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ラストリゾート  作者: 水野たまり
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 しばらくの間穏やかに日々が過ぎていった。ルカと毎日、森とコミューン中央の間を一緒に移動した。


 組み登録をする前は別々に出発して途中で合流していたが、今は食後に食器洗い場の脇で待ち合わせて、そのまま森へと向かっている。


 帰り道でルカはその日やった仕事で分からなかったことを聞いてくる。


 ここ数年、仕事の合理性が強く求められるようになってきた。改善の余地があれば総会で提案され、仕事の手順や内容について見直しが行われる。


 そうした積み重ねで、仕事の余裕が日々少しずつ詰められている。それによって空いた時間は相互チェックなどの点検業務に振り分けられる。


 特に途中から入った人には覚えることが多くて大変だろう。ルカもついていくのが精一杯な時があるらしい。


 仕事の話が終ると2人とも黙って歩いたり、気が向くとルカはおとぎ話を話してくれた。僕が最も楽しみにしている時間だ。


 互いに1人でいることを好むことから、森に帰ると普段は別々の家で過ごした。僕はこれまで通り旧世界の記録を読むことに時間を費やしていた。


 しかし休日は朝から夜まで一緒に過ごすようになった。

 

 夏になると前日に支給される休日用のお弁当を持って海に向かった。川が海に合流するスポットがあり、その場所で夕方まで過ごすようになった。


 そこにはルカがダンスをするのに適した広い砂浜がある。僕達以外は誰もいない場所だ。


 ルカのダンスは1人で踊るもので、フリースタイルというものらしい。


 音楽に合わせて、その場のひらめきで体を動かしている。端末で音楽をかけながらの時もあれば、音楽を消して踊ることもある。


 最初はそれを眺めて、それから釣りに行くのが僕の過ごし方だ。ルカが踊るのに一段落すると、木陰で昼寝をしたり様々な話をした。


「ずっと踊っていますが、疲れませんか」


「午後から休みますから大丈夫です。それとも、休日は労働効率を高める為に体を休める日です、体を休めなければいけません、なんて言いたいのですか」


「ひょっとしてそれは私の話し方をマネているのですか。


 私はそんな説教くさいことは言いませんよ。確かに中央では休日の昼から踊っているとそう言われそうですけどね」


「なつめさんが言いそうもないことを、なつめさんの言い方で言ってみただけです。


 今日は魚が釣れないな。また後で釣りに行かなくちゃ」

 またさっきの口調で話した


「それは言いそうですね。というか、いつも言っています」


「今日の成果はどうでしたか」


「今日は大丈夫です。4匹ですよ。後で焼いて食べましょう」


「わーそれはすごいですね。後でお弁当と一緒にいただきます」


「最初の頃は海辺で遊んだり、砂浜に絵を描いたり色々なことをしていましたが、最近はダンスばかりなんですね」

 

「私は子供の頃、海がない貧しいコミューンで育ちましたから、海はあこがれの場所でした。子供の頃から海でやってみたいことをたくさん考えていました。


 やりたいことは大体やってしまったので、1番やりたかったダンスの練習をしているんです。


 なつめさんの海で1番やりたいことは釣りですか」


「確かに釣りは楽しいし飽きませんね。お腹も満たしてくれますしね。でも1番目ではありません」


「1番目は何ですか」


「ただぼーっと過ごすことですね」


「いつも午後からはそんな感じですよね」


「そうです。ルカのダンスをしばらく眺めて、釣りをして、魚を焼いて、かぶりついてお腹がいっぱいになって、もう今日やりたいことはやった、後はどう過ごしても自由だとなってから、何をするでもなく過ごす。それが1番ですね」


「気持ちが分かりすぎます。まだ1日が終っていないのに、もう今日は楽しかったと振り返ってみたくなる感じがしませんか」


「ルカがそばにいて、太陽の日差しを浴びているだけで気持ちが軽くなります。


 大丈夫なことも大丈夫じゃないことも、全部まとめて大丈夫だと思えてきます。また私はよく分からないことを言っているようですね」


 ルカが笑って答えた。

「よく分かりませんでしたが、とにかく大丈夫ということだけは伝わりました。


 そういえば昼からはいつも端末を外していますよね。それはくつろぎモードが入った合図なんですか」

 

「だって午後はルカがずっとそばにいてくれますからね。あと今日やることは、夜になったらルカの家に帰ることぐらいです。外したって問題ありません。


 ここは楽園だから端末はなくてもいいんです」

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