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ラストリゾート  作者: 水野たまり
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総会2日目 後編

「これまでは慣例通り端末を持っている大人だけに投票してもらいました。大人の端末を使って、子供にも投票してもらった方がいいでしょうか」


 場を落ち着かせるようにイサクが発言した。


 要が答えた。

「その必要はない。議決の確定は明日からだから、今日はまだ皆の同意があれば再議決できるんだったな。


 私は意見を変えることにした。子供達を避難させたいと思っている。再議決するよう提案したい」


「それには大人が付いていないといけません」

 スナミさんが発言した。弁舌に長けている柱の1人だ。

「子供達だけで避難させることはできませんからね」


 要が答えた。

「大人が子供の避難先を確保してやるんだ。


 確かに葛葉が集団で避難すれば広い土地が必要になり、避難先の既存コミューンとの間で諍いが起こるだろう。


 今の葛葉は大人と子供の数がほぼ等しい。大人2人が子供2人を連れて備蓄食料を背負えるだけ背負って避難する。うまくいけば2人ぐらいだったらどこかで受け入れてくれるところもあるだろう。

 

 大人は子供達が生き延びる方法を確保してから、自分たちがどうするか探すといい」


 再度スナミさんが発言した。

「あまりにも無謀です。だいたいどこに避難するというのですか。あてがないことは議論し尽くされたのではありませんか」


 要が語気を強めて答えた。

「あてなどない。だからどうだというのだ。探してもいないのに見つからないと決めつけるな」


 しばらく沈黙が続く。

 要が穏やかに話を続ける。


「誰かが正解を見つけてくれる、そうすればうまくいく、もうそんな時代じゃないんだ。葛葉をばらばらに出発して、それぞれがどうやったら生き延びることができるのか考えるのだ」


 スナミさんが再度発言した。

「先人達が守ってきたこの葛葉の地を捨てろと仰るのですか。私は先人達に葛葉のことを頼むぞと言われて、今日まで生きてきました」


「子供の未来を奪おうとすることの何が先人の教えなのだ。 


 スナミ、お前にとって葛葉とは何だ。俺にとっての葛葉はお前達1人1人のことだ。子供達の内の誰かが生のびてくれれば、次の葛葉へと繋いでいける」


 スナミさんの反論は続く。

「年寄り達はどうなりますか。これまで葛葉に尽くしてくれた人たちです。


 これまで葛葉に尽くしてくれた人たちです。せめて最後は葛葉の地で安らかに終らせてあげてもいいのではないでしょうか」


「俺ももう結構な年でな。俺だってもちろん安らかに葛葉で死にたいよ。皆に囲まれてな。


 しかし今はもうそんな贅沢を言っていられない。

 今はもう、きれいに死ねるとは思っていないよ。


 やせ我慢して笑って未来を切り開く姿を子供に見せることが大人の仕事だろう。

 その姿を見て子供達はこの悲惨な世界でも生きていこうと思うようになる。


 そういうのは理屈じゃないんだ。

 命を繋いでいくということは、そういうことではないのか。


 俺だけでも子供を連れて行くつもりだ。幸いゲンジも俺と行動を共にしてくれる。なつめ、お前はどうしたいのだ」


「僕も子供を連れて行きます。そして他のコミューンに今何が起こっているのかを説明します。

 たとえ違うコミューンであっても、何も知らないまま死んでいくことを放置できません。最終的には旧政府を目指します」


 要が笑った。

「おもしろいな。お前は子供を連れて行かなくていい。お前が伝え歩くことで、この世界が変わるかもしれないからな。


 イサク、お前も一緒に行ってやれ」


 イサクが発言した。

「謹んで仰せに従いましょう。しかし大変難儀な任務ですなあ」


「こんな方法しか思いつかなくて、お前達にも皆にもすまないと思っている。


 先程の提案はずっと考えていたことだ。しかし言い出せなかった。

 

 うまくいくかどうかも分からない、こんないい加減な話があるかと言われることを恐れていた。もう失うものなどないというのに何を恐れる必要があったんだろうな。


 なつめ、イサク、あるいはお前達ならばもっと先に行けるかもしれない。


 うまくいくかどうか分からないなんて、大変結構なことじゃないか。未来はどうなるか分からない、だから面白いんだろう」


 要の発言が終るや否やイサクが再議決の開始を宣言した。


 先程の決議を取り消すと同時に、要の提言を受け入れるかどうかについて投票が行われ、圧倒的多数で可決された。

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