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ラストリゾート  作者: 水野たまり
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幸運のうさぎの話

「行ってしまったね。最後にカノコが泣いていたみたいだけど」


「最後に何か話をしてほしいって」


「どんな話をしたの」


「短い話よ」


「僕にもその話を聞かせてほしい」



 昔々、幸運のうさぎを見つけたら幸せになれると信じられていました。ある村に住んでいた女の子が、幸運のうさぎを探す為に旅立つ決心をしました。


 しかしなかなか幸運のうさぎは見つかりません。そうしている内に彼女は迷路に迷い込んでしまいました。いくら歩いても迷路の出口は見つかりません。


 時々彼女と同じように迷っている人とすれ違いました。彼女は迷路を脱出する方法を尋ねましたが、皆同じ答えです。


「迷路を抜け出したいなら、うさぎに聞きな。俺も探しているんだが、見つからないんだ」


 彼女もうさぎを探そうとしたけれど見つかりません。次第におなかも空いてきました。


 でもこの迷路の中で一生を終えるのだけは嫌だと思って歩き続けました。疲れて座り込んで、また立ち上がって、彼女は諦めませんでした。


 次第に彼女は何を探そうとしているのかも分からなくなってしまいました。

 

「何かを探しているけど、ええと何を探しているんだっけ。でも何かを探しているんだ。


 確か大きくて白くてふわふわしている、そういうものだったような気がする」


 彼女はもう少しで思い出せそうで、でも思い出せないということを繰り返していました。彼女はもやもやした気持ちの先に答えがあるような気がしました。


 ある時彼女はきっぱり思い出すことを止めることにしました。きっと本当に自分が探したいものではなかったから忘れたと思ったのです。


 彼女は自分に言い聞かせました。

「そもそも探すものが分からないから探せないなんて嘘だ。分からない、だから探すんだ。

 

 きっと誰かから言われたものを探しても、そこに答えなんかない。誰かのものではない、自分オリジナルの答えを探す。

 

 それが見つかるまで、永遠に迷い続けてもかまわない」


 そう決心することで彼女の感覚はどんどん研ぎ澄まされていきました。


 彼女はまた歩き出しました。


 すると彼女はふと空間に歪みがあるように感じました。無理やり空間がねじ曲げられているような奇妙な感覚があるのです。思えば確かに迷路に入った時から違和感がありました。


 それは目では見ることができません。

 しかし彼女は歪みがあると感じた空中をしばらく見つめてみました。


 どのぐらい時間が経ったでしょう。

 彼女はふと何かに気がつき、空に向かって歩き出しました。


 するとなんということでしょう。

 彼女をとりまく風景が、がらりと変わって一変しました。


 迷路の正体は縦と横が入れ替わった世界だったのです。


 旅人が気づかないように空間が少しずつ曲げられていき、ついに90度に曲がった時、どんなに歩いても上下に移動するだけで、その場所から前に進まなくなります。


 そういう罠が仕掛けられていた場所、それが迷路の正体だったのです。


 彼女が見つめていた歪みは空間のシワのようなものでした。無理につくられた架空の世界なので、世界に歪みが生じていたのです。


 彼女は目に見えるものではなく、直感を信じて更に先に進むことにしました。


 すると今度は彼女のすぐ目の前に扉が現れました。開けると螺旋階段が続いています。その階段は下っているようでしたが、彼女は騙されませんでした。


 螺旋階段の正体は上と下が入れ替わった世界だったのです。下っているようでも実は上っていることを、彼女は気づいていました。


 どこまで降りていくのか不安になって旅人が足を止めるようにしているのでしょう。彼女は迷わず進みました。


 螺旋階段をしばらく歩くと、ようやく出口が見つかりました。

 

 彼女が出口を出ると、なんということでしょう、そこにうさぎがいました。しかも沢山います。出口の向こうにはうさぎだらけです。


 うさぎ達は楽しそうにダンスをしていました。


 彼女は思い出しました。

 私は迷路を脱出する方法を知っているうさぎを探していたんだったことを。


 迷路を脱出する方法を知っているうさぎだったら、もうとっくに迷路を出ているはずだ。迷路の中でいくら探しても見つかるはずなかったんだな。


 でも迷路を通ることなく、うさぎに会うことができなかっただろう。迷路に入ったこと自体は間違いではなかった。


 ふと彼女が自分の手を見ると、白い毛でふさふさになっていることに気がつきました。

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