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革命少女は戦場に。  作者: 富良野 カナ
第一章「アルバレゲンダ」
8/9

第七話「オムレツ」

お久しぶりです。今回も新キャラが登場してます。

 空腹感を感じて目をあけると俺は机の上につっぷす姿勢で寝ていたことに気づいた。ブレンが戻ったあと、まどろみ、そのまま寝てしまったのだろう。

 横にあるIEのパネルを指で軽くタッチすると時間が表示された。夜8時近くで一、二時間は寝ていたみたいだ。やはりブレンは疲れるということ……なのか? 

 そんなことより、お腹が空いていた俺は購買へ向かうため着替えることにする。軍服から部屋の壁にかかっているハンガーから制服を外して着替えた。

 寝癖か分からないが髪の毛がピョンと横にはねていることに気づき洗面所の鏡の前に移って整える。何回も手で髪をすいたり、押したりしたのだがあまり意味がないようだ。

見てみると親指の長さくらいの大きさで派手にやられたみたいだ。

 「あんたどしたの?」と購買の何もかも大げさなステフさんに大騒ぎされるのは面倒だ。そう思って、目立っている傷に、仕方なく近くにあった救急箱から大きめの絆創膏を取り出し貼っておく。大きすぎてなんかダサい気がするが剥がすのも面倒だし諦めることにしよう。結局、こっちのほうが目立っている気もした。 

 そして、空気を出すみたいにため息をついて、ポイントの入ったカードを片手に部屋を後にした。





「おぉ!シノ。久しぶりじゃないか」

 階段を使って五階まであがるのに若干息を切らし、購買の方へ向かうと目があったステフさんが大きな声で言った。

 張りのあるしっかりずっしり響く声にビクっとしたが、会釈で返す。いつもこうだ。

 ステフさんは年齢は20代後半と見られ、緑がかった茶髪の髪型はボブという若者という感じがあふれる容姿なのだが、購買のカウンターに腰掛けて頬杖をつく様子はそのへんにいるおばさんのようだ。綺麗な容姿をしているのにもったいないと思う。

「なんか失礼なこと考えてんだろー」

「いえ、全然」

 疑う目線から顔をそらし真顔で答えた。

 無言で購買の中に入ったのだが、考えていることはおみ通しという訳なのだろうか。

 しかし、そんな俺の疑問は無意味だったようでステフさんは髪を揺らし楽しそうに笑っていた。

「そ。ところで今日は何を買うんだね?少年」

 笑い飽きたのか、彼女は上にあがった口角のまま芝居がかった口調でお決まりの文句を言った。ちなみに、このお決まりの言葉にきちんと答えないと高いものを押しつけられて買わされるという噂があるらしい。ポイントには余裕があるがもっと意味あることに使いたいからなんとなくで答えておく。

「腹が減って、料理でもしようかなと思ったので」

「ふーん。料理するんだ。今日は何にすんの?」

「オムレツとかですかね……」

 数少ない得意料理の中から一番手軽なものを選んで答えると、ステフさんはおぉーと手を叩いていた。まったく面白い人である。

「オムレツかーすごいじゃん。作り方は知らんけど。響きがこう、ね……『オムレツ!』っていう感じがいいね!」

 親指を立てて『いいね!』のポーズをするステフさんのなんともいえない感心の仕方にどう返せばいいのか分からず、あぁはははと曖昧に笑っといた。

「卵と挽き肉とじゃがいも、人参とか入れるんでしょ?知らんけど」

 近くにあったのか料理本らしきものをパラパラとめくりながらステフさんが言う。女子力と料理とはかけ離れていると思っていたステフさんが意外に材料ぐらいのことは知っていて内心驚いた。下を向いて本をめくっているステフさんを見るが、本に夢中なのか髪が視界に掛かっていても気にしてる様子はない。

 静かに本を眺めるステフさんが珍しく思えてついじっと見てしまった。それに気づいて俺は少し遅れて返事を返した。

「そうですね。あまりこだわらないので」

「へぇーほー。まぁ、だいたいそろってるから見て来ねー。あっ、あった! えと……生クリームを入れると美味しくまろやかに仕上がる。らしいぞー」

 ステフさんは料理本のオムレツのページを見つけたらしく嬉しそうに声をあげた。俺はつい、笑ってしまった。やはりこういう明るい性格は彼女が好かれる理由なんだなと思う。

「人に出すって訳でもないのでこれだけでいいですよ」

 俺はレジの前で手に持ったじゃがいもなどの材料を軽く上にあげる。

「えぇ、つまらんなー。そんなんだから彼女ができずに孤立すんだぞ!」

「確かにそうですけど……それは余計ですよ。俺だって『ゼロ』のメンバーと買い物ぐらいしますから」

 買い物は今回初めてなのだが、いろいろ面倒に思えてつい見栄を張ってしまった。ステフさんはというと、大きな目をさらに広げて(なぜか口も開いている)驚いていた。頭の上に『!』が何個も浮かんでいるみたいだ。

「意外!買い物って外だよな?」

「まぁ、はい」

「へぇーふーん。外出るときは外出届がいるから早めにミリナ指揮官に伝えるんだよ。三日前でギリギリかも」

「そうですよね。気をつけます」

 俺は、うなずいて答えたがここで聞いたことはほとんど初めて聞いた。もしこれを知らなかったら、許可は前日でいいやとか考えていた俺はみんなに迷惑をかけていただろう。俺はほっと安心した。

 レジにおいた商品の値段を入力しながら何故かステフさんはとても嬉しそうに笑っている。そして、カードリーダーを指さした。俺は慌てて手に持っていた白いカードをかざす。ピピッと鳴って、会計が終わった。

 ステフさんは口にやわらかな笑みを浮かべたままうなずく。俺は会釈をして商品を片手に購買を後にした。最後まで笑みの理由がわからなかったが。

「がんばれよ!」

 後ろから力強い声が響いてきた。

 きっと俺たちは、色々なことをやらなければならないのだ。

 そう思った。

~今回の新キャラ~

・ステフ:洋館五階の購買にいる女性。明るく親しみやすく人気。

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