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イチゴの話
はじめて小説を書きました。既に書きあがっているので最後まで連載可能です。
イチゴのショートケーキを想像してほしい。
イチゴはスポンジケーキがなくてもかまわない。
それだけで完全な存在。
イチゴはショートケーキーの上に乗っていなくてもいいし、イチゴ以外の何かになりたいとは思わない。
しかしスポンジケーキは自分のことを、単なるイチゴの不在だと思っている。
イチゴが乗っていない自分は不完全で、決定的に何かが欠けているのだと。
イチゴなしでもいいではないかと言われても、何のなぐさめにはならない。
スポンジはイチゴのショートケーキの一部になることによって、はじめて安心できる。
そのうちスポンジはイチゴを探そうと思いはじめる。
イチゴなんて探さなくてもいいはずなのに。
この文章は自殺クラブの中心人物が、事故前に書き残したものだ。
最近この文章を思い出すことが多い。
しばらく考えてみるのだ。
一体イチゴとは何だろうと。