何が起きているんだ」

 抑えろ、抑えろと心の中で呟きながら、黒田は問う。

 「我々の知ったことではない。早々に立ち去れ」

 これには黒田も閉口した。こうなったらもう強行突破するしかないか。

 「まあいいじゃねえか、通してやってもよ」

 黒田が身構えようとしたその時、もう一人の衛兵が割って入った。

 「アイザス、貴様、命令に背くつもりか」

 「まあ考えてもみろよ、キキョウ。なんで俺らがあの村で起こってることを上から知らされてねえのかをよ。それは、俺らが下っ端だからだ。けど、お前はそれでいいのか。あんな地割れに爆発とど派手なことが起きているのに、お前は何も知らないふりをするのか。それに、あの村にはこいつらの家族もいるに違いねえ。それでもお前はここを通せんぼして、正義の味方を気取ってられるのか」

 「それは、こいつらを通せば危険な目に遭うはずだから、止めるべきじゃないのか」

 「いや、見たところ、こいつらかなり強いぜ。きっと止めようと思っても、俺たちにゃ止めらんねえ。それに……。あの噂が本当なら、こいつらが通った方が好都合じゃねえか」

 キキョウと呼ばれた衛兵は、黒田とイリーをまじまじと見つめて、しばらく黙り込んだ。

 「……勝手にしろ」

 呟くようにそう言って、キキョウは吊り橋の道を開けた。

 黒田は走りだした。イリーは二人の衛兵にありがとうございますと頭を下げて、すぐに黒田を追った。

 ロバゴ村は目の前だ。

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