表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラノベの世界の狭間にて  作者: 雪山 雪崩
メイスの過去編
10/36

メイスの過去④

 黒田の普段使っている訓練場は、ロバゴ村から北東に五キロほど離れた森の中にある。

 森の中央部には、木が伐採され土で均された直径五十メートルほどのスペースがある。なぜこんな都合の良い場所がという疑問はもっともだが、実際のところ、これは修行の一環だとしてガリウスから命じられて、黒田自身が整備した場所だった。十分集落から距離が離れているから、多少の衝撃なら周囲の森が打ち消してくれるし、森には雑魚の害獣しか生息していないから、思わぬ敵に襲われる心配もない。そういった意味で、ここは魔術の訓練場としては最上の場所だった。

 イリーと訓練場に来るのは初めてではないが、久しぶりだった。以前にイリーと来た時は、ガリウスも一緒だったが、その時は危うく収拾のつかない事態に陥るところだった。

 それは、端的に言えば、イリーが魔術使いとして未熟だからこそ起こることであったが、イリーはただ未熟なだけではなかった。

 彼女の魔術の最大出力が、異常に大きいのだ。さらに、彼女の魔術属性も相まって、その破壊力が半端ではない。

 エルフ族は皆魔術を使うことができるが、使うことのできる魔術属性はそれぞれ一つだけだ。加えて、使える属性の中でも、その特性は一人一人異なる。

 イリーの魔術属性は炎、そして、特性は、爆炎。

 瞬間的に高火力の爆発を生じさせるイリーの魔術は、魔術使いの中でも稀有な特性で、かつ、その破壊力ゆえに対軍魔術に分類されていた。

 それでも、イリーは自分の魔術を戦争に使うことを断固として拒絶していた。自分の能力は、人を殺める以外の素敵な使い道があるのだと。今はまだ見つからないけれど、修行して、魔術が上達すれば見つかるかもしれないと。そんなことを、以前に黒田はイリーから聞いたことがあった。

 最初は黒田の訓練だ。

 周りには全部で六体の木人形が黒田を囲むようにして立てられている。

 黒田は、自分の両腕に刻み込まれた魔術刻印を一つ一つ確認するように触りながら、神経を研ぎ澄ませる。目を閉じて、二度、三度と深呼吸をして、心と身体を落ち着かせる。

 かっと目を見開いた次の瞬間、黒田は目の前の木人形に数歩で至近距離に詰め寄っていた。

 しっ!

 という短い声とともに繰り出された右腕からの鋭いジャブ。すると、木人形の右腕部分がまるで関節が外れたかのようにかしぐ。

 続いてジャブの勢いで反転した状態から振り向きざまの左足での踵落とし。今度は木人形の右股関節部分に直撃し、木人形はバランスを崩していく。

 とどめに鳩尾部分に右手で掌底打ちをお見舞いする。そしてそのインパクトの瞬間、黒田は魔力を放出した。

 放出されようとする魔力は、右腕に刻まれた魔術刻印の一部を通って具現化する。

 属性は、雷。特性は感電だ。対人戦では、相手の動きを制限するために使用することになるだろう。

続いて、真向かいにある木人形へと接近。と思えば、勢いを利用して足払いをかける。跳ね上がった木人形めがけて今度は左手で正拳突き・魔力解放。木人形は炎に包まれながら、まっすぐ吹っ飛んでいった。

 三体目は、頭めがけて膝蹴り。そこから左拳で地面を叩き、魔力解放。地面の一角が勢いよく隆起し、木人形を上空に投げ上げた。

 四体目に対しては、五メートルほど離れた位置からの攻撃だった。拾って鋭く削っておいた木の枝を右手の指の間にそれぞれ一本ずつ挟み、投げると同時に魔力解放。疾風の力が付与された四本の木の枝は、空を切り裂くような速さで木人形に突き刺さった。

 五体目は、柔道の一本背負いの要領で木人形の背を地につけ、右手を木人形に接触させながら魔力解放。たちまち周りの地面が凍り、木人形を拘束した。

 最後の一体は、強化魔法を使い、左拳を鋼のように硬くして、アッパー・掌底・正拳突きの連続攻撃を浴びせ、吹っ飛ばした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ