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おっさんと少年の異世界冒険譚  作者: そぼろ
おっさんと少年
5/11

相談

今回は大分短いです。

「源さん!」


 騎士達に連れられて王城へ戻ると、王様と一緒にアルフレッドさんとソラリスさん、伊藤君が悲惨な顔をしていた。俺が戻ったと分かると、伊藤君は泣き顔を笑みに変えて迎えてくれた。


「やぁ、伊藤君。無事だったようで何よりだよ」

「何を言ってるんですか!それは僕のセリフですよ!」

「うむ、ミナモト殿。無事で本当によかった」


 王様も俺の生存にほっとしているようだった。ただし、騎士二人は歓迎してくれなさそうだ。まぁ、異世界人の力を見て、少なからず危険視してたようだから、少なからず俺の死を期待していたんだろう。


「本当に運が良かったようです。この通り無事に戻れましたし」

「あっ!そういえば腕が治ってますね?一体…」

「うむ、先に戻った騎士にも聞いたが、どうなったのだ?」

「はい、3人がドラゴンから離れ切った後、私も絶体絶命だと思ったのですが、冒険者と思われる人達が通りかかり、私の傷を治し、ドラゴンを討伐してくれたのです」


 隊長さんにも話したことをそのまま王様達にも伝える。


「なるほどのう。その者らには褒美を与えたいが…パーティー名等は聞かれなかったのか?」

「あぁ、申し訳ありません。当時は私も混乱していたようでして、お礼は言ったのですが、彼らも急ぎの用があるからと直ぐに立ち去ってしまったのです」

「ふむぅ…承知した、仕方あるまい。ミナモト殿、イトウ殿。お二人共疲れたであろう。今日はもう休むといい。食事は部屋に届けさせよう」

「はい、ありがとうございます。それでは失礼致します」


 王様は納得してくれたようだ。俺は伊藤君とともに個室へと戻った。その後豪華な風呂に入らせてもらい、置かれていた食事を取ったあと、真相を伝えるために伊藤君の部屋へ向かった。彼には伝えておいたほうがいいと思ったからだ。


「伊藤君、少しいいかな?」

「あっ、源さん。はい、どうぞ」


 伊藤君の部屋に入る。彼はすでに寝間着に着替えており、就寝するつもりだったようだ。


「悪いね、寝るつもりだったかな?」

「いえ、準備はしていたんですけど、寝付けなさそうだったので大丈夫です」

「そうか。実は今日のことだったんだけど」

「ええ、どうしました?」

「さっき王様に伝えたことは、嘘なんだ」

「えっ!?」


 俺は伊藤君に全て伝えた。冒険者は存在しないこと、俺が時を操れること、そして…騎士達の警戒度が上がっていること。


「なるほど…。では、源さんはこれ以上騎士達が警戒度を上げると危険だと考えてるんですね」

「そうだね。只でさえ闇属性持ちに加えて、ドラゴンを一人で倒してしまったことで、真相が明らかになったら最悪、俺は処刑まであり得ると思ってる」

「そんな!でも…確かに、昼間に魔法を使った後からは、騎士さんの態度があまりよくなかったような…」

「それでね、伊藤君。俺はこの国を出ようと思ってるんだ」

「え!?大丈夫なんですか?それって後ろ盾が無くなるってことじゃないですか。」

「最初は後ろ盾を得るために国に協力することにしたけど、俺の立場ははっきり言って伊藤君のおまけだ。向こうも使えるならいいと思っていたと思うけど、今後はどうなるかわからない。君はここに留まっているほうが安全だろうし、待遇もいいと思う。どうする?」


 この国に居続けても俺は正直メリットが少ない。しばらくは問題なさそうだけど、レベルが上がって脅威に思われたら最悪伊藤君がいない時に暗殺される可能性もある。冒険者ギルドに登録した時点で闇属性が使えることもあるいは知れ渡ってるかもしれないが、それでも一つのところに留まるよりはいいと思っている。国は俺達を独占したいのか分からないが今のところ勇者であるということは広まっていないし、冒険者ギルドも依頼を受けたりそこで素材を売ったりしなければ足取りはつかめないだろう。


「源さんは」

「ん?」

「源さんは、僕にどうしてほしいですか?」

「俺としてはもちろん、一緒に来てくれると心強いよ。昼に見たあの力と魔法があれば、危険は減るだろうしね」

「なら、僕も行きます」


 来てほしいのは本心だったが、まさかここまで力強く即答されるとは思ってなかった。優しいけど気の弱い所があったから、もう少し悩むと思ったのだ。


「そ、即答とは恐れ入ったよ」

「会って間も無い未知の世界の人と、同郷の人だったらどちらを選ぶか考える事もないかと」

「…そこまで信用してくれると、逆に心配になるなぁ」


 もし他に日本人がいたら、それがどれだけの悪人であっても心を開いてしまいそうだな。


「何がですか?」

「いや、なんでもない。…ありがとう」


 そうだとしても、信じてくれるというのは嬉しいものだ。

 もし、そういった人物が現れたなら。俺が彼の分まで警戒すればそこまで大きな問題にはならないだろう。

 なんだかお互い照れ臭くなって微妙な空気が流れた。伊藤君よ、照れるのは分かるがその破壊力のある笑みはやめてくれ。タダでさえ男の娘って顔してるのに、無防備な所を見せられると危うく間違えそうになるから!


「そ、それじゃあ!これから数日は準備に当てて、準備出来次第出るとしようか」

「わ、わかりました!あ、でも監視はどうするんですか?国に言っても、黙って抜け出すにしても、監視はいますよね?」

「それに対しては一応考えがある。上手くいけば俺の力で誰にも気が付かれずにここを抜け出せるはずだ」

「…どうやって?」

「それはな…」


 こうして俺は伊藤君と詳細な打ち合わせを行い、この国から出ることを決意するのだった。

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