なつめの中に宿るもの
「あのカノコが別人みたいだ。君が変えたんだ」
「あの子は頭脳も感覚もすば抜けているけど、でも自分の中にある力の使い方を知らなかったのね。
自分の中の力に痛めつけられていたから、とても見ていられなかった。それでコントロールする方法を覚えてもらっただけ。
将来きっとその力に守ってもらうことが必要な時が来るから」
「その力はルカの中にもあるのですか」
「誰の中にもあるものです」
「僕の中にもですか」
「なつめさんの中にもあります。
でもなつめさんの中にある力は深く眠っていて、簡単には目を覚ましてくれそうもありません」
「僕はきっと鈍いのでしょうね」
彼女が笑った。
「その方がいいんです。敏感すぎるとカノコのように副作用に苦しむことになるから。
でも覚えておいてください。
もしいつかなつめさんに何か不思議なことが起きたとしても、怖がったり、逆に心を奪われすぎないようにしてください。
もし奇跡のようなことが起きてもそれは起こりうること、普通のことですから。平静さを保つこと、それが何よりも大切なんです」
「カノコが旧政府に行くことになったのも、彼女の中の力のおかげですか」
「直感で得られたものは、その人の中を時間をかけて満たしていきます。それが一杯になった時、まるでカップの水がこぼれるように思いがあふれ出してきます。
その時に自分がどうしたいのか、自分の気持ちに気づくことができるんです」
「僕は直感というものが分かりません。もし自分が直感のまま行動するととんでもないことをしでかしてしまいそうな気がします。僕は怖がっているのかもしれません」
「私とカノコはどちらかというと人というよりも野生動物に近いですからね。なつめさんはとても人間らしい人です。その良さを失わないで、人として慎み深いままでいてほしいな」
「慎み深いってどういう意味ですか」
ルカは笑って答えた。
「真顔でそういう質問をしないという意味です」
「今の会話には罠が仕掛けられていましたね」
「その通りです」
ルカが笑って言った。
「聞き返してきた時の表情、とてもキュートでしたよ」




