リーダーとの会話6
「ありがとうございます。
先程の話ですが、せめてこれ以上の搬入を止めらる方法はないでしょうか。たとえ西に避難したとしても、廃棄物が追いかけてきては意味がなくなります。
旧政府に頼らずとも自分達で何かできることはないでしょうか」
「私達は既に彼らに接触しています。
相手国の言葉に翻訳した書面を届けようとしただけですが、書面は開封すらされませんでした。届けた者は撲殺されて海岸に放置されていました。
殺されたのはオリエです」
「オリエさんが、ですか」
「そうです」
「本当に、彼が、ですか」
「逃げられなくする為でしょうか。足を銃で撃たれていました。顔にいたっては腫れ上がっていて原型をとどめていません。あの大きな体でなければ判らなかったでしょう。
その姿が脳裏から離れません。
思い出す度に血が沸騰します。
怒りでどうにかなってしまいそうです」
思わず天を仰ぐ。声を押し殺すので精一杯だ。
心の中で急速に大きな空洞が広がっていくのを感じる。
その空洞を怒りや悲しみが満たしていく。
「失礼」
リーダーが僕の腕を掴んだ。僕の端末を取り外し、代わりに自分の端末を僕に取り付けた。
「もう少しの我慢です」
取り付けると端末を操作している。
沈静信号の調整をしているようだ。
気持ちが落ち着いてきた。でも体が少し麻痺している。
「ありがとうございます。ご心配をおかけしてしまいました」
「あなたを動揺させてしまったこちらの責任です。少し強めの沈静信号を送りました。
悲しみを共有してくれてありがとう。正直気持ちは嬉しい。
でもあなたにはまだやることが残っているはずです」
「これからあなた達はどうするつもりですか」
「搬入を阻止します。その後船を奪うつもりです」
「しかし相手は武装しているのでしょう」
「外で作業する男達は武器を身につけていません。着岸するとまるで荷物のようにコンテナで下ろされています。
作業員の顔には同じ模様の刺青がありますので、おそらく囚人でしょう。船内からの指示を受けながら、外で囚人のリーダーが指揮をとっています。
これまでの着岸地点と地形から次に着岸する位置、彼らが動く範囲は予想できます。その予想経路に罠をしかけます。
問題は船内にいる防護服を着た武装した男達です。内偵によれば大勢の作業員を余裕を持って支配下に置くことができるぐらいの人数がいるそうです」
「勝算はあるのですか」
「なければいけませんか。
身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。
古の諺です。あなたもご存知でしょう。
船内にいる人は武装していて、我々と同じかそれ以上の人数です。
前回彼らが来た時に船内に忍び込んで武器をいくつか入手することに成功しましたが数が足りません。それに今回は警戒してくるでしょう。
同じ武装をしていても使い慣れている彼らが有利です。ましてや戦場は彼らが熟知している船内です。戦いが長引けば勝ち目はありません」
「危険を冒してまで船内に侵入する必要はありますか。有利に戦える外で搬入を阻止するだけでいいのではありませんか」
「オリエを殺したのは船内の人間です。囚人達はただ作業させられているだけです。本当は囚人達にも罠を仕掛けたくありませんが、邪魔されたくありませんからね」
「もし船を入手したとして、それからどうするのですか」
「もうこの森は住むことができません。船を制圧できれば、南にある無人島に向かうことができます。行き先は目星をつけています。
船が奪うことができなくても、失うものは命だけです。
死かリゾートか。
皆も悪くない選択肢だと言ってくれています」




