ルカの部屋にて
僕が目を覚ましたのは3日後だった。
枕元にはイサクがいた。僕はうわ言を繰り返していたらしい。
端末を見ると大量の沈静信号が送られた記録がある。
その3日間は眠っているような起きているような不思議な感覚が続いていた。眠らせようとする端末と荒れ狂う僕の間で状態が一進一退を繰り返していたようだ。
その間ずっとイサクがそばにいて、意識のはっきりしない僕を看病してくれていたようだ。僕はイサクにお礼を言い、もう大丈夫だから1人にしておいてほしいと伝えた。
イサクが帰ってから、端末を外してみた。
すると再び悲しみで心が満されていくのが分かる。
涙が溢れてきて止まらない。
僕はルカのメッセージを何度も何度も読み直した。
読んでは錯乱し、錯乱しては読んだ。
でも僕は更に錯乱状態になることを求めている。
いっそ心が壊れてしまえばいい。
ふとルカの住んでいた家に行ってみようと思い立つ。
何かの悪い冗談かもしれないからだ。たちの悪い冗談でも笑って許すつもりだ。
ルカの家に入った。
やはりそこにルカはいない。
知っていた。
本当は分かっていた。
そこにいてほしい人がいない。
一緒に生きていくはずだった人がいない。
不在が存在を飲み込んでしまった。
巨大な不在が存在しているという矛盾。
不在の大きさが存在を遥かに凌駕している。
しかもその不在はまるで生き物のように伸び縮みし、時々僕の中に入り込んでこようとする。僕は身をこわばらせてその侵入を拒む。
しかし不在の影の中にルカがいるのなら、受け入れてもいい。
もう一度ルカに会いたい。
もう影に手を伸ばそうとする自分を抑えることができない。
その瞬間、鮮やかな赤い光が影を切り裂いた。
ふと見るとベッドの上に何かがある。
ルカがいるべき場所、いてほしい場所、そこには代わりに石が置かれていた。
赤い石だ。
野いちごのようにデコボコしているけれど、表面は丁寧に磨かれている。ルカが磨いたものだろうか。
その石を手にとって、窓を開いて、光を当ててみる。石は差し込む光を屋内に乱反射させる。きれいな光の粒で屋内が満たされている。
とてもきれいだ。もうここはただの空洞ではない。
石の角度を変えると、乱反射する光の粒も変化する。
子供のように日が暮れるまで飽きずにその様子を眺めた。
それから再び端末を取り付けて、イサクに連絡して全てを話した。
リーダーが言っていたこと。
ルカがスクールの人間だったこと。
大切なものが既に失われしまったこと。
そして残された僕達は時間を無駄にすべきではないことも。




