自殺クラブ
旧世界を終らせた事故がどのような組織によるものか。長年、研究家を悩ませてきた問題だ。
海外のテロ組織、国内過激派、宗教団体など様々な組織が疑われたが、確証は得られていない。
近年は通称「自殺クラブ」という若者たちの集団がクローズアップされている。事実上、最有力候補といってもいい。
先日海外で原子力発電所に出入りする業者と彼らの接点が見つかったというニュースが報道された。
記事によると自殺クラブのメンバーのクラスメートが、原子力発電所の保守メンテナンスをする会社に勤務していた事実が確認されたということだった。
自殺クラブによる犯行だいう説を支持する人の多くは中心人物の佐久間晴人に興味を寄せる傾向にある。
多くは佐久間を非難する論調だが、一部ではいわゆるダークヒーローとしてもてはやす向きもある。
自殺クラブは20台前半から30代前半までの8人の集団で、当初はウェブサイト上だけで繋がっていた。
彼らは自殺志願者の集まりで、当初はインターネット上で死ぬ方法についての情報交換をしていた。
自殺クラブとはそのサイトの名前だが、今ではそのサイトで助言をしていた数人のことをそう呼ぶようになった。
彼らは死にたい気持ちを隠して生きることを「偽装」と呼び、暇つぶしが済んだら死ぬと公言していた。
彼らは自殺する方法だけでなく、痕跡を消して失踪する方法や身元を隠す方法などにも詳しく、情報交換サイトに新参者が来ると、懇切丁寧にアドバイスをしていた。
一方彼らは死ぬことだけを勧めていた訳ではない。時には安易に死のうとする人には、生きるように説得するのも彼らの役割だった。
やがてサイトを訪れる人の中には生きるか死ぬかの判断すら彼らにゆだねようとする人まで現れた。
当時彼らのサイトは自殺志願者の間でかなり人気を集めていたようだが、その中心にはいつも佐久間晴人がいた。
しばらくすると自殺クラブは大きな転換点を迎えた。
ある時佐久間は主要メンバーに自分と同じ都市に住むように呼びかけた。仮想空間から現実空間の繋がりに移行しようとしたのだ。
その呼びかけに応じたのが6人だった。
その後メンバーが増えていき、最終的には8人が徒歩圏内に住むこととなった。
佐久間は当時、個人トレーダーをやっていたことが判明している。佐久間は他のメンバーに引越しの費用や生活が落ち着くまでの生活費を与えた。
その後メンバーに働かないで暮らせる方法を実現すべく親身に相談に乗り、それを可能とする様々な支援を行った。
メンバーは覆面をしてインターネット上の動画でその暮らしぶりを公開した。1週間に1回メンバーの誰かの家に集まって、覆面をかぶりみんなで宅飲みをしていた。
覆面宅飲み会の様子はインターネットで配信されていたが、その動画をみるとどれも和気藹々としてとても楽しそうな映像ばかりだ。
佐久間も上機嫌で料理を振舞っていた。
しかしその後更に1年が経過した時、「これから任務を遂行する」とのメッセージを残して、メンバー全員が一斉にインターネット上から痕跡を消した。
それから5日後に一連の原発事故が起きた。
ある研究者はこう推測する。
サイトで佐久間が信頼を得ようとしたのは、本気で命を捨てられる人間を集める為だった。
そして近所に住み、楽に生きられる環境を整えてもなお死にたい気持ちを持ち続けていられるか観察していた。
半共同生活のような中で仲間意識を醸成し結束を固め、ある種の洗脳を行い、犯行に加担させた。
確かにそう考えると自然だと思える部分はある。
彼らによる犯行かについては決定的な証拠は見つかっていないが、犯行を匂わせる文章がある。
通称「遺書」と呼ばれ、一部では「ぽえむ」と揶揄されているSNSの文章だ。
事故の後に発見された佐久間のSNSの裏アカウントはこの文章を掲載した後、更新が止まっている。




