学校監督の仕事
翌日の仕事内容は当日の仕事終了後、端末に通知される。
仕事の内容はマニュアル化されていて、予め端末で作業内容を確認することができる。僕は今日、学校監督をすることになった。
学校には、6歳から12歳までの子供が集められている。
子供達は普段端末を持たないが、学校で大型端末が貸し出され、旧政府が作成した動画を視聴する。
分からないことがあれば自分で調べるルールなので、勉強内容を教える必要はない。
その仕事で最も重要なのは選抜組の管理だ。選抜組とは優秀な成績の子供だけを集めている組のことだ。
一般組は、読み書きなどの基礎科目と生活に密着した分野を中心に学んでいる。
選抜組はそれに加えて数学、英語、プログラミングなどの追加カリキュラムを学ぶ必要がある。
特に優秀な子供は将来、旧政府に行く予定だ。
但し条件は厳しく、選抜試験で全国上位の成績を取る必要がある。5年に1人も送り込めないこともある。
ただ優秀な子供を輩出することはコミューンの名誉でもあり、大人たちの中にも気にする人は多い。
幸い今の選抜組には優秀な子が多い。その筆頭はカノコだ。旧政府行きが確実視されている。
カノコは学力面では申し分ない。まじめにテストを受けさえすれば、いつでも旧政府行きが決められるだろう。
実際11歳になったばかりの時、最終科目途中で解答放棄しなければ、旧政府行きが決まっていたはずだった。
しかし今では、ほとんど学校には来なくなった。
カノコに勉強してもらうこと、それが今の学校監督に課せられている最も困難な使命といってもいい。
カノコはちょっと変わった子だと思われている。大人から扱いにくい子だという声が聞こえてくる。
大人が話しかけても生返事を返すばかりだし、そもそも大人とはあまり話そうとしない。
大人の側も旧政府に行ける子供だからと、そんな態度をとられても強くは言えない様だ。
いつも通り生徒の出席をとり、しばらく出かけられるように段取りを組んでから、カノコのところに向かおう。