表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラストリゾート  作者: 水野たまり
26/63

リーダーとの会話2

「そこで森に移住したのですか」


「いえ、すぐにはそうなりませんでした。しばらくは膠着状態となりました。皆自分のコミューンに戻りたかったのです。


 当初は他の2つのコミューンも同情的でした。

 

 以前同様に食料を持ってきてくれましたが、次第にそれも途切れました。働いてもいないのに食料を与えるのはおかしいという意見が出た為です。


 食料を止められたことで隔離所内では、コミューンを制圧してしまおうという強硬な意見すら出始めました。そんなある日事件が発生しました。


 直談判しようと無理やり戻った隔離所の数人と相手のコミューンとの間に乱闘が発生し、相手方に死者が出てしまいました」


「交渉途中でこんな事件が起こると、交渉が打ち切りになりますね」


「はい。その事件のことはすぐに他のコミューンにも伝わりました。


 元々仲の良くなかった3つのコミューンはそれを機に結束を固め、強硬な姿勢を打ち出しました。事実上もうどこにも戻ることができないことが確定してしまったのです。


 それまで避難所は合議で決めていましたが、事態を打開する為にリーダーを決めることになり、私が選ばれました。


 私はその場所に留まっても戻ることができる見込みはないと判断しました。食料もありません。私は皆に移住することを提案しました」


「汚染がひどいにも関わらずボーダーの森を選んだのはなぜですか」


「そこしか選びようがなかったからです。どこかのコミューンの近いところに定住すると、また同じ争いが起こりかねません。


 幸い私の旧政府仕様の端末は盗難防止機能が付いているので、回収されませんでした。しかもコミューンの通信範囲を超えて利用可能です。

 

 私は端末を使って情報収集しましたが、充分なスペースがある場所は森の中ぐらいでした」


「端末の地図で移住先を探したのですね」


「はい。でも森だったらどこでもいいという訳ではありませんでした。


 木材供給の必要性から森の端は必ずどこかのコミューンの管理下といっていい状況です。

 

 森の奥地でも川の水源に近いエリアは特に重点的に管理されています。上流で汚されたかもしれない水を飲みたくないという訳です。


 我々も水は確保したいが、森の中で川の上流に位置すると川下のコミューンとの間で必ず争いが起こります」


「分かります。葛葉でも川番がいて見張っていますから」


「またご存知のように魚がとれる海側の方が食料が安定します。ただ海側は既存のコミューンにすべて抑えられています。


 川のそばで海側の立地を得るにはボーダーの森の海に入るしかありませんでした。どうしても食料は安定させたかったのです」


「この場所は汚染さえ除去すればこの場所は条件を満たすことができるという訳ですね。隔離所から森まで相当遠かったのではないですか」


「12日かかって移動しました」


「その間の食料はどうしたのですか」


「私とオリエが3つのコミューンと交渉し提供してもらいました。


 コミューン側でも私達に居座られて不安を抱えたまま暮らすことを考えたら、保存食を分けてでも去ってもらうことが一番いいと考えた訳です」


「女性たちはどうしたのですか」


「他のコミューンに一時的にいてもらっています。


 旧政府に依頼して調査をしましたが、森の奥の放射線量は人が住める値ではありませんでした。表土を削ってぎりぎり住めるかといった程度です。


 ひどく汚染されている一方で、開拓は力仕事ばかりです。迎え入れる準備ができるまで、預かってもらうのが一番いいと判断しました。


 ここに移動する途中で接触したいくつかのコミューンにお願いしました。

 

 幸い女性はどこのコミューンでもすぐに受け入れてもらえます。合流するまでは私が定期的に端末で連絡を取っています」


「そういえばなぜこの場所をスクールと名づけたのですか」


「文字通り学校のことです。


 学校は決められた勉強をしさえすれば、後は好きに過ごしていい。

 スクールでは自分で食料を獲得すれば、後は好きに過ごしていい。


 ここでは皆で作業する必要がある場合、声をかけます。

 

 昔、学校でわいわいいいながら、全員で花の種を植えたりしませんでしたか。

 皆にとって学校は良い思い出がいっぱいの場所です。


 そういう感じで楽しく過ごしてくれと冗談で仮の名前を付けたのが、そのまま定着してしまっています」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ