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ラストリゾート  作者: 水野たまり
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リーダーとの会話3

「確かにスクールには学校に通っていた頃のような楽しさがあるように思います。丁寧に説明して頂き、ありがとうございました。


 これで葛葉に帰って説明できます。ところで私が葛葉でどのように説明するつもりか気になりませんか」


「気になりません」


「思った通りです。隣接コミューンと交流するつもりであればこんな移動に時間がかかる奥地に住みませんからね。


 また相手から敵意を持たれてもこんな遠くまで攻め込むコミューンはありません。ましてや汚染されている森です。


 交流するつもりはない。敵意を持たれてもかまわない。そういう距離であり、立地だと思いました」


「確かに距離は重要です。こんなボーダーの森の奥地に決めた理由は、あなたが仰るとおりです。


 但し先ほど私が気にならないと言ったのは、違う意味です。

 

 初日にあなたが言っていたように、普通は隣接コミューンのことを把握しておこうと思うものです。森番をしている人間が固定なら、なおさらその人のことは調べておく必要があります。


 我々と葛葉を繋ぐのがあなたという人であれば心配はしていない。私が言ったのはそういう意味です」


「その端末で私のことを調べたのでしょうか」


「はい」


「それについてとやかく言うつもりはありません。もちろん自分の知らないところで勝手に調べられるのはいい気はしません。


 しかし、あなたはただスクールの人達を守りたいだけなんでしょう」


 リーダーが僕の目を覗き込んだ。しばらく時間が経過してからまた穏やかに話し始めた。


「我々はコミューンというものに対して複雑な感情を抱いています。


 我々がいたコミューンでも1人1人はいい人ばかりでした。しかしそれが集団になると別の意思が宿るようになるものです」


「なんとなく分かる気がします」


「私達は厳格な考えを持つ人が多いコミューンにいました。善良な人が多く、ルールを守ることを重視してひっそり暮らしていました。


 しかし、いつも空気が張りつめていて少々息苦しい。私達はそういう環境で育ちました。


 子供からうまく成長できなかった人。

 私達はそういう目で見られ始めました。


 いや自分たちなりに成長していたつもりだったけれど、その当時のピリピリした空気にうまく適応できなかっただけなのです。


 自分を出し過ぎないように抑えていましたが、周囲の人は私達が異質であることに気づいていました。


 どんなに気を遣って生活していても時々周囲と摩擦熱が出てきてしまったり、いわれもない敵意を向けられることもありました。

 

 但し私達から見ると、適応しているはずの人たちも幸せそうには見えませんでした」


「だからこそスクールという場所が必要になったというのですね」


「ただ生きているだけでは満足できない者。

 集団生活が苦手な者。

 個が突出することで居心地悪い思いをしている者。

 自分の精神的な営みを重視したい者。

 表現することで自分を解放したい者。


 ここにはそういう人の居場所があります。

 いびつな者同士が出会った時に起こる驚くような化学反応がここでは起こります。


 コミューンを否定したいのではありません。

 環境次第で人は変わることができると言いたいのです。


 私は自分達が自分らしく安心して暮らせる、少し違う場所をつくりたいだけです」


「私のことは分かっているはずです。わざわざコミューンの中央から離れて森のそばに住んでいる風変わりだけど人畜無害な男です。


 コミューンと正規の交流してくださいとは言いません。ただ私が度々ここを訪問することはお許し頂けませんか。それも交流といえば交流です。

 

 悪いようにはしません。最低限の交流をしておけば、不要な摩擦を防ぐことができるということです」


「あなたは自由に考えていいし、好きに行動したらいい。


 だってここはスクールですからね。あなたも例外ではありません。

 あなたはいつでもここに来て頂いてかまいません」


「では明日の朝旅立ちます。お世話になりました。またお伺いすることになるでしょう」


「明日の朝にオリエが迎えに行かせます。彼に帰りの最短ルートを教えてもらってください」

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