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おっさんと少年の異世界冒険譚  作者: そぼろ
おっさんと少年
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魔法とレベルと冒険者ギルド

飯を食って、ある程度時間が空いた重鎮と自己紹介をして、何日かこの世界についての勉強と調べ物をした後、何とか俺が走って動き回れるくらいには体力と筋力が戻った。この世界の人間はそこまで早く回復するということはないらしいが、周囲からマナを吸収して回復するというこの世界の回復法と、俺たちの世界での自己の細胞分裂等による回復方法が重複した結果だろうと認識している。


 つまり、俺たちの世界の人間がこの世界に来ると2重の恩恵が様々な力になるということだ。


「そういった部分でも勇者ってことだな」

「そうですね。調べた限りでは、歴代の召喚勇者も非常に強かったとありました」


 この世界にはレベルという概念がある。

元の世界では筋トレをすることで筋力が上がる、という感じの自己強化が、ここではやはりマナという存在が関わり、マナの含有量=自己の強さという関係が成り立つらしい。トレーニング等をするのではなく、マナを含んだ存在を倒すことで、倒した相手のマナを一部吸収することで強くなっていくそうだ。

 

 RPGでいうところの経験値だな。俺も倒した相手の生命力をお金またはレベルアップに利用するようなゲームをしたことがある。そんな感じなんだろう。因みに、自分のレベルを確認したい場合は特別なアイテムが必要で、王城にあった水晶玉や、冒険者のギルドカード等で確認できるそうだ。因みに俺はレベル1、伊藤君はレベル50だった。


「何で俺はレベル1なんだ…王様も呆れてたぞ」


 レベル1何て言うのは魔物を倒したりしたことのない子供でもあり得ないらしく、俺くらいの大人なら最低でも20はあるそうだ。冒険者での平均が40から60当たりで、確認できる最も高いレベルが250らしい。伊藤君の50というのは、彼くらいの年であれば驚異的だという。そこはやはり勇者と呼ばれる所以か。


「こちらに来た当初の回復が原因だっていうことでしたけどね」

「回復したところで下がるレベルは微々たるものだろう?あれか、大人になって碌に運動してなかったせいか?」


 回復魔法は受ける側の体力やマナを作用させて、自己再生能力を活性化させるものらしく、負傷の大小によってレベルも下がることがあるらしい。ゲームのように戦闘中に回復して戦線復帰のは中々難しそうだ。

 あと、適正というものがあった。要は自身のマナを魔法に変換する際、効率のいい属性を見極めるということだ。この世界には属性があり、火・水・風・土が基本4属性であり、さらに聖と闇が存在する。ほとんどは基本4属性の中で1つか2つの適正を持ち、聖は神職の家系に、闇は魔物と魔族と呼ばれる種族が使用することが多く、人には過去数例ほどしかないという。そしてその闇の適正を持った人はほとんどが悪を成すような人物であったこともあり、人が闇を持つと要監視の体制がとられるとか。


「適正もなぁ…俺いきなりこの国で警戒される立場になっちゃったんだぞ」


 そう、俺は水と土に加え、その過去数例の、悪を成す闇属性を適正として手に入れてしまったのだ。おかげで王を含め、周囲の騎士やメイドさんにも警戒されてしまった。一応、レベルが1ということに加え、勇者である伊藤君がいる手前、あからさまな態度はとっていないが、もう俺の自由はないものとして思ったほうがいいだろう。


「まぁ…あれからお城の中がピリピリしてますもんね」


 そんな勇者殿は、火と風、聖の属性を手にしており、まさしく俺と正反対の属性となった。何だろう、将来的には俺と彼は対立でもするのだろうか。


「それでも、この世界にいるたった2人の日本人です。源さんに変なことはさせませんし、もし源さんが犯罪をしようとするなら、僕が止めてみせますよ」


 やだイケメンがいる。泣きそう。年上で頼られるべきは俺なのに、伊藤君におんぶにだっことか…。そうならないよう、せめてこれから信頼を築き上げていこうと決めた。


「頼りにしてるよ。取り合えず、準備も出来たし。冒険者ギルドに行って登録が終わったら、弱めの魔物退治をしてみようか。」

「そう…ですね。人を襲う存在ですから、やらなければならないことですよね…」


 伊藤君はとても優しい。日本では害獣が人里を壊滅させたりなんてことは昨今では全くと言っていいほどないため、例え動物であろうとその生死に対する倫理観は厳しいものがある。「むやみに生き物を嬲ったり殺してはいけません」「生きるために殺した動物には日々感謝を」等の価値観を、彼は生真面目に受けて育ったようだ。無論、俺だって生物を殺すということに忌避感がないわけではない。あるいはその場に直面してしまえば、体が動かないかもしれない。それでも、やらなければならないことなのだ。


「あまり気負いすぎるな、君は弓を扱うんだろう?無理をして俺に当てるくらいなら、まずは見ておくといい」

「わかりました」


 彼は弓道部だったらしく、この世界でも弓を扱うことにした。遠くから射貫く程度なら、直接その手に切ったという感触が残らないから、少なくともまだましだと思い、俺も賛成した。因みに俺は敵の注意を引きつける役として、そして武器など使ったこともないので、まずは小剣と短剣、そしてレザーシールドを持って行く。初めての戦闘だ、王様に数人の護衛兼監視を付けてもらい、俺たちは出発した。



「すごい活気だな…」


 冒険者ギルドは人であふれていた。魔物が増え続けているこのご時世、言ってしまえば稼ぎ時のため登録者数は年々増えているという。そして勿論、行方不明者と死亡者数もその割合に応じて増えているのだとか。


「取り合えず登録しに行こう」

「そうですね」


 丁度人がいなくなった受付まで進み、営業スマイルを浮かべているお姉さんに話しかける。護衛の人達は人が多いこともあって外で待機してもらった。


「冒険者ギルドにようこそ。本日の御用件は何でしょうか?」

「冒険者登録をしたいのですが」

「かしこまりました。ではまずこちらの用紙にお名前、年齢、扱う武器をご記入ください。」


 ヨシタカ=ミナモト、年齢は26、小剣・短剣…と。記入した用紙を二人とも渡すと、俺の紙を見た受付さんはクスリと笑った。マイナス10点。


「に、26歳でいらっしゃいますか…」

「何か?」

「失礼しました。冒険者になる方は、お若い方が多いものですから…」


 おっさんで悪かったな!ならないでいいならこんな危ない職に就きたくもないわ!


「ええ、まぁ事情がありますので」

「畏まりました。イトウ様とミナモト様ですね。では、レベルと適正を判別致しますので、こちらの玉に触れてください」


 俺から触れて、そのあと伊藤君が触れる。あぁ、この後の反応が分かると胃がきりきりしてくる。


「ミナモト様、レベルは…プッ、失礼しました。1ですね。適正は…水と、土と…闇!?」


 はい、会って数分のお姉さんから怖がられました。こりゃ、俺に嫁なんてできそうにないな。そんなことを考えていると、いつの間にか屋内は静かになっており、周りからも侮蔑の視線を感じ始めた。レベル1ということも相まって、その視線はさらに酷い。もうやだこの世界。


「まぁ、はい。取り合えず進めてもらえますか?国には既に報告済みで、監督役もいますので」

「は、はい…。えっと、イトウ様はレベル50、火と風と聖ですね。それではこれらでギルドカードを作成してきますので、少々お待ちください」


 国の監督役という言葉が効いたのか、恐ろしい視線を感じながらも特に絡んでくるような人はおらず、ギルドカードを貰った俺達は説明もそこそこに冒険者ギルドを後にした。


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