白昼夢
「イサク、もう大丈夫だから、歩こう」
「もう少し休んでもいいんだぞ」
「いや、歩きたいんだ」
また歩き始めた。急勾配の坂道が続く。
この山がを越えると双葉はもうすぐだ。
「双葉が見えてきたぞ」
イサクが言った。
「俺たちが来るのに合わせて緊急総会を開いてくれるそうだ」
僕達のいる小高い位置から双葉の広場が見える。
食事の配る人、食べている人、家畜の世話をしている人、走り回る子供達、食べ終わって総会の座席を運ぶ人、人々があわただしく動いている。
ふと何かがかみ合ったような気がした。
人々の一見ばらばらに見える動きが、まるで皆でワルツを踊っているかのように見える。
どの瞬間を切り取っても、まるで一枚の絵のような調和した世界になりそうだ。まるで音楽さえ聞こえてきそうな気がするぐらい、優雅な動きだ。
やがて動きが一致する点を見つけた時、人々が動きを止めて完璧な風景となった。
次の瞬間、再び動き出して、それぞれ無関係に動き出した
もう消えてしまったけれど、一瞬全てが繋がった感じがあった。自分の意志と世界が繋がっているような感じがあった。
「どうしたんだ。ぼーっとして」
「白昼夢を見ていたんだ」
「おいおい、大丈夫か」
「いや、大丈夫じゃないな」
前にカノコが言っていたことの意味を理解した。
怖がりさえしなければ、もう少しの時間繋がっていられたかもしれない。
ルカからこういう時にどうすればいいか、教えてもらったことがある。
これは普通のこと。大丈夫、この世界は怖くない。だから平静を保つこと。そう自分に言い聞かせる。
それからもうひとつ、ルカが教えてくれたこと。
ハッピーエンドを想像することができれば、ハッピーエンドとなること。




