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ラストリゾート  作者: 水野たまり
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佐久間の生い立ち

 後年の研究によって佐久間晴人の生い立ちは判明している。


 彼が物心がつかない頃に両親が離婚した。離婚後に父親は連絡がつかなくなったらしい。


 母親はまだとても若く美しい女性だったという。

 

 当初は夫婦で経営していた観光用の食堂を細腕で切り盛りしていたが、観光客の減少と共にに客足が遠のいてきた。


 そこで母親は店を社交ダンス場にしようとした。

 

 母親は学生の時に社交ダンス部に所属していたらしい。母親の輝かしい青春の記憶が彼女に再び夢を見させようとした。


 借金をして店をダンスホールに改装した。当初その土地には老人が多かったこともあって店は繁盛した。


 しかし市街地から離れていて立地がよくないこともあって、数年が経過すると客足が減ってきた。そこで母親はパトロンを得ることで店を守った。

 

 その頃彼は小学生だったが、帰ってくるかわからない母親の為に食事をつくって毎日待っていたそうだ。


 しかし不倫の評判が広がり、パトロンは彼女の元を去った。


 その頃母親は売春をして客足を繋ぎとめた、店は不道徳な盛り場のようになっていた。店が通報されて、お店を維持できる見込みがなくなったある日、母親が自殺した。


 その時彼はお小遣いをためて、大きな冷蔵庫を買ったばかりだったらしい。


 彼を引き取った親戚によると、母親が死んだ時に、「やっと料理から開放された。もう何をしてもよくなってしまった」と言っていたそうだ。


 彼は親戚の家に身を寄せて、母親がかけていた多額の保険金によって何不自由なく生活した。

 

 彼は表面上は順調だった。東大に進み、希望通り大手証券会社に就職した。


 そして数年すると退社して、デイトレーダーを生業とし、ひと財産を築いた。


 彼が自殺情報の交換サイトに出入りしはじめた時期は分からないが、デイトレーダーの頃には既にそのサイトの中心人物となっていた。


 痕跡を消して失踪した彼の部屋にはミラーボールが残されていたそうだ。母親のダンスホールで使われていたものらしい。

 

 彼はなぜそれを手放すことができなかったのだろうか。

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