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ラストリゾート  作者: 水野たまり
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オリエさんとの会話1

 最後の夜を楽しんでいると、オリエさんが話しかけてきた。


「ようどうだ。偵察は進んでいるかい」


「楽しませてもらっています。皆さんも楽しそうですね」


「今はいい季節だから、好きにしてもらっている。冬は開拓が中心で大変だったからな。冬は木を切ったり、家を建てたり、畑をつくる為に地面を掘り起こしたりなど力仕事ばかりだ。

 

 夜になるとくたくたになっていたし、外は寒いしでこんな風に外で楽しむ気分にはならなかったがな」


「私はちょうどいい時期に来たようですね」


「なんだったら冬に開拓の力仕事を手伝いに来てくれてもいいんだぞ」


「考えておきます。今でも結構広いと思いますが、更に開拓するんですね」


「ああ、畑作用の土地を開拓する予定だ」


「確かにそうするといくら土地を開拓しても足りませんね。食料の安定を考えているのですか」


「ああ。どうしても狩りや漁は波がある。木の実は季節が限られる。畑の食料は長期保存しやすいしな。もう少し食料が安定したら人数を増やせる」


「そういえば女性は違うところで暮らしていると聞きました」


「将来的には合流する予定だ」


「そうなればより賑やかになりますね。ところでこれから葛葉との関係はどうしたらいいとお考えですか」


「それはリーダーに聞いてくれ。難しいことはあいつが一番良いように考えてくれる。俺はただの治安維持担当だからな」


「そういえばオリエさんは喧嘩になったら止めに入るそうですね」


「収まるべきところに収めているだけだ。結果として止めることが多いけどな。


 そもそも俺は必ずしも喧嘩自体を否定していない。どんどんやれとは言わないが、これだけの人数がいてぶつからない方が不自然だ」

 

「喧嘩を肯定するんですか」


「譲れないところでは譲らないできちんとぶつかった方がいい場合もある。そうすると自分の気持ちと折り合いがつけられる。


 多少荒っぽいがそういう風に周囲との距離を掴む方法があっていいと思っている」


「それでは人を力で言うことをきかそうという人も出てくるのではないですか」


「その為に俺がいる。俺がそうはさせない。葛葉だって喧嘩はあるだろう」


「葛葉では喧嘩自体が禁止されているので、喧嘩をすると次の総会でどちらが悪いか採決に掛けられます。


 そこでどちらかが悪いと決められて、悪いとされた方は罰を受けます。

 

 相手に怪我を負わせると葛葉を追放されることもあります。厳しく罰することによって、喧嘩を抑止しようとしているんです」


「まあコミューンはそうだろうな。でもそれだと1つ問題がある」


「どういうことですか」


「喧嘩を否定しすぎると、水面下に潜って陰湿になる。


 喧嘩は悪いけれど、水面下のいじめや嫌がらせは良いという訳にはいかないだろう。

 

 時には殴らない暴力の方がやっかな場合がある。暴力は内にこもると水面下にはけ口を見つけようとするからな。


 気持ちが収まらないと暴力が形を変えるだけだ。喧嘩はいけないときれいごとばかり言ってうまくいけばいいが、現実はそうじゃない。


 気持ちがどこに向かうべきか、そこを見極めてやらないといけない。

 

 一旦喧嘩を止めてから、それぞれから話を聞いてやる。大抵はそれで収まってくれるよ。そういうさじ加減、段取りをいろいろ考えながらやっている」


「しかしそれでも収まらない場合もあるのではないですか」


「一旦喧嘩を止めて話を聞いて、それでも戦うべきだと思ったら俺はもう止めない。その方がきちんと収まるところに収まってくれるからな」


「ルールではなく個々のケースで判断して解決しようとしているんですね。


 まだ賛成しがたい部分はありますが、それによってスクールの風通しの良さが生まれているのかもしれません」


「一番大切なのは起きないようにすることだ。喧嘩にならないよう、日々ストレスを溜めない工夫もしている。


 ガス抜きになるようアームレスリング大会とか相撲大会をやることもある。特に過去に喧嘩した者同士の対戦なんかはなかなかの見物だぞ」


 オリエさんが豪快に笑った。


「ところでリーダーは他の人と雰囲気が違いますね」


「あいつはもといたコミューンでは有名人でな。6歳になったばかりで旧政府に行ったんだ。その手の伝説ならいくらでもある。


 ところが15才になった頃にひょっこり戻ってきたんだ」


「脱走したのですか。旧政府に行ったら戻ってこれないはずです」


「一応は離脱届というものを出すことはできるようだが、旧政府に受理されなかったそうだ。仕方なく勝手に戻ってきたらしいけど、結局赴任扱いとなることで話がまとまった」


「旧政府にとって失えない人材だったのでしょうか」


「旧政府では役職を与えられていたらしい。いい暮らしをできたはずなんだかな。しばらくは昼はコミューンの仕事をして、夜に旧政府の仕事をしていた。


 しかし休日には俺達のいた喧嘩の強さを競う荒っぽい集まりに顔を出すようになった。


 案の定最初は下っ端にもボコボコにされていた。最初は俺達もバカなやつだと笑っていたが、しかしあいつは何度でも起き上がって立ち向かってきやがる。


 とうとう今ではスクールの中でトップクラスの強さにまで登りつめたよ。

 

 俺は相手をボコボコにのしてのし上がってきたんだが、あいつは逆にボコボコにされながらのし上がってきたんだ」


「でもリーダーは細身ですよね。一見格闘技をやっているように見えません」


「あいつは強いぞ。もう誰もが認めている。


 昔俺たちが厳しい立場に置かれた時に代表者を決めることになったが、その時に俺はあいつの下に入ることにした。

 

 もうその頃にはあいつのリーダー就任に異を唱えるやつはいなかったよ」


「私はリーダーと初日から話してもらっていません。

 今日の夜にでもリーダーのところにご挨拶にお伺いしようとしていましたが、夜は旧政府の仕事中なんですよね」


「行きたかったら行けばいいだろう。いつ来てもいいって言っていたはずだ。いいか悪いかはあいつが決めるだろう。お前、バカなのか」


思わず笑ってしまった。

「オリエさんにバカといわれるのは、なぜか悪い気がしませんね。今から行ってきます」

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