単純なお笑いシリーズ ツッコミについて考える
これ小説じゃない。コントの台本じゃないの? まあ、そんなんでも、ニヤってしてもらえれば、幸いです。
午前十一時、目黒川沿いにあるオープンテラスで、カプチーノを飲みながら桜を眺めている。一人の男性がこちらに向かって、歩いてくるのが見える。そして私の前に立った。
視線を男性に向けると、スーツの内ポケット黒い手帳を取り出して、上下に開いて見せる。上にはバッチが、下には制服を着た写真が見えた。
「田中さんですか?」
「はい。警察の方ですか?」
「いえ探偵です」
「すみません。警察手帳とか見たことが無くて、失礼致しました」
「ちょっとお伺いしたい事があります。この二人の方をご存知ですか?」
写真を二枚取り出して見せる。
「はい。知っています」
「お二人が浮気をしているかを調べています。この二人は浮気していますか?」
「そんな馬鹿な。いいえ浮気はしていません」
「なぜ浮気をしていないと言い切れるのですか?」
「この写真の男性、私ですよね。当然自分の事だから浮気をしていないと言い切れます」
「なるほど。では質問を変えます。この女性と肉体関係をお持ちですか?」
「肉体関係という意味が分かりませんが、私の想像するような内容であるならば、肉体関係にあります」
「なるほど。そうですよね。そこでお願いがあるのですが、お二人が肉体関係を持っている事を証明するための写真を撮りたいのですが、宜しいですか?」
「すみません。写真を撮らせることは出来ません」
「理由を聞いても宜しいでしょうか?」
「宗教的な理由です」
「なるほど、それなら仕方がないですね」
「ところで、今回の依頼主は誰ですか?」
「守秘義務がありますので、お伝えできません」
「妻ですか?」
「いいえ違います」
「明美ですか?(もう一人の本気の人)」
「いいえ違います」
「義父ですか?」
「お答えできません」
----ツッコミがある場合 ツッコミ役が『』です----
午前十一時、目黒川沿いにあるオープンテラスで、カプチーノを飲みながら桜を眺めている。一人の男性がこちらに向かって、歩いてくるのが見える。そして私達の前に立った。
男性がスーツの内ポケット黒い手帳を取り出して、同僚の田中に向けて上下に開いて見せる。上にはバッチが、下には制服を着た写真が見えた。
「田中さんですか?」
「はい。警察の方ですか?」
「いえ探偵です」
『紛らわしいよ!』
二人から視線を向けられたので、「あっすみません」と一言謝って視線を外す。
「ちょっとお伺いしたい事があります。この二人の方をご存知ですか?」
写真を二枚取り出して見せる。
「はい。知っています」
「お二人が浮気をしているかを調べています。この二人は浮気していますか?」
「そんな馬鹿な。いいえ浮気はしていません」
「なぜ浮気をしていないと言い切れるのですか?」
「この写真の男性、私ですよね。当然自分の事だから浮気をしていないと言い切れます」
「なるほど。では質問を変えます。この女性と肉体関係をお持ちですか?」
「肉体関係という意味が分かりませんが、私の想像するような内容であるならば、肉体関係にあります」
『認めるのかよ!』
我慢できずに視線を戻して突っ込んだら、やはり二人から黙ったまま視線を向けられるので、謝って視線を再度外す。
「なるほど。そうですよね。そこでお願いがあるのですが、お二人が肉体関係を持っている事を証明するための写真を撮りたいのですが、宜しいですか?」
「すみません。写真を撮らせることは出来ません」
「理由を聞いても宜しいでしょうか?」
「宗教的な理由です」
「なるほど、それなら仕方がないですね」
『なんでだよ! 探偵さん、さっきからストレートに確認しすぎだよね。普通は調査対象には気が付かれないように証拠を用意して、依頼主に報告するのが筋なんじゃないの? 本人に確認するとか馬鹿なの? 証拠隠滅されたらどうするんだよ。
それに田中さんも田中さんだよ。何で認めるんだよ。しかも隣に同僚がいる状態でおかしいだろ。それに写真がダメな理由が宗教的ってなんだよ。じゃあ最初に提示された写真は何で大丈夫だったんだよ。
探偵さんも、どうしてその理由で引き下がるんだよ。色々とおかしいだろ!』
やはり二人が黙ってこちらを見ているが、流石にこれはおかしいので、そのまま視線を合わせておく。
「教義では、女性と肉体関係が分かるような写真を撮らせるのは禁止されているんです」
『えらく限定的な禁止事項だな。普通、宗教と言ったら浮気は駄目なんじゃないのか』
「浮気じゃありません。本気です」
『とんちかよ! 本気でも駄目だろ』
「そちらも宗教の教義で定義されているので」
『随分都合が良い宗教だな、なんていう宗教なんだよ』
「田中教ですね。私が教祖です」
『そりゃ、自分に対して都合がいいわ。ちなみに一夫多妻制とでも言うのかよ』
「多夫多妻制ですね」
『カオスだな。どういう状態だよ』
「夫も妻も、複数人と同時に結婚出来ます」
『すさまじい状態だな、というか何で探偵さんは黙っているんだよ。やる気はねーのかよ』
「いえ、私はそんなに性欲が強い方じゃないので」
『そういう意味じゃねーよ! 調査しに来たんだろうが、証拠を掴むような事をしないのかって話だよ』
「いや、宗教上の理由なら仕方がないかなと」
『諦め早すぎんだろ。田中教なんて別に本当の宗教でもなさそうだろ、田中さん本当に宗教なの?』
「はい。宗教ですよ、世界で百か国以上で布教されています」
『すげーな。信者はどのくらいいるんだよ』
「世界各国で十億人程度ですね」
『おおすぎんだろ! というかそれが本当なら何で会社勤めしてるんだよ』
「趣味です」
『そっそうか、趣味か』
ツッコミの持続力が切れて、歯切れの悪い状態になった。
「ところで、今回の依頼主は誰ですか?」
「守秘義務がありますので、お伝えできません」
「妻ですか?」
「いいえ違います」
「明美ですか?(もう一人の本気の人)」
「いいえ違います」
「義父ですか?」
「お答えできません」
『いや、それ、もう答えているのと一緒じゃないのか? 何で最初は違うと明確に否定しているのに、義父の時だけ答えられないって回答するんだよ』
「宗教上の理由です」
『なんでも宗教のせいにするなよ! どんな教義だよ』
「浮気調査の依頼元を尋ねられた時に、依頼元が義父の場合にはお答えできませんと回答する事になっています」
『限定的過ぎんだろ! というか、もう義父が依頼元って言っちゃってるよね』
「そんな、信じられません。義父が私の事を疑っていたなんて」
『なんでだよ! 三番目に疑った候補に挙がっている時点で思い当たる節があるんじゃないのかよ』
「いえ、義父も私の信者だったのと、明美とも交際しているので、まさかと思いまして」
『酷いなそれ、どっちもどっちな気がするけど。それはされておき、探偵さんの宗教も滅茶苦茶だけど、なんて宗教なんだよ』
「佐藤教です」
『ん?』
「教祖様の教え通りやってましたが、間違っていましたでしょうか?」
『いや、あってるよ。そういえばそんな教義を設定してたわ』
他の作品もよかったらどうぞ、タイトル変えたから分かりづらい作品もあるかも知れないけど、短編のお笑いシリーズも、読んでないのがあるかもー。